相続税調査は、これまでも調査官有利といわれてきたが、平成27事務年度(平成27年7月~同28年6月)も、約8割が課税漏れなどを指摘されていることが分かった。申告漏れ財産の内訳を見ると、現金・預貯金が1千億円を超え最も多く、調査においては預金などの現金に調査官の目が向けられていることが明白だ。

国税庁はこのほど、「平成27事務年度における相続税の調査の状況」を公表した。
それによると、相続税の実地調査件数は1万1935件行われ、申告漏れ等の非違が見つかったのは9761件に上った。非違割合はなんと81.8%。これは、実地調査になれば、約8割の確率で申告漏れなどの非違の指摘を受けていることを意味する。
そして、非違における申告漏れ課税価格は3004億円で、実地調査1件当たりでみると2517万円となっている。26事務年度は、課税価格3296億円、1件当たり2657万円だったことからすると、若干金額は下がってきているものの、かなり大きな金額ということが分かる。
申告漏れ財産の内訳としては、「現金・預貯金等」が1036億円で最も多く、続いて「土地」410億円、「有価証券」364億円の順となっている。この順は数十年変わっておらず、バブル経済が崩壊して以降、「現金・預貯金等」がダントツで多い。
税のペナルティである重加算税の賦課件数については、1250件(前年1258件)で26事務年度とほぼ変わりない。申告漏れ非違件数における重加算税の賦課割合においても12.8%(前年12.4%)だ。
相続がらみの海外資産調査
資産運用の国際化に伴い国税庁では、租税条約等に基づく情報交換制度を活用するなど、海外資産の情報収集に力を入れているが、平成27事務年度は海外資産関連事案に関する実地調査を859件行った。このうち、申告漏れ等の非違件数は117件、非違割合は13.6%となっている。
この海外資産関連事案とは、「相続または遺贈により取得した財産のうちに海外資産が存するもの」「相続人、受遺者または被相続人が日本国外に居住する者であるもの」「海外資産等に関する資料情報があるもの」「外資系金融機関との取引のあるもの等のいずれかに該当するもの」を指す。
海外資産に係る重加算税の賦課件数については7件となっており、前年度(14件)の半分とこちらは減った。
海外資産に係る申告漏れ課税価格は47億円で、一人当たりの申告漏れ課税価格は3999万円と、相続税全体と比べると約1300万円高い課税課各となっている。
財産別の非違件数は、「現金・預貯金等」が65件と最も多く、有価証券33件、不動産32件となっている。これは相続財産の非違件数にみる内訳と全く同じ構成だ。
地域別にみると、北米が61件で最も多く、次いでアジア40件、欧州12件、オセアニア8件の順となっている。特徴は、この数年で見たとき、アジア地域は平均して33件前後だったものが、27事務年度に40件を越えたのが目立つ。
このほか、贈与税の無申告事案に係る調査実績については、平成27事務年度は3612件調査を行っており、申告漏れ等の非違が見つかったのは3350件と87.3%に上る。申告漏れ課税価格は195億円、追徴税額は49億円。これを一人当たりで見ると、申告漏れ課税価格は540万円で、追徴税額は136万円に上る。内訳は、「現金・預貯金等」が117億円で全体の6割を占め、次いで「有価証券」約38億円、「土地」約7億円、「家屋」約6億円となっている。