平成28年度税制改正で創設された「スイッチOTC薬控除(セルフメディケーション税制)」の対象医薬品名がこのほど、厚生労働省から公表された。第1弾となる公表では、1492医薬品が指定された。カゼ薬や胃腸薬などとともに、禁煙補助剤として有名な「ニコレット」も含まれている。
医療費抑制から生まれた税制
ドラッグストアなどで市販されている薬を、年間1万2千円以上購入すると、特別医療費控除が受けられるセルフメディケーション税制が平成29年確定申告からスタートするが、厚生労働省はこのほど認定医薬品を公表した。
現在の医療費制度は、支払った医療費のうち10万円を超えた分について、確定申告により一定の金額の所得控除が受けられるもの。この従来の医療費控除に平成29年確定申告からは、時限措置ではあるものの「1万2千円以上」分の医療費控除制度、セルフメディケーション税制が実施される。
既存の医療費控除制度では、せっかく自らセルフメディケーションに取り組んでも、自己負担額が10万円を超えない場合などにより、医療費控除の対象外となる場合も出てくる。そこで、同税制の導入で、個人の健康管理等の自助努力を喚起させ、高齢化に伴う医療費の抑制を図り、国民の健康寿命が延伸する社会を実現することを目的にしている。
既存の医療費控除との選択適用
セルフメディケーション税制は、健康の維持増進及び疾病の予防のための一定の取組を行う個人(生計を一にする配偶者その他の親族を含む)が、平成29年1月1日から平成33年12月31日までの5年間にスイッチOTC医薬品を購入した場合、その購入合計額が年間1万2千円を超えるとき、超える部分を所得控除できるもの。ただし、上限は8万8千円で、既存の医療費控除とは併用できず、どちらか選択適用となる。
ここでいう「一定の取組み」とは、法律や法令で定め行われている特定健康診査、予防接種、定期健康診査、健康診査、がん検診のことで、これらのうちいずれかを受けていれば対象となる。したがって、サラリーマン・OLなどが会社で受ける健康診断や、主婦などが低額で受診できる自治体の健康診査、がん検診も該当する。
スイッチOTC薬とは一般用等医薬品に転換された医療薬
OTCとは、英語の「Over The Counter(オーバー・ザ・カウンター)」の略語で、OTC薬は、調剤薬局やドラッグストアなどでカウンター越しに対面販売される医薬品のことを指し、これまで「大衆薬」「市販薬」とも呼ばれていたもの。含有成分等により要指導医薬品と一般用医薬品(第1類~第3類)に区分されており、要指導医薬品及び一般用医薬品(第1類)の購入には、薬剤師などの指導等を受けることが必要とされている。
そして、このうちの元来医療用医薬品として使われていた成分の有効性や安全性などに問題がないと判断され、ドラッグストア等の店頭販売ができる一般用医薬品に転換(スイッチ)された医薬品がスイッチOTC薬だ。