2016年も残すところ後わずかになり、今年の新規上場社数も着地が見えた。そこで、2016年の総まとめに、IPO関連の出来事の中から特筆すべきものを筆者の独断と偏見によりピックアップした。

① 2009年以来のIPO件数前年割れ

11月30日、日本取引所グループは2016年の上場見込み数を87社と発表した(12月8日にこのうち1社の上場承認取消しを発表)。これにより、2015年の98社を下回ることが確定し、IPO件数の前年割れは2009年以来となった。
しかし、これはIPOマーケットが落ち込んできたわけでも、上場予備軍の会社数が減ってきたわけでもないと考える。
2014年以降、新規公開会社の経営者の不適切な取引や上場直後の業績予想の大幅な修正などが立て続けに起こり、これをきっかけに取引所の審査が厳格化したことが、IPO社数の減少に影響していると考えられる。
実際、大手証券会社及び監査法人の担当者からも「上場準備会社数自体は減っていない。しかし、上場審査を通過する割合が前年より低下している」という趣旨の証言を得ている。

② 注目の大型銘柄IPO

ここ数年、毎年上場すると言われ続けていた韓国NAVER(ネイバー)子会社のLINEが7月15日についに上場した。
東証1部とニューヨーク証券取引所との日米同時上場であり、時価総額は1兆円を超えた。
直前期赤字での上場となったことや、これまでベールに包まれていたLINEの株主構成、役員構成、役員報酬なども話題となった。
とにかく毎年のように上場観測が出ては上場見送りとなっていたLINEの上場には、筆者は関係者でも何でもないが感慨深いものがある。
また、その他の大型銘柄としては10月25日に九州旅客鉄道(JR九州)が東証1部に上場し、時価総額は初値ベースで4960億円とLINEに次ぐ規模のIPOとなった。

③ 注目銘柄の上場延期

LINEと同じく、ここ数年IPO業界で注目を集めていたZMP。といっても、その規模の大きさではなく、自動運転技術という事業内容の独自性と新規性だ。
そんな中、東証は11月14日にZMPの上場申請を承認したと発表したため、11月はIPO関係の方々と話すと必ずといっていいほどZMPの話題が出るほどだった。
ところが、顧客情報の流出による情報セキュリティ体制の不備を理由に、12月8日に上場延期を発表したため、関係者間には失望感が広がった。
ちなみに、新規上場承認取消しは他にもあり、2016年のオークネット、2015年のリッチメディア、ネットマーケティング及びグラフィコ、2014年のジャパンケーブルキャストが該当する。これらの会社は今現在も上場しておらず(上場する意思がない場合もあるが)、数カ月延期すれば簡単に上場できるというわけではないのが実情だ。

④ インフラファンド市場第1号銘柄の誕生

急にマニアックな話になって恐縮だが、6月2日にタカラレーベン・インフラ投資法人が日本で初めて東証のインフラファンド市場に上場した。
12月1日には第2号銘柄としてイチゴグリーンインフラ投資法人が上場している。
インフラファンド市場とはなんぞやという話だが、ざっくり言うと太陽光発電施設や港湾施設などのインフラ施設を投資対象とする投資法人又は投資信託が上場対象となる市場である。詳細は東証のホームページを参照されたい。
http://www.jpx.co.jp/equities/products/infrastructure/index.html
REIT市場などとの違いや、そもそもインフラファンド市場創設自体に賛否両論があるなど、いろいろと論点はあるものの、それらについては要望があればまたの機会に言及するとして、ひとまず2015年4月30日の市場創設以来、初の上場案件ということで今回は取り上げた。