登録しない場合の対策
免税事業者がインボイス登録をしないと決めた場合、自分自身の事務負担や税負担に変化はないため、特段の対策は必要ないように思いがちです。
しかし、取引先からは前述のようなネガティブな反応が示される可能性があります。
放置するわけにもいかないので、これに対応するための方策は考えておきましょう。
1. 価格の交渉を行う
取引先から値下げの要請を受けた場合は、その値下げ幅が承服できるものであるか検討し、受け入れがたい場合には積極的に交渉を行うべきでしょう。
交渉する際は、「自分が登録をしないことにより、取引先の手取りがどれだけ減るか」を意識することが重要です。
具体例で確認しましょう。
【インボイス制度開始前の取引条件】
- 税別単価10万円+消費税相当額1万円を取引先に請求していた
- 取引先は、上記1万円について仕入税額控除を受けていた
この条件でインボイス未登録を理由に値下げを要求されるとしたら、値下げ幅として妥当なのは、仕入税額控除が出来なくなる金額である1万円までです。
なお、インボイス制度開始後3年間(2023年10月1日から2026年9月30日まで)は、未登録事業者からの仕入であっても80%の仕入税額控除が可能です。
これを考慮すれば、2026年9月末までの妥当な値下げ幅は2,000円(10,000円×20%)となります。
値下げの要求があった場合は、インボイス制度による影響以上の便乗値下げが求められていないか、確認することをお勧めします。
2. 優越的地位の濫用には毅然と対応する
事業者同士の取引において、取引価格をどう設定するか、誰と取引するかは、おのおのの経営判断によって自由に決めるべきことです。
ただし現実的には、下請法や独占禁止法、建設業法などによって「優越的地位の濫用」が禁じられており、一定の制約が課されています。
「優越的地位の濫用」とは、取引関係上の優位な立場を利用して相手に不利益を与えることを指します。
インボイス制度に関連したものとして、次のような行為がそれにあたります。
- 登録事業者で無いことが請求段階で発覚し、事後的に要求される
- 文書で一方的に通告されるなど、交渉の余地すら無い
- 交渉の機会は与えられるものの、形式的なものに過ぎない
(参考:免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A)
そもそも誰とどのような取引を行うかは自由なのですから、こうした行為を承服できるのであれば、受け入れることもまた自由です。
しかし、こうした不誠実な対応を取る取引先との関係が続くことは、長い目で見て大きな不利益をもたらすと筆者は考えます。
交渉を要求する、取引関係を見直す、しかるべき機関に通報するなど、毅然とした態度をとることも必要です。
3. 請求書や見積書に消費税を載せないようにする
免税事業者が発行する請求書に消費税相当額の記載があった場合、その請求書を受け取った取引先に「なぜインボイス登録していない相手に消費税を払わなければいけないのだ」と思わせてしまう可能性が高いです。
そうなれば当然、値下げ要求や取引見直しなどといった対応を助長する結果になります。
そこで対策として、請求書や見積書に消費税相当額を載せないようにすることも有効な手段だと考えられます。
ただし請求書作成システムの仕様上、消費税を載せざるを得ないこともあるでしょう。
その場合は「税込金額は消費税分のディスカウントを考慮して設定している」旨が伝えられると、齟齬が起きないと思われます。
登録しないと決めたら、交渉力を高めることが重要
登録しないと決めたら、価格以外の面で交渉力を高めていく必要があります。
登録事業者が登録済事業者と競合した場合、消費税相当分だけ価格競争力の面で不利に立たされてしまうためです。
セールスやマーケティングの能力を高める、品質・納期・アフターサービス・コミュニケーションといった顧客価値を高めるなど、交渉を有利に進められるようにしましょう。
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