「経営者の意思決定」に深く関わりたい ── 2025年に日本語化されたUSCMAは、そう考える公認会計士が現実的に踏み出せる“次の一歩”です。管理会計とファイナンスを軸に、企業価値向上を支える国際資格として注目を集めるUSCMA、その詳細と可能性に迫ります。

この記事の目次

2025年から日本語受験が始まり、注目が高まるUSCMA(米国公認管理会計士)。
「経営に強い会計人材になりたい」「数字でビジネスを動かしたい」と考える若手にとって、新たな選択肢になりつつあります。

今回KaikeiZineでは、IMA日本支部共同代表の石橋善一郎氏にUSCMAの意義と、若手が学ぶ価値について伺いました。
さらに、実際に資格を取得した日本のビジネスパーソンの“リアルな声”も紹介します。

USCMAがどんな資格で、どんな未来を切り開けるのか。この記事でその答えに迫ります。

USCMAとは ── 日本語化で広がる管理会計資格の新たな選択肢

USCMA(US Certified Management Accountant)は、米国管理会計士協会(IMA)が認定する国際資格で、管理会計や企業財務(ファイナンス)に関する専門知識を証明する資格です。
米国ではUSCPAと並ぶ主要な会計資格として位置づけられ、企業の財務計画(FP&A)、管理会計、経営企画などの経営に近い会計領域で強く評価されています。

これまでUSCMA試験は英語と中国語でしか受験できませんでしたが、2025年6月から正式に日本語で受験可能となりました。
これはIMAが日本における管理会計人材の需要増に対応して発表したもので、英語のハードルが下がり、より多くの日本人が国際資格に挑戦できるようになります。

USCMA試験概要

USCMA試験はPart 1・Part 2の2科目で構成され、どちらも4時間のコンピューター試験です。
内容は、管理会計・財務分析・リスク管理・戦略的財務管理など「経営に直結する領域」が中心です。

試験構成:四択(3時間)+記述式(1時間)
受験科目:
 Part 1:財務計画、予算管理、業績管理 ほか
Part 2:財務分析、コーポレートファイナンス、意思決定、リスク管理 ほか
合格基準:各科目360/500のスコア
会場:東京・大阪のプロメトリックセンター
日本語試験:2025年以降、定期開催予定

USCPAとの違い ── “経営に強い人材”を育てるUSCMA

USCMAが注目される背景として、USCPAとは異なる領域(管理会計・ファイナンス)を深く扱う点があります。
試験範囲や学習時間、資格の目的はどこが違うのか。
以下の比較表では、両者の特徴をまとめています。

USCMA・USCPAの資格取得の比較

資格 試験科目・範囲 合格までの総勉強時間 備考
USCMA ・Part 1:財務報告決定、予算・予測、パフォーマンス管理、コスト管理、内部統制
・Part 2:財務分析、企業財務、意思決定分析、リスク管理、投資決定、戦略的財務管理
※管理会計・財務管理に特化
300〜400時間程度
・Part 1:150〜170時間程度
・Part 2:150〜170時間程度
※会計知識があれば短縮可能
・最短3〜6ヶ月で合格可能
・平均合格期間は12〜18ヶ月
・2科目制でシンプル
USCPA ・必須3科目:FAR(財務会計)、AUD(監査)、REG(税法・ビジネス法)
・選択1科目:BAR(ビジネス分析)、ISC(情報システム)、TCP(税務実務)から1科目選択
※財務会計・監査が中心(2024年から新試験制度に)
1000〜1500時間
(各科目250〜375時間程度)
・会計知識なし・英語苦手:1500時間程度
・会計知識あり:1000時間程度
・最短6ヶ月〜1年で合格可能
・科目合格制

比較すると、USCMAは管理会計・ファイナンス・意思決定分析など、企業の“内部の経営活動”に直結する領域を中心に構成されています。
一方USCPAは、財務会計・監査・税務といった“外部報告”に強みを持つ資格です。
こうした「扱う領域の違い」=「企業内で求められる役割の違い」が、資格選びにおいて最も大きなポイントになります。

では、いま日本企業ではどのような会計人材が必要とされているのか ──。
そして、USCMAは若手のキャリアにどんな価値をもたらすのか。

続くインタビューで、IMA日本支部共同代表の石橋善一郎氏に詳しく伺いました。

IMA日本支部共同代表石橋氏に聞く:USCMAが若手のキャリアを変える理由

IMA日本支部共同代表の石橋善一郎氏

IMA日本支部共同代表の石橋善一郎氏

日本におけるUSCMAの普及を牽引してきたのが、IMA日本支部共同代表の石橋善一郎氏です。
長年、企業の管理会計・ファイナンス教育に携わり、日本企業の経営管理の課題にも深く向き合ってきました。
今回KaikeiZineでは、石橋氏に「USCMAの本質」「USCPAとの違い」「若手が学ぶ意義」 について率直にお話を伺いました。

■USCMAとUSCPAの違いについて教えてください。

石橋代表:まずお伝えしたいのは、USCPAとUSCMAは目的が違う資格だということです。
USCPAは財務会計・監査・税務といった“財務報告のプロ”を育てる資格。一方でUSCMAは、管理会計とファイナンスを中心に“経営判断を支えるプロ”を育てる資格なんです。
どちらが上とか下ではなく、活躍するフィールドが違うだけなんですよ。

■USCMAがカバーしている領域とは?

石橋代表:USCMAの最大の特徴は、管理会計とファイナンスを最初から深く学べることです。
例えば、

どの事業に投資すべきか
利益やキャッシュフローがどう生まれるか
企業価値をどう高めるか

といった、“未来に向けた経営の意思決定”に必要な知識が体系的に学べます。

日本の企業では、この“経営判断を支える人材”がまだ十分に育っていません。だからこそ、USCMAがカバーする領域はこれからますます重要になっていくと考えています。

■USCPAとの比較で、USCMAが強みになるのはどんな点でしょう?

石橋代表:USCPAは必修科目が監査・税務・財務会計に寄っています。管理会計やファイナンスは選択で、必ず学ぶとは限らないんですね。
一方のUSCMAは、Part 1とPart 2の両方で管理会計と財務管理を中心に据えている。
だから、

FP&A
経営企画
事業企画
・CFOを目指すキャリア

など、経営サイドに進みたい方にはとても相性が良いんです。

■若手にとって、USCMAはどんなメリットがありますか?

石橋代表:これは本当に強調したいのですが、キャリアの早いうちにUSCMAを学ぶほど、効果が大きいです。
USCMAを学ぶプロセスそのものが、

経営数字の読み方
事業の動きと利益構造
投資や意思決定の考え方

といったビジネスの裏側を理解する学びになります。
これは職種を問わず役に立ちます。
経理でも、営業でも、企画でも、経営の言語がわかる人材はどこでも活躍できるんですよ。

■最後に、これからキャリアを考える若手へのメッセージをお願いします。

石橋代表:USCMAは、単なる資格ではありません。
経営者のビジネスパートナーになる力を身につけるための入口です。
これからの企業は、財務報告ができるだけでは足りません。データを理解して、経営の未来を一緒に考えられる人材が求められます。
USCMAを学ぶということは、あなたが「選ばれる人材」になるための第一歩。
ぜひ若いうちに挑戦してみてほしいですね。

USCMAが若手に選ばれる理由 ── 実務で生きるリアルな声

石橋代表のインタビューでは、USCMAは経営に向き合う会計人材の入口になるという力強いメッセージが語られました。

では、実際にUSCMAを取得したビジネスパーソンは、どのような学びや成長を得ているのでしょうか。
IMA日本支部には、多様なバックグラウンドの合格者が寄稿する「体験談」が多数掲載されています。そのなかから今回は、若手・中堅にも参考になる5名の声をピックアップしました。
キャリアのステージは違っても、彼らに共通しているのは、「学びが実務に直結した」「新しいキャリアの扉が開いた」「仲間やネットワークが広がった」というリアルな実感です。

ここからは、USCMA合格者の“生の声”を短くまとめてご紹介します。

●Yoshinobu Yaritaさん(企業価値向上アドバイザー)
「長い実務経験を“資格”として客観的に示せたことが大きな収穫でした。学び直しも楽しく、知識整理の良い機会に。助言業務の説得力も増しました」
●Atsushi Onoさん(プロダクトマネージャー/元Big4税理士法人)
「USCPAでは補えなかった管理会計・ファイナンスの専門性を体系的に学べました。特にIMAのコミュニティの存在が、取得後の最大の価値です」
●Takahiro Kobuchiさん(大手商社・本部経理責任者)
「“英語で専門を学ぶ”経験が財産になりました。取得後は社内評価が高まり、自分の専門性を示す“名刺代わりの資格”として活用しています」
●Tomoyuki Ozawaさん(外資系Finance Manager)
「部門長として必要な知識を体系的に補強できました。仕事との両立は大変でしたが、取得後はIMAを通じてネットワークが広がり、新しい役割につながりました」
●Kazuhiko Yamazonoさん(出版流通企業)
「管理会計・ファイナンスを専門的に学びたい気持ちから受験。Part 2は難しかったですが、知識の定着と専門性の向上を確実に感じています」

IMA記者発表 ── FP&A人材育成加速に向け、USCMA日本語化がもたらすインパクト

IMA Regional Director(Asia Pacific)のMarcel Ewals氏・石橋善一郎氏・鎗田良信氏

左からMarcel Ewals氏・IMA日本支部共同代表の石橋善一郎氏・IMA日本支部理事の鎗田良信氏

3月5日(木)、IMA日本支部は都内で「日本企業の経営管理とFP&Aの役割」をテーマに、記者説明会を開催しました。
この説明会では、日本企業における企業価値向上の課題と、それを解決するためのFP&A(Financial Planning & Analysis)人材の重要性、そしてIMAが提供する資格試験についての解説が行われました。

各登壇者の主な発言内容は以下の通りです。

●石橋善一郎氏(IMA日本支部共同代表)

日本企業の課題として、「日本の上場企業にはグローバルスタンダードであるCFO組織やFP&A部門が存在しておらず、これが日本の資本市場の孤立化や企業価値が低い根本的な原因である」と指摘。

またFP&Aの役割に関して、「企業価値(将来生み出すキャッシュフローの現在価値)を高めるためには、財務報告(予算の達成確認)にとどまらず、事業部に入り込んで売上や事業計画の実行をサポートするFP&Aの仕組みが不可欠だ」と強調。

USCMA資格の重要性については、「FP&Aのプロフェッショナルを育成するため、管理会計とファイナンス(コーポレートファイナンスなど)を広範囲にカバーする“USCMA(米国公認管理会計士)”資格が、今後のキャリア形成において非常に重要になる」と述べました。

●鎗田良信氏(IMA日本支部理事)

金融・投資家視点からのFP&Aに関して、「投資家や金融機関の立場から、新たに施行された“事業性融資推進法”」について言及。

またコミュニケーションツールとしての数値に関連して、「従来の“担保中心”の融資から“事業性評価”に基づく融資・投資へと移行するなか、企業と銀行・投資家がダイレクトに議論するための共通のベース(管理会計に基づく数値やモニタリングの仕組み)として、FP&Aのスキルを持った人材が企業側に必要になる」と説明しました。

●Marcel Ewals氏(IMA Regional Director – Asia Pacific)

IMAのグローバルネットワークについて、「IMAが世界で14万人の専門家を擁するプロフェッショナル団体であること」を紹介し、「管理会計のスキルは国境を越えて世界中で通用するものである」と語った。

最新トレンドへの対応と日本語試験の導入については、「AIやサイバーセキュリティなどの新しいトレンドに合わせてプログラムを常に更新している」点に触れた。また、「日本企業の変革をサポートするための大きな一歩として、昨年“USCMA試験の日本語版”を導入した」ことをアピールし、日本のFP&A人材育成に貢献していく姿勢を示しました。

記者説明会まとめ

記者説明会を通じ、企業価値の向上や新しい融資制度への対応を迫られる日本企業にとって、FP&A機能の導入と、それを担うUSCMA資格者のようなプロフェッショナル人材の育成が急務であることが強くアピールされました。

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