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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:海外調査事例 海外子会社への機械装置の無償提供が寄附金とされた事例 他1件

海外取引を行う法人に対する税務調査では、海外子会社等との取引について不審な点はないか、海外での受注工作資金等を捻出するための架空経費はないか、交際費等に該当する支払いはないか等について重点的にチェックされます。今回は海外子会社へ無償提供した機械装置について寄附金認定された事例及び、海外在住の個人に支払ったコンサルタント料が交際費課税された事例を紹介します。

事例1 海外子会社への機械装置の無償提供が寄附金とされた事例

車両部品製造のための機械装置を会計上は除却損に計上し、実際は海外の製造子会社に無償提供していた事例

≪事例の概要≫

調査対象法人は、海外に製造子会社を有する日本の親会社である。

毎期の年度末の3月には、機械装置等の利用状況等の確認を行い、不要となった資産については製造ラインから外し廃棄処分を行っていた。今期は、車両部品製造のための機械装置数点を廃棄し除却損に計上した。

税務調査において、廃棄処分された機械装置が数点あったことから廃棄の事実を確認できる書類の提示を求めたところ、社内稟議書では廃棄処分とする旨の決裁を受けていたものの、廃棄処分を証明する廃棄処理証明書等の書類は保存されていなかった。会社側からは、他のスクラップ屑と一緒に処分しているはずだの説明があった。

一方、海外子会社への部品等の輸出関連資料のリストを見ると、廃棄処分したとする機械装置らしき品名の記載があったことから、更に調査を進めたところ、海外製造子会社を統括する部署の判断で帳簿上廃棄処分となった機械装置数点を海外製造子会社に無償提供していたことが判明した。

その機械装置はまだ使用できる状態ではあったが、社内での生産設備更新計画により不要となったもので、海外製造子会社での製造では十分に利用できると判断したため現地と連絡を取り、無償提供したものであった。

会計上は除却損として計上されていたにも関わらず、実際は海外製造子会社に無償提供されていたため、その機械装置の帳簿価額相当額を海外製造子会社への寄附金とし、全額損金不算入の課税処理を行った。

≪調査の着眼点≫

機械装置等の「除却損」の計上がある場合、税務調査では廃棄処分業者等が発行する廃棄証明書やマニフェストの引き取り日付を確認し、翌期に廃棄損とすべき費用を当期の廃棄損として計上していないか等の検討が行われます。場合によっては機械装置が設置してあったとする場所等で設置機械装置の現物確認を行い簿外資産として残っていないか確認する場合もあります。

また、スクラップとしての売却収入を除外していないかを確認するため、回収業者等への反面調査が行われる場合もあり得ます。

事例2 コンサルタント料が談合類似金とされた事例

海外の政府系機関の入札案件で、情報入手のために架空のコンサルタント料を支出していたため、談合類似金として交際費課税された事例

≪事例の概要≫

当社は、通信機器のメーカーで、市場拡大のため、海外への進出を計画している。この度、海外の政府系機関の受注案件について入札に参加することとなった。

税務調査で、調査担当者は海外市場調査のためのコンサルタント料について検討したところ、調査の委託先が海外在住の個人のコンサルタントであることを不審に感じ、業務委託契約書記載の役務提供内容と調査結果報告書等の成果物受領の有無、国外送金先等について検討した。

業務委託契約書ではその市場動向等の報告書の提出がコンサルタント料支払いの条件になっていたため、相手方から提出の報告資料等やり取りをした記録の提出を求めたが、資料の提出は一切なかった。

また、当該海外在住のコンサルタントについて詳しい説明を求めたところ、同人に支払った金額は同人を通じ、海外の政府系機関の入札担当者から入札予定価格の情報を入手するために支出したものである旨の説明があった。

海外在住の個人に対するコンサルタント料は、政府系機関の入札担当者から入札予定価格を聞き出すために支出されたものであるため、談合類似金として交際費課税の対象とした。

≪調査の着眼点≫

コンサルタント料等を支払う場合には、調査報告書など役務提供を受けた事実が確認できる書類を残しておくことが重要です。

特に個人に対する支払いは、税務調査で問題となりやすいものです。不審な支出先については、国税庁を通じて相手国の税務当局に情報提供を要請する場合もあります。このケースでは、コンサルタントと称する個人は実在するか、日本から支払われた金額は売上として税務申告しているか、どのような役務を提供したのか、等について情報提供要請することが考えられます。

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著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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