いよいよ平成28年分確定申告も終盤戦だ。サラリーマン等の給与所得者が適用する還付申告の中でもっともポピュラーなのが「医療費控除」だが、病院で治療を受けた際に加入している医療保険等から受け取った保険給付金の取扱いについては、意外と考え違いをしている向きも少なくない。これから申告を行う人も、すでに申告してしまった人も改めて確認してしっかり適用を受けたい。

医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までの間に自己または自己と「生計を一」にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費について、一定金額の所得控除を受けることができる制度。
医療費控除の金額は、最高200万円で次の式で計算した金額とされている。

医療費控除の金額=(実際に支払った医療費の合計額-(※)の金額)-10万円(所得の合計額が200万円までの人は合計額の5%)
(※)保険金などで補填される金額

ただし、上記算式の通り、医療費控除の適用に当たっては、生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金などを差し引いて計算することとされている。

年を跨ぐ医療費での保険給付金は各年分であん分

では、間違いやすいケースを見て行こう。
まず、年を跨った医療費に掛かる保険給付金を一括で受けた場合の処理。
たとえば、年末12月に入院して年明け1月に退院(医療費はそれぞれ当月に支払っている)し、保険会社から2月にまとめて入院費用を補てんする保険給付金を受領した場合、この保険給付金は入院した昨年の医療費から差引くか、退院した今年1月の医療費から差引くのか迷うところだ。
この場合、その保険給付金を支払った入院費用の額に応じて、各年分にあん分することになる。その理由は、医療費は現実に支払った年分の医療費控除の対象となるとされているためだ。したがって、上記のケースでは保険給付金をあん分して昨年と今年のそれぞれの年分の医療費控除の対象とする。

保険給付額不明な場合は見積額で申告

次に、年末に入院した場合などでは、確定申告ギリギリになっても保険会社から保険給付金の支給額の通知(連絡)が来ないケースもあり、支給額が確定しないため医療費の計算が出来ず申告をやめようかと考えている人や、催促しながら申告期限まで我慢強く待っている人もいるようだ。
そのような場合は、受け取る予定の保険金等の額を見積もり、その見積額を支払った医療費から控除して取り敢えず申告してしまう。そして後日、保険金等の額が見積額と異なったときは、遡ってその年分の医療費控除額を訂正する。
ちなみに、保険会社へ保険給付の申請を行っていれば、担当営業の人が金額を教えてくれる場合も多いようだ。
入院して治療を行った場合、保険給付金の額が実際の医療費の額を上回るという話をよく聞く。いわゆる“保険金太り”だが、その場合に保険給付超える部分の金額を、他の医療費から差し引く必要があるのかどうか?
これについては所得税法で、支払った医療費を補てんする保険金等の金額がある場合には、支払った医療費の金額からその医療費を補てんする保険金等の金額を差し引くこととされている。ただし、その場合補てんする金額は、「その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引く」とされているので、引ききれない金額があっても他の医療費から差し引く必要はないので、残った保険給付金を同年に掛かった別の医療費に充当させる必要はない。
余談ではあるが、共働きの妻の出産費用を夫が支払ったが、妻が勤務する会社の互助会から出産費の補てんとして給付金を受領した場合、この給付金は夫の医療費から差し引く必要があるのだろうか。
一見、夫の医療費から差し引く必要はなさそうな気もするが、夫の支払った医療費から妻が支払を受けた給付金は差し引かなければならない。これは、任意の互助組織から医療費の補てんを目的として支払を受ける給付金も、医療費控除の計算上、支払った医療費から控除すべき補てん金等に含まれるとされており、また医療費を補てんする保険金等は、その保険金等の支払を受ける人が医療費を支払った人でない場合であっても、医療費の補てんを目的として支払を受ける保険金等である限り、医療費を補てんする保険金等に該当するからだ。

期限内なら2度目の申告を

なお、すでに間違ったまま医療費控除の申告をしてしまった場合の処理だが、申告期限内であれば、改めて確定申告書を提出すれば問題ない。というのも、法定申告期限内に同じ人から確定申告書が2通以上提出された場合には、法定申告期限内にその人からの特段の申出がない限り、最後に提出された申告書がその人の申告書として取り扱うこととされているからだ。