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個人開業医が医療法人成りを考えるタイミング

個人開業医に対して課される税金には、主に所得税・住民税・消費税が挙げられる。今回は、個人開業医にかかる税金の概要と医療法人化することのメリット・デメリットについて紹介したい。

■個人開業医にかかる税金の概要

個人開業医に対して課される税金には、主に所得税・住民税・消費税が挙げられる。医業収入は事業所得に該当し、収入金額から必要経費を控除した残額について所得税の累進税率および住民税の10%が課されるという仕組みだ。

医業収入のうち社会保険診療については、消費税法における非課税売上に該当するため消費税の心配は不要。しかし、差額ベッド代や健康診断・予防接種などの自由診療、このような売上は、消費税法における課税売上に該当するため、それらの収入金額が1千万円を超える場合には、消費税の納税が必要である。

所得税法では、課税所得金額が900万円超1800万円以下の場合には所得税率が33%、1800万円超4千万円以下の場合には所得税率が40%、4千万円超の場合には45%と規定されている。

そして、厚生労働省による医療経済実態調査(平成27年実施第20回年次報告)によると、個人開業医の1施設当たり、損益平均はおよそ2100万円。上記税率に照らし合わせると所得税率は40%となり、住民税率は10%であるため、合計でおよそ50%の税金が課されることとなる。

ただし、医業収入については、租税特別措置法第26条に規定する概算経費という制度が利用でき、もう少し税制面で優遇されるが、この制度を使うためには、①社会保険診療収入が年額5千万円以下であること、②医業収入にかかる総収入金額が7千万円以下であること、という2つの要件をいずれも満たしている必要がある。

しかし、上記でも示した厚生労働省による調査結果では、医業収益の平均は8千万円。概算経費が適用できない医師が半数以上であり、個人開業医にかかる負担は、非常に大きいものということがわかる。

■医療法人化を検討

個人開業医にかかる税負担が非常に大きいということは、上記で説明したとおり。このような場合に、次に検討すべきが、医療法人化するか否かである。

まず、医療法人化した場合の最大のメリットは税率差。所得税率は~45%であるのに対し、法人税率はおよそ~23%、住民税等を合計してもおよそ30%程度までとなる。さらに、医療法人は普通法人とは異なり、社会診療報酬分については事業税が非課税になるなどの特例もある。

また、経費についても医療法人化することによりメリットがある。たとえば、個人開業医が生命保険に加入した場合には、生命保険料控除として最大12万円の所得控除となる。しかし、医療法人にて生命保険に加入した場合には、保険料の1/2を経費として算入することができるのである。(保険契約により異なるため必ずしも1/2とは限らない。)

医療法人化を検討すべきひとつの目安は、上記でも説明した概算経費が適用できるか否かである。概算経費が適用できなくなると、急激に税負担が増加してしまうため、この頃には医療法人化を検討することをお勧めしたい。

■医療法人化を検討の際の注意

上記では個人開業医にかかる税金の概要と、医療法人化のメリットについて説明をしてきた。これだけでは医療法人化をしない手はないと考えるだろう。しかし、当然ながら医療法人化することによるデメリットも存在している。

もっとも大きなデメリットは、医療法人は株式会社とは性質が異なることにある。株式会社では、会社の財産は株主に帰属しており、会社を閉鎖する場合には株主に分配される。かつては医療法人についても持分というものがあったが、医療法の改正により現在は持分なしの医療法人しか設立することができず、医療法人に蓄積された財産は返ってこないのである。

それならば配当を出せばよいと考えがちだが、医療法人は配当・分配は禁止されている。また、一度医療法人化をした場合には個人開業医に戻ることができないということもデメリットのひとつである。

このようなメリット・デメリットを総合的に勘案し、医療法人と成るべきか、成る場合にはどのタイミングで成るのかを検討する必要がある。みなさんのクリニックは今、どのくらいの立ち位置か、一度税理士に尋ねてみてはいかがだろうか。

著者: KaikeiZine編集部

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