IPOといえば経理が大変。そんなイメージはないでしょうか。タイムリーディスクロージャーなどのために確かに大幅な経理部門の強化が必要です。しかしながら、経理意外の従業員にも影響があります。どういった観点で影響があるかなどを従業員の目線も踏まえて解説していきます。

目次

  1. IPOのための経理とは
  2. IPOで必要とされること
  3. 経理体制について
  4. まとめ

1.IPOのための経理とは

IPOをするといえば、経理が大変になるイメージはないでしょうか。実際に経理部門の大きな体制構築が必要となります。IPOをするということは、投資家に会社の株式が売買されるということ。投資家が売買について適切に判断できるように情報開示を適時にやっていくことが求められます。

情報開示を行うために、いわゆる「会計」をすることが必要です。しかし、上場していない会社の経理は、「税務」のための経理になりがちで、「会計」になっていないことがほとんどです。「会計」と「税務」は似た計算で、結果も近いものにはなりますが、異なるものなのです。

 

「税務」は税法上のルールに従って計算し、会社が納めるべき税金を算出した「法人税の申告書」を作成することを目的としています。そしてこの税金のルールは、概ねは経済実態を表しますが、ある程度しか表すことが出来ないため、会社の経済実態を株主に開示するための情報としては不十分なのです。

また、通常の中小企業は「会計」が仮に出来ていたとしても、月次決算が行われていないことや、行われていてもタイムリーディスクロージャーと呼ぶには遅い決算となっていることがほとんどです。

IPOを目指すためには、適切かつ適時に会計を行い、貸借対照表と損益計算書という財務諸表を作成することで、利益と財政状況を示し、投資家が会社の状況を把握して、今後投資をするかどうかについての意思決定をできるようにすることが求められます。

2.IPOで必要とされること

では適切な会計のタイムリーディスクロージャーを行うためにどういったことが必要なのかということですが、それには次のような要素があります。

 

①会計方針の検討

収益や費用をどういったタイミングで計上するのかといった認識基準や固定資産など個別の会計処理の方針について検討し、定めることが必要となります。

たとえば売上でいえば、現金を受け取ったときが売上のタイミングとする現金主義から、債権回収をしていないなどで現金はまだ受け取っていないけれどサービスの提供は完了して納品できており売上を計上する発生主義として売上を計上するなどの切り替えが必要となります。

 

②規定の整備

上記のような方針を含めて、勘定科目の区分及び適用基準等を明確にし、規定やマニュアルとして整備することも必要です。規定としては次のようなものが想定されます。会社の状況に合わせて過不足があります。

 

・経理規定

金銭出納、資金管理、債権 債務管理、原価計算、予算管理、決算業務などの経理業務に関する基本的な事項を取り決めます。具体的な処理方法などは経理マニュアルとして別にまとめることもあります。

 

・原価計算規定

原価計算規定は、財務諸表の作成、適正価格の検討、経営計画の策定、原価管理や予算統制に役立たせるために原価の集計方法を取り決めます。

 

・棚卸資産管理規定

棚卸資産管理規定は、棚卸資産の在庫数及び在庫金額の正確な把握及び棚卸資産の適切な保管を行うことで棚卸資産に関する適切なマネジメントを行うために規定します。

 

・勘定科目取扱規定

経理規定で定めるには細かい会計処理の具体的な内容について定めます。

 

・連結財務諸表作成要領

グループとして活動している場合、企業グループ全体の経営状況を知るためには、個別財務諸表を合算することが必要です。しかし、合算するだけでは正確なものとはなりません。連結修正を行い、正しい金額に計算し直す必要があります。連結決算の仕組みや手順を定めます。

 

・予算管理規定

予算の設定により業務の統制を行い、予算実績比較による業績測定を行うことにより、具体的対策の立案・実施に役立てるために、予算編成及び予算統制について定めます。

 

③決算プロセスの整備

株式を公開すると、有価証券報告書、四半期報告書、決算短信等のさまざまな開示資料の作成・公表が義務付けられます。タイムリーディスクロージャーの観点から、期限も重要な要素となります。このため、品質を一定水準以上に維持する体制を整備しつつ、スケジュール通りに効率的な作業を行うことができるように開示マニュアルを整備する必要があります。

 

④経理体制の強化

取締役会は月次の締め日から10日程で開催することが必要とされます。これは経理としては仕組み化をしていないと対応できないスケジュールとなります。なぜなら、取締役会では月次決算を行った数値に基づく会議が求められるからです。そして、月次の締め日から10日程で取締役会において報告ができるということは、それまでに経理の信憑性を確認できる状況を整えられているということになります。売上や経費の計上漏れなどが起きないように現場から情報の収集が的確になされることが必要となります。

 

また、金融商品取引法においては、決算日から45日以内で四半期決算報告を行う必要があります。年度決算では有価証券報告書などの決算発表が必要となります。スケジュールを逆算し、実施すべき対応に期限を決めて担当者に割り振っていくなど、緻密な作業計画が求められます。

3.経理体制について

上述のように日常から経理体制の強化が必要となります。事業部門についても経費精算などを適時に行えるように強化が必要となります。人員は急に追加することはできません。適切な採用計画と教育研修計画を経てはじめてスムーズに機能します。

株式上場準備や上場後の実務において、有価証券報告書の作成など金融商品取引法や取引所の定める諸規則等への対応について専門的知識を必要とし、対応量も多いです。

アウトソーシングも利用はできなくはないのですが、アウトソーシングしている業務について管理責任を体制から求められます。また、業務の性質として重要な点はアウトソーシングでは認められません。例えば記帳業務で、個別の仕訳入力に対する承認や財務諸表の作成といったところは自社内で対応できる体制を構築する必要があります。

4.まとめ

IPOで求められるタイムリーディスクロージャーなどのための仕組みづくりや人員などの体制強化は会社の成長を想定して計画的に行っていくことが大切です。仕組みづくりをして慣れていくことが負荷をへらすポイントでもあります。目先の作業のやり方だけでなく、ディスクロージャーでなぜそのように求められるのか仕組みの趣旨を理解して取り組んでいきましょう。

 

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