国税OB税理士が監修。公認会計士・税理士・会計事務所・企業経理担当、税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします!

会計人ニュース

注目キーワード

相続税 基礎控除見直しで申告10万人突破  東京都の課税割合は約16%

平成25年度税制改正における、基礎控除の見直しなどの相続税抜本改革の適用初年となる、同27年分相続税申告事績が国税庁から公表された。相続税の課税対象被相続人割合が導入前の試算よりも高い8%となるなど、相続税が富裕層に限らず一般納税者にも身近なものとなったことが改めて確認された。

平成27年1月1日から同年12月31日に亡くなった被相続人数は、厚労省の人口動態統計によると129万444人で、前年を1.4%上回り、高齢化が進む中で増加傾向にある。このうち2016年10月末までの相続税額のある申告書(修正申告書を除く)の提出に係る被相続人数は、前年より83.2%増の4万6804人増え、合計10万3043人となった。

これまで4%台だった課税割合は、見直しの際の試算である6%程度を上回り、8%(同3.6ポイント増)に上昇、現在の課税方式になった昭和33年以降で最も高い課税割合となった。
相続税の改正の影響を受けたとして読み取れるデータとして、課税対象被相続人10万3043人を課税価格別でみると、課税価格1億円以下の者が前年の約4倍に増えるとともに、地価の高い東京都で課税割合が15.7%(前年9.5%)と6人~7人に1人に相続税がかかっていることが分かった。
課税割合を国税局別で見ても、地価の高い東京国税局管内が7.5%→12.5%、大阪国税局管内が4.8→8.2%となったほか、広島国税局で3.3%→6.6%、札幌国税局管内でも2%→4%となるなど全国的に対象が増えている。

25年度税制改正での相続税の見直し

課税対象被相続人が大幅に増加した要因は、地価の上昇傾向と株価の回復に加えて、平成25年度税制改正における基礎控除に見直しなどの相続税改正が、同27年1月1日以後の相続から適用が開始されたためだ。
同年度の主な相続税改正としては、
① 遺産に係る基礎控除額が引下げ
② 最高税率の引上げなど税率構造の見直し
③ 税額控除のうち未成年者控除や障害者控除の控除額引上げ
④ 小規模宅地等の特例における特例の適用対象となる宅地等の面積等が見直し
などが行われた。
このうち基礎控除については、バブル期の地価上昇に合わせて昭和63年あたりから引き上げられてきたが、その後のバブル崩壊により地価がピーク時(平成3年)と比べて4分の1近くまで落ち込んだため、バブル前の控除水準へ戻す必要があること及び格差の固定化の防止等の観点から、それまでの「5千万円+1千万円×法定相続人数」を「3千万円+600万円×法定相続人数」に引き下げた。これにより、夫が亡くなって残された家族が妻と子ども2人だった場合、改正前なら8千万円まで相続税がかからなかったが、改正後は4800万円を超えると相続税が発生することになった。
また、相続税の税率は各法定相続人の法定相続分相当額を上記の金額に区分して、それぞれの区分に対応する税率を適用して足し合わせる方式(超過累進税率)を採っており、納税者がその負担能力に応じて公平に税を負担する仕組みとなっているが、その税率構造を6段階から8段階に細分化するとともに、最高税率が50%から55%への引き上げが行われた。

課税対象被相続人増加も1人当たりでは課税価格3割ダウン

相続税の納税者である相続人数は23万3555人と前年から10万人超増加し、これに伴い相続財産価額から被相続人の債務や葬儀費用などを差し引き、相続開始前3年以内の生前贈与等を加算した相続税の課税価格は14兆5554億円(対前年比26.8%増)、税額は1兆8116億円(同30.3%増)と大幅に増えている。しかし、被相続人1人当たりでみると、課税価格1億円以下が全体の約6割を占めたことから、課税価格は1億4126万円と30.8%も前年を下回り、これに係る税額も28.9%少ない1758万円にとどまり、平成6年以降では最低となっている。
相続財産の金額の構成比をみると、「土地」38%、「現金・預貯金等」30.7%、「有価証券」14.9%、退職金や生命保険などが含まれている「その他」11%、「家屋」5.3%で、26年分と比べて順位には変動はないが、「土地」が3.5ポイント減少し4割を切り、「現金・預貯金等」が4.1ポイント増加して3割を超えた。現金・預貯金等は、ここ数年増加傾向がみられるが、これに加えて地方ではまだ地価変動率がマイナス水準で推移していることや、今回の見直しで課税対象となった被相続人が不動産より現金や有価証券といった金融資産の所有割合が高かったためと推測される。

事業承継税制適用者は224人

特例等の適用状況をみると、「非上場株式等についての相続税の納税猶予」は相続人数224人(前年分127人)で納税猶予税額は148億円(同64億円)、「農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例」は相続人数1840人(同1522人)で納税猶予税額439億円(同441億円)。また、被相続人ベースで相続財産価額に加算された相続時精算課税適用財産価額は適用者5444人(同3498人)で1863億円(同1475億円)だった。

著者: イーター侍

税金ライター/元税金専門誌編集者

四半世紀以上、税金専門誌の編集者として国税庁、国税局、税務署、会計事務所に出入りする。数年前に独立した後、編集者時代に築いた人脈をいかし、ネットワークビジネスを手がける。その傍ら、趣味と副業を兼ねて税務関係ニュースを追いかける“中年ライター”だ。

ページ先頭へ