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“税界”の裏話 国税庁 定期人事異動からの“全力調査”スタート 中小企業の「国際取引」に熱視線

国税庁は7月10日、定期人事異動も済み、いよいよ年末に向けて本格的な税務調査をスタートさせる。課税当局の事務年度は7月から翌年6月末まで。つまり、平成30事務年度が始まったばかりだ。最近は、調査着手の時期が早く、すでに調査予約は順次進められている。今事業年度の税務調査もキーワードは「富裕層」「国際」になりそうだ。

国税庁のトップである長官人事が決まらないまま、職員の定期人事異動が連年通り7月10日に行われた。人事異動後には、税務調査が本格化するが、昔に比べると調査の着手時期は早くなっている。かつては、人事異動後に調査先の選定、調査通知などが行われ、8月のお盆過ぎから実地調査が始まったものだ。この数年は、人事異動前に調査先の選定を開始、調査担当者が決まってなくても調査の日程だけは先に決めてしまう。「調査通知」から「事前通知」の連絡という流れになっているわけだ。

税務署には、連絡調整官という役職者がいるが、この連絡調整官が日程調整などを進める。税理士や経営者の中には、税務署から「7月10日以降に調査担当者が決まるので、日程だけ先に決めさせていただいてよろしいでしょうか」という連絡を受けた人も多いのではないだろうか。とにかく最近は、業務効率を上げるため、調査官はかなりキツキツで仕
事をしているのが現状だ。

税務調査は、年間を通じて行われるものだが、最も調査官の力が入るのが、新事業年度のはじまりから、その年の年末まで。今まさに、そのときなのだ。年を越すと2月から3月中旬までは確定申告に入り、それ以降は人事評価に大きく影響することはない。つまり、今から年末までにある程度の実績を残しておかないと今後の昇進などに影響してくるわけだ。

さて、今年の税務調査だが、通常の個人、法人の税務調査は粛々と行われることになるが、最近は再任用職員も少なくないので、再任用かそうでないのかは抑えておく必要がある。というのも、再任用職員は、一度定年退職した人なので、昇進などの欲がない。「国税職員というプライドだけがモチベーション。融通が利かない人も少なくない」(国税OB
税理士)。また、調査においては大ベテランなので、若手調査官よりも深度のある調査が行われることが多いのだ。ただ、定時上がりの人がほとんどなので、税務署には午後4時ごろには戻ることを想定して調査を終えるという。国税OB税理士は「こうした特性を抑えておくことでも、調査対応の仕方が変わってくる」と指摘する。今事業年度の重点調査として目が向けられているのが「国際的な租税回避への対応」だ。より深度のある調査が行われることが想定される。

国際化への対応としてポジションも増やしており、国税局と税務署では国際税務専門官のポジションが増加されている。この傾向はこの数年変わっておらず、昨年度は、国税庁に国際課税企画官が設けられ、東京国税局には総括国税実査官、東京局、大阪局、熊本局に国際税務専門官が設けられた。税務署にも国際税務専門官ポジションが増やされた。3年前には、東京国税局に主任国際情報審理官、国際情報審理官も増員され、限られた予算の中でも「国際」には力を入れている。

「国際」というと大企業が中心で、中小企業にはあまり関係がないと思っている人も少なくないが、このところ税務署でも「簡易な移転価格調査」に力を入れている。国税庁では、平成28事務年度の調査において、海外取引に関して実地調査を1万3585件行い、3335件の非違を指摘している。同27事務年度の実地調査件数は1万3044件、同26事務年度は1万2957件なので件数は右肩上がりだ。

「簡易な移転価格」調査は、国税局の国際税務専門官が人事交流で税務署に配属され、中小企業でも関係する移転価格部分について法人税調査などと一緒に行っている。「国税局の調査は、企業規模が大きいためかなりの時間をかけて行うが、税務署の実地調査は2~3日。この中でできる調査なのでポイントを絞ってチェックしていく」(税務署)。

ポイントは海外子会社へ出向した役員報酬や社員の給与、日本の親会社からの借り入れに関する金利など。海外取引等に係る源泉所得税等にも厳しい目を向けている。国際税務に関しては、調査経験の豊富なベテラン税理士でも、ほとんど経験のない領域。それだけに「簡易な移転価格」調査には手を焼いている人は多い。法人税の調査と思い
きや、調査に際して海外取引等に係る源泉所得税等が入念にチェックされているなんてことも今年は多そうだ。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は租税研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャーとしても活動。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
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