平昌(ピョンチャン)オリンピック(2月9~25日)・パラリンピック(3月9~18日)が開催されているが、メダルに近いとされてきた選手も本番では苦戦している。日本は冬季オリンピックとして、前回の2014年ロシア・ソチ大会のメダル数が計6個で歴代3位の獲得数。今回は、それを上回るのか注目されている。メダリストには報奨金が用意されているが、ここでは報奨金に関する税金問題に迫ってみた。
日本人選手の冬季オリンピックとしては、歴代最多は1998年長野大会の10個(金5、銀1、銅4)、2位は1992年アルベールビル大会の7個(金1、銀2、銅4)、そして、前回のソチ大会6個(金1、銀3、銅2)となっている。今回の平昌大会は、長野大会を上回るメダル獲得が期待されているが、メダリストには「報奨金」が支払われる。
報奨金は、(財)日本オリンピック委員会(JOC)から支払われるほか、各競技団体他、人によってはスポンサーから支払われることがある。
JOCが支払う報奨金は、メダルの色ごとに異なり、金メダル500万円、銀メダル200万円、銅メダル100万円。金と銀では300万円も差があるわけだが、実は前回のソチ大会までは、金メダル300万円、銀メダル200万円、銅メダル100万円だった。
競技団体からの報奨金は、たとえば日本スケート連盟なら、金メダル500万円、銀メダル200万円、銀メダル100万円となっている。全日本スケート連盟は、今のところ未定だが、過去には過去には金300万円、銀200万円、銅100万円を支払ており、JOCに足並みを揃える可能性が高い。
このほか、カーリングやアイスホッケーなどの団体は、過去にメダルを獲得した実績がないため、報奨金は用意していないという。
企業からの報奨金としては、ドーム社の安田秀一CEOがスポンサー契約をしているスノーボード・アルペン女子の竹内智香さん(33=広島ガス)に金メダルなら3333万円用意している。
パラリンピック選手がパラリンピック競技で入賞をすると、日本障がい者スポーツ協会(JPSA)から報奨金が支払われる。こちらも金額はメダルの色によって異なり、金メダル150万円、銀メダル100万円、銅メダル70万円だ。
パラリンッピック選手がもらえる報奨金は、オリンピック選手がもらえる報奨金よりも低いが、これは報奨金の支払元が異なるから。オリンピック選手は、JOCから報奨金が支払われるのに対して、パラリンピック選手は、JPSAから報奨金が支払われるからだ。
さて、この報奨金だが、実はJOC、JPSAから支払われる報奨金については非課税だ。一般的に報奨金は所得税法上「一時所得」に分類され課税対象となるが、JOC及びJPSAから贈られる報奨金に関しては、所得税法9条1項第14項に「オリンピック競技大会又はパラリンピック競技大会において特に優秀な成績を収めた者を表彰するものとして財団法人日本オリンピック委員会(平成元年八月七日に財団法人日本オリンピック委員会という名称で設立された法人をいう。)、財団法人日本障害者スポーツ協会(昭和四十年五月二十四日に財団法人日本身体障害者スポーツ協会という名称で設立された法人をいう。)その他これらの法人に加盟している団体であって政令で定めるものから交付される金品で財務大臣が指定するもの」については、所得税を課さないとされている。ただし、非課税の報奨金額には上限があり、これを超えると、課税対象となり、一時所得として確定申告する必要が出てくる。このほか、競技団体が支払う報奨金など、一定の競技団体からの報奨金も非課税となっている。
政令で定めるものとは、所令28条に「文部科学大臣は、前項の規定により一般社団法人又は一般財団法人を指定したときは、これを告示する」とあり、その団体を告示にて指定している。その告示は平成22年文部科学省告示第66号で、社団法人全日本アーチェリー連盟を筆頭に全30団体を指定。非課税額については、日本オリンピック委員会や日本障害者スポーツ協会の非課税額と同額で、平成22年財務省告示第102号に、非課税限度額として金メダル300万円、銀メダル200万円、銅メダル100万円までとしている。
とろこで、競技団体からの報奨金でも非課税枠を超える部分については従来通り一時所得として課税される。普通の競技で選手が報奨金を得た場合は、「一時所得」として所得税・住民税の課税対象だ。
一時所得とは、営利目的で行う継続的行為以外から生じた所得のことで、労務や役務の対価としての性質、資産譲渡の対価としての性質がない、一時的に手に入れた所得。一時所得の額は「総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)」で計算。税額は、一時所得金額の2分の1に相当する金額を、給与所得などほかの所得と合計して総所得金額を求めて課税される。