Excelのような速さで、かつ会計データが増えても同料金。会計事務所の作業効率化とデジタル化を通じてバックオフィスを支援する会計ソフト「フリーウェイ経理Pro」。シリーズ製品の利用者は全国で30万ユーザーを超え、2022年7月からは、AIが直近3会計年度の全科目合計残高試算表のデータに応じて、金融機関からの融資オファー情報などが提供されるシステムを導入するなどDX化を進めている。今回はフリーウェイ経理Proの魅力、そして同サービスを10年近く利用している辻・本郷税理士法人の経理宅配便事業部に使用感などをお伺いしました。(取材・撮影/株式会社レックスアドバイザーズ 市川)
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起業家を育てたい。無料の会計ソフト立ち上げ秘話
フリーウェイ経理・給与計算の立ち上げ背景を教えてください。
井上: 元々は営業マンとして企業に従事していましたが、29歳のときに独立をしました。
起業をする際に、私自身も経理に必要な会計ソフトをはじめ、請求書システムや給与計算ソフトを購入しましたが、やはりスタートアップ当初は予算もなく、費用はできる限り本業のほうに投資したいのが本音でした。
これだとほかの起業家の人たちが育たないと感じましたので、独立したての方は無料で使えて、会社が成長し従業員が増えたら有料になるというビジネスモデルにして、給与計算などの経理業務や請求書作成、顧客管理も無料でできるサービスを作ることにしました。
経理宅配便(R)のサービス開始とフリーウェイ導入のきっかけを教えてください。
遠藤:私自身は1995年に辻・本郷税理士法人の子会社に入社をしました。
当時、子育ても少し落ち着いたので、これまでの経理の経験を活かし、パートスタッフとして従事をしていましたが、経理宅配便(R)は私が入社した年に始まったサービスでした。
経理宅配便(R)は、小規模事業者向けのサービスで、売上・仕入・経費の資料を送るだけで決算までサポート可能ですが、封筒に領収書を入れてもらえばこちらで対応するので、経理丸投げ代行のようなイメージです。
ご契約者は、お一人様から数人程度の小さな会社が多いため、バックオフィスの利用も、できる限り低価格でなくてはなりません。
現在、開業初年度から年商1,000万円までは、月額2万5000円の決算申告料込み追加料金なしでご利用いただけますが、この料金設定は当初より変えていません。
しかし、拡大していく組織の中で同じ料金形態で続けるためには、事業部内の作業効率化を進める必要がありましたし、原価率の問題もありました。
なかなか利益体質にならず悩んでいるところに、現会長の本郷孔洋先生に「無料の会計ソフトを作っている人に興味があるからアポをとってほしい」と言われました。
ある雑誌に、井上さんの記事が載っていたのです。2014年ごろの出来事です。
当時、クラウド型の会計ソフトは珍しく、実際にお会いしてみて、サービスを始めたきっかけや中小企業を支援したいという熱意にも心を打たれました。
“まるでExcelに入力しているような速さ”、フリーウェイ経理・給与計算の魅力
実際に「フリーウェイ経理Pro」を使ってみていかがでしょうか。
大西:まず、なにより動作が速いです。Excelのようにスムーズに進むので、作業ロスが少なくて済みます。
お客様がご自身で入力するケースもありますが、お客様に入力の仕方をそこまでレクチャーをしなくても入力してもらえるので、双方負担が少なく済む点もメリットです。
経営者の方で経理が得意な方はそこまで多くないと思います。
また、知見があっても事務的作業に時間がかかるのは、経営をする上でも負担になってきます。
その点、フリーウェイは機能も絞っているので、迷わず直感的に作業を進めることも魅力的です。
強いて言うなら、作業の速さで振替伝票は苦手な部分。
1つの伝票で複数の仕訳をするのはできるタイプではないので、そこの操作は慣れが必要です。それも1週間もあれば慣れるので、導入を検討されている会計事務所の方でも、安心して使用開始ができると思います。
トゥイ:会計事務所側にとっても、動作が速いのは何よりもありがたいことで、私たちが日ごろ時間を要するのは仕訳作業と、データが合っているかの確認です。
現在、1社につき3時間弱で試算表まで作成ができており、決算申告も平均9時間でできるようになりました。
経理宅配便(R)では、一人当たり60社ほど担当していますが、顧客データが一覧になっているので、1社ごとにログインし直す必要もありませんし、その点がスピード重視の流れ作業に対応できるソフトと感じています。
給与計算に関しても同様で、1つの画面で担当顧客のデータ処理が完了するので、機能そのものだけではなく、顧客管理面においてもスムーズで便利だと思います。
0.01秒を0.001秒に…半年かけ速さの実現をさせる。
会計事務所向けの会計ソフトを開発するにあたり工夫した点はありますか。
井上:今、お話があったようにExcelのような速さというのは弊社でも力を入れた部分でして、とにかく処理時間が短くなるようにしました。
会計ソフトを一般企業が使用する場合、チュートリアルがあると思いますが、会計事務所であればそのチュートリアルはむしろ不要になると思います。
このようなサーバーが重くなってしまうものをとにかくシンプルにすることに努めました。
これである程度は、動作速度の担保ができますが、開発で難しかったのは、0.01秒を0.001秒にすること。
クラウドというのは結局、そこのサーバーに入ってくる人数によって速さが変わってきますが、同時に複数名で作業をする会計事務所において、1秒も待たされるというのは致命的ですので、この会計入力の待ち時間を0に近づける開発に半年間ほど要しました。
しかし、作業がシンプルで簡単というのは、一見メリットが大きいように見えますが、実は、簡易的にすればするだけ課題も見えてきます。
銀行取引が自動仕訳化できたり、操作が簡単であることはユーザーにとって便利だとは思います。
しかし、経理の知識がないまま申告書ができてしまうのは非常に危険です。
会計事務所に依頼をしているので当然プロのチェックは入りますが、開発を進める上では、どこまで簡易で自動化させるかはバランスを重視しなければならないと思っています。
現在、開発を進めているサービスはありますか。
井上:“経営アドバイザー機能”というものに力を入れています。
こちらは、AIを活用し、入力された仕訳データから、今後6か月間の現預金残高の予測が可能になるものでして、いわゆる経営状況を分析して、AIが健康診断のようなことを実施します。
また、資金繰りが必要な場合、ここの金融機関であれば融資の可能性がありますとシステムの画面に表示されるので、融資のオファーを受けることも可能になりました。
中小企業を支援したい。両社の今後の展望
今後の展望について教えてください。
遠藤:10年間、同じ料金形態できましたが、引き続き値上げはせず、起業家の支援と顧客にソフト利用料を転嫁せず無料にして、経理は丸投げで本業に励めるサービスを提供したいと思っています。
小さな会社では、なかなかバックオフィス要員を雇用するのは難しく、それをソフト料金を支出しながら社長さん自ら作業させるのでは、本来の起業家支援とは言えませんし、それは売上に結びつかない余計な時間の浪費と考えているからです。
とはいえ、インボイス制度が始まると消費税の複雑な会計処理作業も増えるので、会計事務所全体において値上げせざるをえないかもしれません。
しかし経理宅配便(R)は、これからも低価格で高クオリティなサービスを提供するため、会計事務所の原価でもある経理や給与のソフト料金をできる限り節減して、価格の据置に努めていきたいと考えています。
井上:インボイス制度については、QRコードを利用したインボイス規格「QRインボイス」を電子インボイス支援研究会で策定しました。これは、レシートや領収書にQRコードを埋め込み、それをスキャナで読み取れば自動仕訳ができるような仕組みです。これにより、遠藤さんからお話があったような会計事務所においての負担も軽減されると思います。
今後も税制は変わっていくと思いますし、それにより会計事務所の職員さんの仕事も変化していくことでしょう。私たちの使命としては、デジタル化はもちろん、まだまだ仕訳作業など経理業務は効率化できるので、その実現に力を入れていくことだと思っています。
当サービスをお使いの中小企業、会計事務所の皆さんにこれからも便利だと思っていただけるサービスを提供していきたいと思います。
辻本郷税理士法人 代々木事務所 「経理宅配便(R)」
●所在地
東京都渋谷区代々木1-36-4 全理連ビル2階
●会社HP
https://www.ht-tax.or.jp/legal_person/delivery_service/
小規模事業者向け会計サービス 経理宅配便(R)