税理士という職業柄、開業している医師から相談されるなかで一番多いのは、「税金が高いのでどうにかしてほしい……」という悩みである。内科や眼科、歯科などのクリニックであれば、診療報酬収入が中心となるため収入は高くなりがちで、ひいては所得税の高い累進課税を受けることになるので、税金が高くなりやすい。できることなら、できるだけ税金を抑えたい。そう思っている人も多いのではないだろうか。

■開業医にかかわる税金
開業医にかかわる税金は、主に以下の3つである。
・所得税
税率は所得に応じ5%から最大45%かかる。このように所得に応じ税率が上がっていく課税方法を累進課税と呼ぶ。
・住民税
税率は所得にかかわらず一律10%で課税される。
・事業税
事業所得から事業主控除(290万円)を差し引いた金額に5%が課税される。
このなかでも、特に負担が大きくなるのが、累進課税方式を採用している所得税である。そのため今回は、所得を抑え所得税の累進課税を回避する方法について紹介したい。
■青色申告特典や所得控除による節税
前述したとおり、医師にかかわる税金は所得(利益)に対してかかるもの。つまり、どのくらい節税できるかは、所得をいかにして圧縮するかにかかってくる。その方法としてあげられる基本的な方法が下記である。
・青色申告の特典を利用する方法
1.青色申告特別控除
届出や正確な帳簿処理、一定の書類の提出等の要件を満たした場合には、事業所得から65万円の特別控除を受けることができる。これを利用すれば経費などでキャッシュを使わずに、課税所得を圧縮することができる。
2.医業の所得計算の特例
収入が一定以下(※)である医師については社会保険診療報酬にかかる費用として必要経費に算入する金額を、実額ではなく、概算経費で計算することが認められている。この方法を使用すれば実際の経費より、大幅に経費を確保できるケースがあるため、場合によっては効果の大きい方法である。
(※)収入制限
その年の社会保険診療報酬が5千万円以下、かつ、その年の医業の収入金額(社会保険診療+自由診療の合計額)が7千万円以下であること。
・所得控除により課税所得を圧縮する方法
1.国民年金基金に加入する
通常、個人事業主は国民年金を支払っているが、国民年金のみでは老後の備えについて不安が残るため、事業主の年金の2階建て部分として創設された制度である。現在掛け金は年間最大81万6千円が上限となっており全額が所得控除できるため節税効果が大きい。
2.小規模企業共済に加入する
名前の通り、小規模な事業者の退職金積み立て制度として設けられている。この制度は掛け金支払い時には全額所得控除の対象となり、また、保険金受取時には退職金課税(解約事由により異なる場合あり)になり税金を軽課されるため、受取り時も含め税効果は非常に高くなる。掛け金の上限は年間84万円となる。
■対策を行う際には、注意も必要
紹介した方法を活用し課税所得の圧縮を図れば、大幅に税金を圧縮することが可能となる。ただし、概算経費の特例を活用する場合には、経理処理に専門知識が必要になるため、税理士などの専門家に相談しつつ、対策を進めていくことをお勧めする。まだ、対策できていないという場合は、一度検討してみてはいかがだろうか。