2018年度の住民税が激減する自治体トップ5は、横浜市、名古屋市、大阪市、川崎市、東京都世田谷区。総務省が7月27日発表した「平成30年度ふるさと納税に関する現況調査(住民税控除額の実績等)」で明らかになったもの。
地方交付税をもらっている自治体なら赤字分の多くを交付税で穴埋めできるが、東京23区や川崎市などの不交付団体に対しては穴埋めがなく「純減」だ。住民税の在り方について改めて考えるべき時ではないか。
総務省自治税務局が発表した「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、平成30年度の住民税における控除額は約2448億円で、控除適用者数は約296万人に上る。昨年度が控除額約1783億円、適用者約227万人で、平成20年度の制度開始以来最高を記録したが、これを今年度はさらに約1.3~1.4倍上回った。
従来から指摘されている通り、これは返礼品が充実したことと無縁ではない。受入件数・額のともにトップ5は、特産品が多い地方の自治体が上位を占めている。
1位が北海道で220万3150件、365億円。2位が佐賀県で171万1533件、315億円。3位が宮崎県155万3016件、249億円。4位が山形県で131万9505件、226億円、5位が大阪府99万4419件で201億円となっている。
この中で、目を引くのが大阪府。5位に食い込んでいるが、これは泉佐野市が1市で86万件、135億円余りを受け入れていることに起因する。ちなみに受入れ額の多い市町村のトップ5は、1位が泉佐野市(大阪府)で86万2082件、135億3300万円。2位が都農町(宮崎県)43万18件、79億1500万円。3位が都城市(宮崎県)52万3164件、74億7400万円、4位みやき町(佐賀県)12万2058件、72億2400万円、5位上峰町(佐賀県)51万453件、66億7200万円となっている。
泉佐野市が突出しているわけだが、人気の秘密は返礼品が充実してりるからだ。たとえば、1万円を寄付した場合だと「黒毛和牛A4-5等級霜降りローススライスしゃぶすき用500g」「こだわりのプレミアムオーガニックコットンタオル大盛り15枚セット」などが返礼品だ。商品数はバラエティに富んでおり、肉、米、野菜、海産物、旅行、食事、宿泊などとなっている。
一方で、平成30年度の「ふるさと納税」で、それぞれの自治体に入るはずだった住民税の減収額が多かったトップ5は、横浜市103億円、名古屋市60億円、大阪市55億円、川崎市42億円、東京都世田谷区40億円となっている。
ふるさと納税は、自治体に寄付をすると、寄付額から2千円を引いた額が住所地の住民税から控除されるほか、所得税が還付される。そのため、納税者の気を引こうと自治体は「返礼品」に工夫を凝らす。この3年は、ふるさと納税は過熱傾向で、どの自治体とも返礼品が高価になる傾向が強く、総務省は問題視している。
とはいうものの、各自治体の返礼品競争は一部で止むことはなく、総務省が通知に従わない自治体リストを公表するまでに至っている。
確かに目先のことだけを考えれば、寄付する側として税金が減るのは嬉しい。ただ、自分が住む自治体の税収が減れば、十分な行政サービスが受けられなくなる可能性もある。
東京23区、横浜市、川崎市など、ふるさと納税により税収減となっても、地方交付税をもらっていないため、赤字分を交付税で穴埋めすることはできず、実質的な減収となる。
そもそも、ふるさと納税制度は、「生まれ故郷やお世話になった地域、これから応援したい地域の力になるため」という趣旨でスタートした。最近は、返礼品と税優遇ばかりがクローズアップされ、本末転倒の感もある。そろそろスタート時の趣旨に立ち返り、制度の適正運用について自治体間で意見を交わし、見直すべきところは見直す必要もあるのではないだろうか。