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DeNA キュレーション事業で38億円減損 IFRSにおけるのれん減損処理

ディー・エヌ・エー(DeNA)は医療系キュレーションメディア「WELQ」等を巡る問題を契機に減損損失を計上した。本稿では、DeNAが採用しているIFRS(国際会計基準)における減損処理の流れを本件に沿って簡単に解説する。
なお、簡素化のために省略している手続や異なる名称を使用している項目がある。

2月8日、DeNAは2016年度第3四半期(4~12月)決算を公表し、キュレーション事業については事業再開の目処が見えないとして、のれん等に関する減損損失として38億5900万円を計上した。DeNAのキュレーションメディアに関する問題の経緯についてはこちらを参照されたい。
http://jp.techcrunch.com/2016/12/01/welq-dena/
のれんの減損処理にはいくつかのポイントがあり、時系列に沿って解説する。①のれん計上、②のれん償却の要否、③減損の兆候の判定、④資金生成単位、⑤回収可能額の算定、⑥減損の認識という流れになる。

①のれん計上

一般的に、買収対価と買収対象企業の純資産の差額がのれんとされる。しかしこれは広義ののれんであり、実際に計上される会計上ののれんとは異なるケースがある。
会計上は、顧客リストや仕掛り中の研究開発など、オフバランスされていた項目も買収をきっかけに無形資産として計上する場合があり、買収対価と純資産との差額よりのれん計上額は小さくなる可能性がある。
本件においては、MERY運営会社のペロリ、iemo及びFind Travelの買収により35億円ののれんを計上しており、新たにのれん以外の無形資産は計上していないと考えられる。

② のれん償却の要否

IFRSでは、のれん、耐用年数を確定できない無形資産および未だ使用可能でない無形資産については、のれんの規則償却は行わない。これは一般的に最も知られているIFRSの特徴ではないだろうか。一方、日本基準では一定期間内に規則的に償却する。
そのため、DeNAはのれんの償却をしておらず、貸借対照表には各社買収時ののれんがそのまま残っていたと考えられる。

③ 減損の兆候の判定

IFRSでは最低1年に一度は減損テストが必要で、さらに減損の兆候があった際はその都度減損テストを行う。この点、2016年12月のキュレーションメディア問題の顕在化が減損の兆候に該当し、今回の四半期決算で減損テストを行うことになったと考えられる。

④ 資金生成単位

回収可能価額は資金生成単位と呼ばれる、他の資産のキャッシュ・インフローから概ね独立したキャッシュ・インフローを生み出す最小の単位毎に算定を行う。また、のれんの帳簿価額を資金生成単位に配分する必要がある。そしてのれん配分後の資金生成単位毎に減損テストを行う。
DeNAの報告セグメント上、キュレーションメディア事業は新規事業・その他のセグメントに含まれており、キュレーションメディア事業は一つの資金生成単位になっていると考えられる。そのため、ペロリ等の買収により生じたのれん35億円は資金生成単位である当該事業に配分されている。
ちなみに、DeNAは全社ベースで500億円以上ののれんが前期末貸借対照表に計上されているが、主にゲーム事業、スポーツ事業に配分されている。

⑤ 回収可能価額の算定

回収可能価額は、売却によって得られる金額である公正価値か、使用することにより得られる将来キャッシュフローの現在価値の大きい方である。
この点、「キュレーション事業の再開は未定」ということなので、当然将来キャッシュフローは算定できず(できたら再開は未定ではないだろう)、売却価額も決められないと考えられる。
そのため、回収可能価額は限りなく小さくなり、今回DeNAはゼロと判断した。
ちなみに、日本基準では回収可能価額の算定の前に、まず割引前将来キャッシュフローを算定し、これが帳簿価額を下回っていた場合に限り減損を認識する。簡単に言うと、まずは高めに計算された将来キャッシュフローの金額と帳簿価額を比べて、それでも帳簿価額が大きければ減損を認識しようというのが日本基準である。

⑥ 減損の認識

資金生成単位について、回収可能価額が配分後ののれんを含む帳簿価額を下回っている場合、減損を計上する。まずのれんを減額し、残額についてのれん以外の資産を減額する。
キュレーションメディア事業(資金生成単位)の帳簿価額は、のれん35億円とソフトウェア等3億円の38億円あったが、回収可能価額はゼロなので、38億円全額を減損計上した。もし仮に回収可能価額が1億円あった場合、のれん全額の35億円とソフトウェア等のうち2億円が減損となり、ソフトウェア等1億円が資産として残ることになる。
なお、日本基準では一度計上した減損損失を戻し入れることはできないが、IFRSでは可能である。しかし、IFRSにおいても、のれんに関する減損損失の戻入れは認められていない。

今回キュレーションメディア事業に関するのれん全額の減損となったが、まだ何も結論は出ていない。減損はあくまでもM&Aによるのれん等に関するもので、それとは別にキュレーションメディア事業からは継続して赤字が生じており、2017年1月~3月の第4四半期も十数億円の赤字の見通しである。また、事業再開の可否も不明であるが、3月にはキュレーションメディア事業に関する第三者委員会の調査結果が公表される見通しとなっており、今期の株主総会で経営陣の進退を含め一応の決着を見るだろう。

著者: 冨岡大悟

TOMIOKA C.P.A OFFICE 代表/公認会計士

KPMG/有限責任あずさ監査法人のIPO部に所属し、会計監査、IPO関連業務等に従事。フロンティア・マネジメント株式会社にて、M&Aアドバイザー業務等に携わる。その後、オーストラリアに駐在し、欧州系コンサルティングファームのシドニー支社に勤務。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後、事業会社のCFOを経て、2015年にTOMIOKA C.P.A OFFICEを開設し、IPO、M&A、資金調達等のコンサルティングを行っている。

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