平成27年1月1日以降の相続については、基礎控除が縮小された影響で、相続税の申告や納付が必要となる人が増加しています。いま、その対策として、生前贈与が大きなブームとなっていることをご存知でしょうか。何といってもやはり、毎年110万円の基礎控除内でコツコツ贈与していくことが、もっとも確実な節税となります。しかし住宅にまつる贈与については、より大きな特典が用意されているようです。そこで今回は、住宅にまつわる贈与のメリットを解説します。

■居住用不動産の配偶者控除

婚姻期間が20年以上の配偶者に居住用の土地・建物を贈与したときには、2千万円までは贈与税がかからない(ただし同一の配偶者からの贈与については、一生に一度だけ)という制度があります。また、基礎控除の110万円との併用が可能なため、贈与を行う年は、合計2110万円まで、贈与税がかかりません。

さらに、通常の贈与であれば相続税の申告時に相続開始前の3年以内に贈与した財産の価額を、相続税の課税財産に加算することとなっていますが、この配偶者に対する居住用不動産の贈与は、たとえ3年以内であっても相続税の課税財産に加算されません。

単に節税という観点からは、小規模宅地の特例との兼ね合いもあるので一概に言えません。たとえば余命宣告を受けた後に、長年連れ添った配偶者の生活拠点の確保という観点からはとても有用な贈与といえるでしょう。

■住宅資金贈与

この制度は、直系尊属から住宅資金の贈与を受けて、住宅の新築・取得または住宅を増改築した場合、その贈与を受けた年に応じて、一定金額までは贈与税が非課税とされる制度です。(現在はその住宅が省エネ等住宅であれば1200万円、それ以外の住宅であれば700万円までが非課税)

また、居住用不動産の配偶者控除と同様、基礎控除の110万円との併用が可能であり、3年以内贈与の加算もされません。そして、「直系尊属」とあるように祖父母から孫への住宅資金贈与にも使える制度です。

節税としての生前贈与を考えるにあたっては、祖父母から孫へというように世代をひとつ飛ばすことが、大きな効果を持ちます。なぜなら子への贈与であれば、贈与した財産がいずれは子の相続財産を形成し、それに対する相続税負担を考慮しなければならない場合もあるためです。

よってこの住宅資金贈与は、特に祖父母から孫への贈与として利用することで、そのメリットをより享受することができます。ただし、この制度は非課税限度額も年によって異なります。住宅の取得時期をはじめ、要件が細かく規定されており、落とし穴が多いのも事実です。また、たとえ贈与税がゼロであっても申告は必ず必要であるため、細心の注意を持って活用してほしいと思います。

■子に対しては、住宅資金贈与より親自らが家を建てよう

子に対しては、住宅資金贈与が使えるため、それなりのメリットもあるのも事実です。もし資金に余裕があり、より大きな相続財産の圧縮を図りたいのであれば、子に対しては思い切って親の名義で住宅を新築または取得し、子を住まわせるというのもひとつの手です。

住宅資金贈与であれば金額に限度がありますが、親名義で住宅を取得する場合、限度は自分で決めることができます。それでは贈与にならないとの声が聞こえてきそうですが、狙いは現金を不動産に変えることによる資産圧縮効果です。

土地の場合、路線価方式であれば取得費から2割ほど減額でき、建物は固定資産税評価額となるため建築費と比較して4割ほど減額が可能です。

また相続が発生した場合でも親と子が生計を一にしており、子が引き続きその家に居住するのであれば、小規模宅地の特例を使える可能性も出てくるためさらに圧縮が可能となります。

■おわりに

住宅にまつわる節税には、多種多様な方法が挙げられます。今後贈与する予定があるなら、早めに税理士などに相談し、節税対策を検討してみてください。

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