顧問先にもっと響く提案をしたい ── そう感じているなら、有効なのがカスタマージャーニーマップの活用です。ユーザー体験を可視化することで、顧問先は自社の課題と打ち手を自分ごととして捉えやすくなり、意思決定のスピードも上がります。この記事では、カスタマージャーニーマップの作成・活用法を具体的に解説します。

この記事の目次

提案はしたが、なぜか経営者が動かない ── 顧問業務に携わる士業・コンサルタントの多くが、こうした経験を持っています。

原因の一つは、提案の根拠が財務数値や制度情報に偏り、顧客の実態から切り離されていることにあります。
顧問先の経営者が「腹落ち」する提案とは、自社の顧客が何を感じ、どこで離脱し、何を望んでいるかを可視化した根拠を伴うものです。
その強力な手段がカスタマージャーニーマップです。

本稿では、マップを顧問業務の提案ツールとして実践的に活用するための考え方・作成プロセス・運用方法を、顧問目線で具体的に解説します。

顧問先の真の課題を可視化するカスタマージャーニーマップの重要性

Lucid Software本文用画像①

顧客視点の欠如が提案の「ズレ」を生む理由

顧問先の経営者から「集客施策を強化したい」と相談を受けたとき、すぐに広告費の増額や販促の改善を提案していないでしょうか。

実はその前に確認すべきことがあります。
それは、既存顧客がどの接点でつまずき、どの段階で離脱しているかという事実です。
集客より先に「定着」に課題があるケースは多く、入口を広げても出口が詰まっていれば売上は伸びません。

この判断ミスが起きる根本原因は、提案の出発点が「顧問先の担当者から聞いた課題認識」にあるからです。
担当者の認識は往々にして提供者目線であり、顧客が実際に感じている不満や期待とはかみ合っていないことが少なくありません。
顧問がその情報をそのまま受け取ると、いつのまにか提供者視点の枠組みで課題を設定してしまいます。

カスタマージャーニーマップを顧問業務に取り入れることで、こうした「ズレ」を構造的に防げます。
顧客が購買前・購買中・購買後のそれぞれの段階で何を感じ、どのような行動をとるかを可視化することで、提案の論点を顧客の実態に根ざしたものへと組み替えられます。
「なぜその施策が必要なのか」という根拠を顧客体験のデータで示せる顧問は、経営者から圧倒的な信頼を得られます。

単なる工程表ではない、感情と体験を捉える設計図

カスタマージャーニーマップを顧問先に初めて見せる際、「これは業務フロー図と何が違うのか」と問われることがあります。
この問いへの答え方が、マップの本質的な価値を経営者に伝える最初の試金石です。
業務フロー図は「社内の作業手順」を整理するものですが、カスタマージャーニーマップは「顧客が体験する一連の感情と行動の変遷」を記録するものです。
視点が社内ではなく、あくまで顧客の側にあります。

顧問として特に活用したいのが、マップ上の「感情ライン」です。
各フェーズにおける顧客の満足度の高低を折れ線グラフで表したこの要素は、どの接点でエクスペリエンスが落ち込んでいるかを一目で把握できます。
提案の場でこのラインを示しながら「この谷の部分が御社の解約率を押し上げている可能性があります」と語れれば、抽象的な説明では生まれなかった経営者の危機感と意思決定スピードを引き出せます。

このように、カスタマージャーニーマップは定性情報と定量情報を統合した「体験の地図」として機能します。
顧問先との提案の場において、数字だけでは届かなかった問題意識を視覚的に伝え、議論を「何が起きているか」から「何をすべきか」へと素早く移行させる効果があります。

俯瞰的なデータ共有が顧問先との信頼関係を強固にする

顧問先への提案が採択されない理由の一つに、「顧問だけが理解している状態」があります。
どれほど精緻な分析を行っても、経営者や現場担当者がその内容を自分ごととして捉えられなければ、提案は「報告書」として棚に収まって終わります。

カスタマージャーニーマップは、複雑な顧客データや仮説を一枚のビジュアルに集約するため、組織内の共通認識を形成する道具として機能します。
提案の採択率を上げるには、まず「同じ絵を見ている状態」を作ることが欠かせません。
特に効果的なのが、マップを提案書の添付資料としてではなく、経営者や部門責任者との打ち合わせの「議論の中心」として使う方法です。
マップ上の顧客の感情の変化をたどりながら対話を進めると、「確かにうちの営業はここが弱い」「この不満、以前お客様から言われたことがある」といった当事者の気づきが自然に引き出されます。
顧問の提案が「外からの指摘」ではなく「自分たちが気づいた課題」として受け取られるため、実行への意欲が格段に高まります。

カスタマージャーニーマップは提案書の「付属資料」ではなく、顧問先との対話を起点とした共創ツールとして位置づけることが重要です。
マップを中心に据えた議論が、経営者の「腹落ち感」を高め、施策推進への意思決定を加速させます。

説得力が劇的に変わる!実戦的なマップ作成の四ステップ

Lucid Software本文用画像②

「マップの重要性は分かったが、実際の提案現場でどう使えばよいか」という疑問を持つ顧問は多いです。
特に士業やコンサルタントは財務・法務・戦略の専門家であっても、マーケティングリサーチの手法に慣れていない場合があります。

しかし、顧問先への提案に活用するためのマップは、大規模なユーザー調査がなくても作れます。
顧問先がすでに持っている情報を整理・構造化するプロセスそのものに、顧問の価値が宿るからです。
以下では、初回提案から使える四つのステップを解説します。

・STEP 1 ペルソナの設定と目的の明確化
誰のジャーニーを描くかを定義し、マップ作成の目的(課題発見か、施策検討かなど)を合意します。
・STEP 2 タッチポイントと接点情報の網羅的な洗い出し
オンライン・オフライン双方のあらゆる接点を列挙し、抜け漏れのない接触地図を描きます。
・STEP 3 感情ラインの描写と課題特定
各フェーズの顧客感情を可視化し、ネガティブポイントから優先施策候補を絞り込みます。
・STEP 4 理想ジャーニーの設計と施策へのブレイクダウン
現状マップと理想マップを比較し、ギャップを埋める具体的なアクションプランを導出します。

現状のタッチポイントを洗い出し、接点を網羅する

顧問がマップ作成に着手する最初の一歩は、「誰のジャーニーを描くか」を顧問先と合意することです。
いきなりマップを埋め始めるのではなく、「今回の提案で最も改善すべき顧客層はどのセグメントか」を経営者と擦り合わせます。
この合意がないまま進めると、完成したマップが提案の論点からずれたものになりやすいです。

ペルソナが決まったら、そのペルソナが顧問先のブランドや商品と接触する全てのタッチポイントを列挙します。
SNS広告・検索エンジン・口コミサイト・店頭・電話・請求書・アフターフォローメールなど、認知から継続利用に至るまでの接点を網羅します。
この洗い出しには顧問先の営業担当者やカスタマーサポート担当者を巻き込むと、現場の実態に即したリストが得られます。

タッチポイントを並べるだけでも、顧問先の経営者が気づいていなかった事実が浮かび上がることがあります。
例えば「ウェブサイトで問い合わせを促しているのに、実際の電話対応が翌日以降になっている」という接点の断絶は、マップ化することで初めて経営者が自覚できる課題の一つです。
顧問としてこの段階を一緒に進めるだけで、「現状を整理してくれた」という信頼感が生まれます。

顧客の「負の感情」に潜むビジネスチャンスを特定する

タッチポイントがそろったら、顧問として最も力を入れるべきなのが各接点における顧客の「感情の記録」です。
ポジティブな体験の把握も重要ですが、提案に直結するのは顧客が「不満」「不安」「混乱」「諦め」を覚える局面の特定です。
こうした負の感情が発生している地点こそが、顧問先が手を打つべき改善ポイントであり、顧問が「ここを解決しましょう」と根拠を持って提案できる起点となります。

顧問業務の現場では、大規模なユーザーインタビューを実施する時間も予算もないことがほとんどです。
そのため、顧問先がすでに保有している顧客レビュー・問い合わせ履歴・返品・解約理由のデータを整理するところから始めます。
これらの既存情報を顧問の目線で構造化するだけで、「どのフェーズで顧客が離れているか」という仮説を立てられます。
この仮説提示こそが、顧問ならではの付加価値です。

重要なのは、発見した「痛点(ペインポイント)」を提案に直接結びつけることです。
例えば「購入後の初回サポートへの不満が解約の引き金になっている」というインサイトがあれば、「オンボーディング強化でLTVが改善できます」という具体的な提案に展開できます。
数値だけでは届かなかった経営者の意思決定を動かすのは、こうした顧客の実感を根拠にした提案です。

理想のジャーニーを描き、具体的な施策へと落とし込む

現状のカスタマージャーニーマップが完成したら、顧問として次に描くべきは「理想のジャーニー」です。
理想マップとは、全ての顧客接点が最適化された状態、つまり顧客の感情ラインが安定して高水準を保つシナリオを指します。
現状マップと理想マップを提案書の中で横に並べることで、「どこに最大のギャップがあり、どこから手を打つべきか」が経営者にも一目で分かる構成になります。

ギャップが特定されたら、それを解消する施策を提案として具体化します。
この際に顧問として重要なのは、「全部解決しましょう」ではなく「優先順位をつけて段階的に進めましょう」という視点を持ち込むことです。
顧問先のリソースには限りがあります。
費用対効果が高く、すぐに着手できる施策から提案を絞り込む姿勢が、現実的で実行につながる提案の条件です。

施策には実行主体・期限・成果指標(KPI)をセットで示すことで、提案が「絵に描いた餅」で終わらない構成になります。
Lucidsparkなどのツールで作成するカスタマージャーニーマップを活用すると、現状マップと理想マップを同一画面上で並べながら経営者とリアルタイムに議論できます。
顧問先の担当者が自ら付箋を貼り、意見を書き込む体験が、提案内容への当事者意識を高め、施策実行への主体的な関与を生み出します。