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この費用もいける、意外な支出も確定申告で取り戻せ

全国524の税務署で平成29年分所得税等の確定申告がスタートした。サラリーマン等が税金を取り返す手段としては、医療費控除や住宅取得等特別控除などによる還付や最近ではふるさと納税が思いつく。しかし、これ以外にも身近な損害や被害に伴う損失、支出について、確定申告で雑損控除や災害減免法などを利用することにより税金が戻ってくる。今一度確認してみよう。

災害減免法は災害による住宅や家財の損害が対象

まずは雑損控除及び災害減免法に関する制度を見ていきたい。雑損控除は、自然現象の異変による災害(震災、風水害、冷害、雪害、落雷など)や人為による異常な災害(火災、火薬類の爆発など)、生物による異常な災害、犯罪等で資産に損害を受けた時に所得から控除できる制度(所得控除)。ちなみに犯罪等とは、空き巣、ひったくりなどの類で、本人にもある程度落ち度があるとの認識からか詐欺や恐喝による損失は対象外とされている。一方、災害減免法は、読んで字の如く災害によって住宅や家財に損害を受け、その損害金額(保険金などにより補てんされる金額を除く)が時価の一定額以上の場合に税額から控除できる制度(税額控除)。したがって、災害の場合は雑損控除も災害減免法もどちらも適用することができるが、どちらか一方の選択となる。

雑損控除も災害減免法の適用要件等

では、災害等を受けた場合、どちらを適用した方がよいのかもう少し具体的に見ていこう。

最初に適用にあたっては、適用者の所得金額により選択が限られて、災害等を受けた年の年間所得が1千万円を超える場合は雑所得しか適用できず、1千万円以下の場合は、雑損控除と災害減免法のどちらかを選択できる。

控除対象資産を見ると、雑損控除は、納税者及び納税者と所得金額等が38万円以下の同一生計を営む控除対象配偶者・扶養親族が、所有する生活に通常必要な資産、災害等に関連するやむを得ない支出とされていることから、住宅や家財、衣類、現金などはもちろん認められるが、別荘や事業用資産、貴金属、書画骨董などで1個(組)が30万円超となるのは、“贅沢品”の部類とされ、生活に必要な資産には該当せず対象外となる(ただし、その年か翌年に総合課税の譲渡所得があれば、損失をその所得から控除することができる)。

したがって、家に泥棒が侵入して貴金属等を盗まれたケースでも、30万円の金のネックレスは控除が認められるが、200万円のダイヤの指輪は認められず、またネームバリューがない画家の絵でも50万円では適用できないが、著名な画家でも25万円ならばOKとなる。これに対して災害減免法は、住宅と家財に限定されるとともにその損害額が住宅や家財の価額の2分の1以上の場合との縛りがある。

 

次に両制度の計算方法だが、まず雑損控除として控除できる金額は、下記の(1)又は(2)のうち、多いほうの金額。なお、差引損失額は、損害金額と災害等に関連したやむを得ない支出の金額(災害関連支出の金額に加え、盗難や横領により損害を受けた資産の原状回復のために支出した金額)を足して、保険金などにより補てんされる金額を差し引いた金額となる。ただし、義援金や災害弔慰金、支援金などは原則、差し引く必要はない

 

(1)差引損失額+災害関連支出金額(災害により被害を受けた住宅、家財などの取り壊し・除去するための費用など)-保険金等により補てんされた金額-総所得金額等×10

(2)差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円

一方、災害減免法による所得税の免除・軽減額は、適用を受けるものの所得金額により、下記のとおり決まる。

・所得金額が500万円以下→所得税の額の全額

・所得金額が500万円を超え750万円以下→所得税の額の2分の1

・所得金額が750万円を超え1000万円以下→所得税の額の4分の1

 

では、雑損控除と災害減免法のどちらを適用したら得かということだが、所得金額が500万円以下の者は災害減免法を選択したほうが良さそうで、500万円超1千万円以下の場合はそれぞれのケースにより異なってくるので、そのときのケースを計算して有利な方を選択することになる。ただし、雑損控除については、3年間(東日本大震災の損害については翌年以降5年間)に渡って繰り越し各年の所得金額から控除できることとされていることから、損害額が所得金額を超えて1年で控除しきれない者は、損害の繰り越しができる雑損控除を選択するほうが得だろう。

雪おろし費用も大丈夫

上記のように、雑損控除は適用範囲が広いことから、普段の生活においても申告すれば税金が取り戻せる支出もあることから、事例を幾つか挙げてみる。

今シーズンは、豪雪地帯で例年以上に大雪となるとともに、首都圏でも二桁の積雪となった。豪雪地帯では総じて高齢化が進んでおり問題となるのが雪下ろし。雪下ろしをしないと、雪の重みで家が倒壊してしまう恐れがあるが、慣れている人でも雪下ろし中の屋根からの落下や屋根から落ちてきた雪に埋もれて亡くなる人も毎年のように出ている。一方、安全面での関係から雪下ろしを業者に頼むと、1時間で3千円から7千円程度掛かり、またこれとは別に排雪にも費用が必要となる。しかし、これらの支出については、家屋の倒壊を防ぐために必要であるとして、国税庁では昭和56年に「豪雪の場合における雪下ろし費用等に係る雑損控除の取扱いについて」と題した個別通達を発遣し、雪下ろし費用等は雑損控除の対象であることを明文化している。したがって、雪下ろしのために頼んだ業者への支払いはもちろん、業者を頼んでいる余裕がなく近所の人に手伝ってもらった際のスコップ等の除雪用具代や、その人達に支払った手間賃、振る舞った食事代なども損失額に含めることができる。ただし、手伝ってもらった人が親戚の人だったなど身内のケースでは、一応税務署に相談してから申告した方がいいだろう。また、これらの者からは領収書をもらうことは困難となるが、この点についても「雪下ろし費用等に係る金額の確認は、原則として領収書によって行うこととされているが、領収書の交付を受けることについて困難な事情がある場合においては、領収書に代えて支払年月日、支払先及び支払金額を記載した家計簿等により支払の事実の確認を行つても差支えない」とされている。

シロアリ駆除費用等も対象

ほっておくと家中まるごと食べつくしてしまうというシロアリ。このシロアリの駆除費用は平均で1坪5千円から1万円で、もし被害が20坪に及べば10万円から20万円と高額な支出にもなる。この出費についても“害虫、その他生物による異常な災害”に該当することから、雑損控除の対象として構わない。ただし、シロアリの駆除だけでなく合わせて行う予防のために薬の散布費用や、隣家がシロアリの被害を受けたため、被害に合わないための予防として行う床下換気システム費用や湿気取り剤の散布などは、雑損控除の対象とはならないことから、支払った費用の明細や内訳を見て対象となる費用のみ算出して申告する必要がある。

マイカー通勤時の事故

マイカー通勤している者が交通事故を起こしてしまった場合でも、その事故が通常の注意義務をもってしても避けえなかった事故の場合には、“人為による異常な災害”に該当することから、雑損控除が適用できる。ただし、運転している自動車が俗に言う「スポーツカー」といった趣味・娯楽のために所有する自動車の場合には“生活に通常必要な資産”には当たらないことから雑損控除の対象とするのは難しいと考えられる。

その他にも、住んでいる借家が災害等で被害を受け部分を、借家人が原状回復のための修繕を行い、家主に請求をしないことが明らかな場合もその金額を雑損控除の対象とできる。

 

各種適用のための必要書類

雑損控除や災害減免法を受けるためには、2月15日~3月15日(還付申告の場合は1月1日から)の確定申告期間中に、雑損控除の場合は、確定申告書に雑損控除に関する事項を記載するとともに、災害関連の支出に関しては「領収書」、火災は消防署、盗難は警察が発行する「被害額届出用の証明書」、給与所得者は「源泉徴収票」、災害時のやむを得ない支出については「領収書」の添付又は提示、災害減免法の適用を受けるためには、確定申告書等に適用を受ける旨、被害の状況及び損害金額を記載して、納税地の所轄税務署長に確定申告書等を提出する。

地方税も取り返せる

雑損控除や災害減免法といった国税だけでなく、地方税でも手当てされている。具体的には、個人・法人の住民税、固定資産税などに減免措置があり、税目ごとに減免の規定が設けられている。

たとえば、固定資産では地方税法367条で、

 

・天災その他特別の事情がある場合において、減免を必要とする者

・貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者

・その他特別な事情がある者

 

とされている。ただし、あくまで自治体が設ける条例により左右されるので、受けるための縛りも違いが出てくるので、災害等により被害等が出たときには、住んでいる自治体に確認することだ。

また、雪下ろし費用なども、豪雪地帯の自治体では支出費用の一部補助を行っているところもあるので、このような補助がないかを訊くことも必要だ。

著者: イーター侍

税金ライター/元税金専門誌編集者

四半世紀以上、税金専門誌の編集者として国税庁、国税局、税務署、会計事務所に出入りする。数年前に独立した後、編集者時代に築いた人脈をいかし、ネットワークビジネスを手がける。その傍ら、趣味と副業を兼ねて税務関係ニュースを追いかける“中年ライター”だ。

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