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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:海外不動産を利用した節税① 節税の仕組み

富裕層の間で海外の中古不動産への投資を活用した節税策が流行しています。この節税策は、中古資産の耐用年数を利用して多額の減価償却費を計上し、不動産所得の赤字を創り出すことがポイントとなります。

■節税の仕組み

海外不動産を利用した節税手法は、中古の海外不動産を購入し、中古資産の耐用年数を利用して多額の減価償却費を短期間で計上することによって不動産所得の損失を作り出し、他の所得(給与所得など)と損益通算して全体としての所得を減少させるというものである。

■中古資産の減価償却費の計算

減価償却費は、資産の種類や構造等によって定められた法定耐用年数に基づいて計算することとなっている。建物の法定耐用年数は、木造は22年、れんが造・石造は38年、鉄骨鉄筋コンクリート造は47年とされている。

一方、中古資産の場合には、法定耐用年数を用いることに代えて、次の算式により計算された年数によることができる。この算定方法を「簡便法」と呼んでいる。

 

イ 法定耐用年数の全部を経過した中古資産

法定耐用年数の100分の20

ロ 法定耐用年数の一部を経過した中古資産

法定耐用年数-経過年数+経過年数の100分の20

 

このことから、法定耐用年数を経過した中古不動産を購入し、簡便法を用いて耐用年数を算定すると、次の通りとなる(1年未満の端数を切り捨て)。

木造 : 22年×0.2=4.4年 → 4

れんが造 : 38年×0.2=7.6年 → 7

鉄骨鉄筋コンクリート造 : 47年×0.2=9.4年 → 9

このように耐用年数はかなり短くなることが分かる。

なお、国外に所在する建物に係る耐用年数についても国内に所在する建物と同じ耐用年数を適用することとなっている。

■日本と欧米の建物を取り巻く状況の違い

国外に所在する建物に対しても、国内に所在する建物と同様の方法で減価償却費を計算することとなっているが、ポイントは、日本と欧米の建物を取り巻く状況が大きく異なっているという点である。

まず、住宅を建築してから滅失するまでの平均年数を比べると、国土交通省の推計によれば日本は約32年であるのに対して、アメリカ合衆国は約66年、英国は約80年となっており、欧米では日本よりも長期間使用されているのである。

そして、日本の戸建住宅は、築後20年までで価値が大きく低下するといわれている一方で、アメリカ合衆国及び英国の戸建住宅は、中古住宅は新築住宅との価格差が小さい状況となっている。

このように住宅の流通を取り巻く状況は、日本とアメリカ合衆国、英国等では大きく異なっているのである。このような違いこそが、節税スキームを成り立たせる要因となっている。

■節税効果を数値例で確認!

海外の中古不動産に投資することで、どれくらいの節税効果があるのか、数値例で確認してみたい。

 

【ケース】


法定耐用年数(22年)のすべてを経過した木造の建物を1億円で取得した。
年間の賃貸料収入は500万円である。


法定耐用年数22年を経過した中古建物は、4年の耐用年数で償却できる。

すると、1年当たりの減価償却費は、1億円÷4年=2500万円となる。

年間500万円の賃貸料収入に対して、2500万円の減価償却費が発生するため、他に経費がなかったとしても、2,000万円の損失が毎期計上できることとなる。

不動産所得の赤字は給与所得などの他の所得と損益通算ができるため、全体としての所得を減少させることができる。仮に税率を50%とすると年1千万円、4年間で4千万円の税金が節約できることとなる。

償却が終わった不動産については、5年超保有して売却すれば、総合課税の税率より低い長期譲渡所得の税率である20%が適用されるため、所得税の負担を低く抑えることができる。

■会計検査院が問題視

会計検査院は、こうした海外の中古建物の減価償却を用いた節税策を問題視しており、今後、何らかの対策が取られる可能性がある。これについては、次回取り上げることにしたい。

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租税調査研究会事務局
tax@zeimusoudan.biz

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
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