飲食店の開業には少なくとも1千万円ほどかかると言われているため、自己資金だけで賄える人はほとんどおらず、大半の開業予定者が創業融資を避けては通れません。創業融資を受ける際に苦労するのが事業計画です。そこで今回は、事業計画の作成ポイントを紹介します。

事業計画の信頼度を高めることが融資を受けるための条件に!?
都内でワインバルを開業希望のQさんは、開業資金を調達するために日本政策金融公庫から創業融資を受けようと考えています。日本政策金融公庫へ提出する創業計画書を作成してみたものの、本当にこの計画でよいのか分からず悩んでいました。
創業計画書は、各金融機関が独自にフォーマットを用意しています。日本政策金融公庫であれば、日本政策金融公庫のホームページでダウンロードできます。内容はどの金融機関でもほとんど変わりはなく、創業の目的や動機、事業経験、手がける商品やサービスの内容、必要な資金や資金調達の内訳、売上高予測をはじめとした事業の見通し等で構成されます。
そのなかでも、売上高、原価率、人件費予測といった月間の収支計算から構成される「事業の見通し(月平均)」については返済能力を審査する上で重要な項目になります。これらの数値計画を作る上で、金融機関からの信頼度を高めるためには、以下の2つのポイントを押さえたものにする必要があります。
① 現実に達成できる計画になっているか!?
② 計画に記載された金額は妥当か!?(客観的に説明できるものになっているのか!?)
例えば、売上予測については、「月商300万円はいける」といった感覚的な数値をあげるのではなく、しっかりと「客単価 × 1日の見込客数(席数×回転率) × 営業日」まで落としこんで算出するようにします。さらに、客単価と1日の見込客数は平日と週末別、時間帯別に数値を分けて設定すれば、より精度の高い売上予測を立てることができます。
これに加えて、数値の裏付けとなる資料(メニュー、ベンチマーク店の客数調査資料、店前交通量の調査資料など)を用意することで、立てた売上予測の妥当性はぐっと高くなります。
現実に達成できる計画になっているかを検証することが重要!
その後Qさんは、飲食店専門の税理士からアドバイスを受け、売上予測や原価率の見積もりがあまかったことに気付きました。実現可能な事業計画に修正できたことにより、公庫の担当者から信用してもらい、満額融資を獲得することができました。
金融機関が融資の審査をするときは、提出された事業計画書に記載された数値を行内で保有している業種ごとのデータを比較して妥当性を審査しています。日本政策金融公庫の場合には、業種別の目安がHPにて公表されています。
事業計画にて作成した数値が下記の表のデータとあまりに乖離していないかの確認をしておく必要があります。もし、あまりに乖離するようであれば、「業種の一般はこの程度くらいだと思うが、自身の業態は◯◯の特徴があるので他店と比べると高く、又は低くなってしまう」のような乖離する理由を説明すると、事業計画の金額の妥当性はぐっと高くなります。
<業態別の原価率・人件費率の目安について>
・すし店:原価率43%、人件費率29% (FL 72%)
・一般食堂:原価率37%、人件費率34% (FL 71%)
・日本料理店:原価率37%、人件費率32% (FL 69%)
・酒場・ビヤホール:原価率32%、人件費率34% (FL 66%)
・西洋料理店:原価率34%、人件費率34% (FL 68%)
・中華料理店:原価率35%、人件費率32% (FL 67%)
・料亭:原価率35%、人件費率33% (FL 68%)
・そば・うどん店:原価率33%、人件費率36% (FL 69%)
・喫茶店:原価率29%、人件費率36% (FL 65%)
・BAR・キャバレー:原価率17%、人件費率37% (FL 54%)
・スナック:原価率15%、人件費率37% (FL 52%)
※出典:日本政策金融公庫総合研究所「小企業の経営指標調査2016」
飲食店開業の第一歩は事業計画から!事業計画を信用してもらうためにも、実現可能な説明できる計画を作成することが重要です。