税金を素材とした映画は洋画邦画問わず多々あります。それだけ税金というものが私たちの生活に直結している証左ともいえますが、今回はハリウッドを代表する映画にスポットを当てて税金との関わりを見てみようと思います。

固定資産税を払うために・・・
税金を素材とした有名な映画として、まずアメリカ映画『ブルースブラザーズ(The Blues Brothers)』を紹介しましょう。
これは、1980年にジョン・ランディス監督、ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが主演したミュージカル・コメディです。レイ・チャールズ、ジェームス・ブラウン、アレサ・フランクリンなど沢山のミュージシャンが登場することでも大ヒットしました。
強盗の罪で3年間の刑期を終えて刑務所から出所した兄のジェイクは、迎えにきた弟のエルウッドと、かつて自分たちを育ててくれたカトリック系の孤児院に出所の挨拶に行きます。ここで、兄弟は、孤児院が5,000ドルの固定資産税を払えないため立ち退きの瀬戸際にあることを知ります。何とか孤児院を救いたい二人が、昔のバンド仲間と行ったコンサートがきっかけに転がり込んだ大金を資金として納税し、孤児院を救うというストーリーです。
ストーリー中では、とんでもないやくざな二人の主人公が様々な犯罪を引き起こし、パトカーとの壮絶なカーチェイスを繰り広げます。警察の負っ手を振り払って、なんとか納税期限までに納付しなければならないと命懸けで逃げ回る話は奇想天外な展開でしょう。
税金から逃げ回る父親像
他方、スティーブン・スピルバーグ監督作品の『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン( Catch Me If You Can)』も税金に関係する作品といってもいいかもしれません。
これは、1960年代、16歳から21歳までの間に、世界26カ国で約400万ドルを稼いだ実在の詐欺師フランク・アバグネイルを素材とした映画です。レオナルド・ディカプリオ扮する主人公の若き日々が、その犯罪の裏にある破産した父親への愛と共に描かれています。主人公を追うFBI捜査官役はトム・ハンクスが演じています。
主人公の父親はロータリーのメンバーに選ばれるものの、自分の妻は他の男のところへ行ってしまいます。主人公の父親は、失意に打ちのめされているにも関わらず税金を払わなくてはいけないことに頭に来て、税金を払うくらいなら逃げてやると決心し、IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)から逃げ続けるのです。主人公の父親はIRSから逃れるために職も居場所も転々とします。
詐欺師である主人公は最後に逮捕されますが、紙幣偽造に精通した彼がFBIに協力することで市民生活を送ることを赦され、後には偽造防止の手法のおかげでかなりの高額収入と自分の家庭を持つことができるようになったという結末です。
スティーブン・スピルバーグは納税を免れて逃げ回る父親を、悲しい人間として位置付けているのかもしれません。なにしろ、スティーブン・スピルバーグは、『ブルースブラザーズ』で、固定資産税担当の納税課の職員を演じていたのですから。