内部統制評価の過程で不備が検出された場合や、十分な評価手続きが実施できなかった場合の対応について解説します。
内部統制評価の過程では「財務報告に係る内部統制の不備」が検出されることがあります。
不備が検出された場合、経営者は不備を是正するために必要な対応をとらなければなりません。
開示すべき重要な不備が評価基準日に是正されていない場合、内部統制報告書等へ開示すべき重要な不備がある旨や是正されない理由等の記載が必要となります。
また、実務においては不備の検出だけでなく、評価基準日近くに買収を行った場合等、そもそも十分な評価手続を実施できないような場合もあります。
最終的な内部統制報告書がどのような記載になるか等実務上の論点は様々です。
今回は、経営者評価の過程で内部統制に不備が検出された場合、十分な評価手続きが実施できなかった場合、それぞれの内部統制報告書への影響について記載したいと思います。
不備等の報告
財務報告に係る内部統制評価の過程で識別した内部統制の不備は、その内容及び財務報告全体に及ぼす影響金額、その対応策、その他有用と思われる情報とともに、識別した担当者の上位の管理者等適切な者にすみやかに報告し是正する対応が必要となります。
検出された内部統制の不備は、重要性を勘案し経営者、取締役会、監査役等及び会計監査人に報告する必要があります。
また、内部統制報告書の基準日は「期末日」となるため、開示すべき重要な不備が期末日に存在する場合、内部統制報告書に、開示すべき重要な不備の内容及びそれが是正されない理由を記載しなければなりません。
不備の是正対応
経営者による評価の過程で発見された財務報告に係る内部統制の不備は、適時に認識し、適切に対応される必要があります。
ただし、内部統制報告書の基準日は「期末日」となるため、期中に開示すべき重要な不備が発見された場合であっても、内部統制報告書の評価時点(期末日)までに是正されていれば、財務報告に係る内部統制は有効であると認めることができます。
- 開示すべき重要な不備等の是正手続
上述の取り扱いから、内部統制の評価及び報告の計画を作成に際しては、内部統制の不備を発見後に不備を是正することを想定し、検証手続きの終了予定日から評価の時点(期末日)まで一定の期間を確保しておくことが重要となります。不備を早期に検出する計画を策定することで、不備が検出された場合も是正手続きに十分な検討時間を確保することが可能となります。 - 期末日後に実施した是正措置に関する評価手続
内部統制の評価時点は期末日である一方、是正措置が期末日までに間に合わず、期末日後に実施されるケースがあります。
この場合、内部統制の評価基準日は期末日であることから、期末日における財務報告に係る内部統制の評価には影響しませんが、経営者は、内部統制報告書の提出日までに実施した是正措置がある場合は、その内容を内部統制報告書に付記事項として記載することができます。
また、内部統制報告書の提出日までに有効な内部統制を整備し、その運用の有効性を確認している場合には、是正措置を完了した旨を、実施した是正措置の内容とともに記載することができます。
評価範囲の制約
財務報告に係る内部統制の有効性を評価するに当たって、やむを得ない事情により、内部統制の一部について十分な評価手続を実施できない場合があります。
例えば評価基準日近くに企業買収や合併があった場合等、内部統制基準に準拠した評価手続を実施することが困難となる場合があります。
そのような場合、当該事実が財務報告に及ぼす影響を十分に把握した上で、評価手続を実施できなかった範囲を除外して財務報告に係る内部統制の有効性を評価することができます。
「やむを得ない事情」とは、例えば、下期に他企業を買収又は合併したことや、災害が発生したこと等、財務諸表を作成して取締役会の承認を受けるまでに通常要する期間内に内部統制基準に準拠した評価手続を実施することが困難と認められるような事情が該当します。
「下期」等はあくまでも例示ですので、該当する事象が発生したが内部統制報告書作成日までにやむを得ず評価を完了することができない場合で、その合理性が認められるときには、「やむを得ない事情」に該当することとなります。
なお、評価範囲の除外に関しては、その範囲及びその理由を内部統制報告書に記載することが必要となります。
また、評価を実施できないことが財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす場合には、内部統制の評価結果は表明できないこととなるため注意が必要です。
まとめ
今回は内部統制の評価手続きを実施した結果、「不備が検出された場合」、「十分な手続きが実施できなかった場合」について内部統制報告書にどのような記載が必要となるかを記載しました。
内部統制報告書は第三者へ開示されるため、記載内容については社内外の多くの人が関心を持っています。
実務上はJSOX担当者等が内部統制報告書草案の作成を行い、経営者とのコミュニケーションを通じて報告書が完成します。
内部統制報告書の提出直前に、経営者が想定していないような内部統制報告書の記載とならないように、期中の評価手続きの段階から、最終的な内部統制報告書へ影響を踏まえた社内メンバーへの進捗報告を行うことが重要です。
不備が検出されるような場合も、内部統制報告書に記載される可能性がある重要な不備であるか否か等の見込みを含めて、早めに社内で連携、共有する点に注意しながらプロジェクトを進めていただくと良いと思います。
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