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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:海外調査事例 海外子会社への売上返品が寄附金認定された事例 他1件

今回は、海外調査事例として、海外子会社への売上返品処理が寄附金認定された事例と、海外子会社への広告宣伝費の負担金の一部が交際費に該当すると指摘された事例を紹介します。

事例1 海外子会社への売上返品処理が寄附金認定された事例

≪事例の概要≫
調査担当者が得意先別売掛金元帳を検討したところ、決算期末の海外子会社に対する売掛金残高から多額の売掛金額が減額されていることを把握した。
減額の理由について会社に説明を求めたところ、海外子会社に販売した製品に不具合があった為に返品されたことによる減額であり、返品された製品は不良品であったため廃棄処分したとのことであった。
しかし、廃棄処分をしたことが確認できる書類の保管もなく、返品されたとされる製品に関する輸入申告関係書類等も保存されていなかった。
そこで、海外子会社との取引担当者に詳しい説明を求めたところ、海外子会社で一時的に資金不足に陥り支援の要請があったため、売掛代金を回収しないことにしたとの説明があった。

通常は、社内稟議等により資金援助の適否と適正な利率による貸付金の額等を決定した上で、資金援助を行っているとのことであったが、今回のケースでは社、売掛代金を回収しない形で支援を行っていた。
回収しないこととした売掛代金相当額は、「国外関連者に対する寄附金」として全額損金不算入とした。

≪調査の着眼点≫
海外子会社を有する法人の税務調査では、海外子会社との取引に仮装した資金援助がないか、海外子会社との取引に仮装した簿外資金や受注工作資金等の捻出がないか等の有無が調査される。
特に決算期末の不審な会計処理は重点的にチェックされるため、今回の事例のように、決算期末の売掛金の減額処理は調査官の目に止まりやすいものである。

事例2 海外子会社への広告宣伝費の負担金の一部が交際費とされた事例

≪事例の概要≫
調査対象法人(親会社)は、ヨーロッパ各国に自社製品の販売子会社を有し、それぞれの国内で親会社の製品を販売している。現地での親会社製品の広告宣伝活動については現地販売子会社に委託し、かかった費用について後日報告をもらい精算していた。
調査では、海外販売子会社への販売活動に係る負担金が増加傾向にあったことから、海外営業部の担当者に販売子会社から提出された販売活動実績報告書等の提出を求め、不審な支出がないか等の検討が行われた。その結果、取引先を対象とした販売促進策の一環で旅行招待イベントの企画が含まれていた。

その旅行の目的・内容等について説明を求めたところ、販売子会社の営業エリア内で、一定数量以上の製品を購入してくれた得意先代理店を、ヨーロッパ各地の観光名所に招待することとしており、その費用を親会社が負担したとの説明があった。
販売子会社が得意先代理店を旅行に招待した費用の親会社側の負担金は、親会社側の交際費等として扱われるため、当該費用を交際費等と認定し、損金不算入額を再計算した。

≪調査の着眼点≫
税務調査では、日本の親会社が海外販売子会社に対して、自社製品の広告宣伝費や販売活動費の負担金を支出している場合、その負担金の中に、現地での受注工作資金を捻出するための架空経費が含まれていないか、親会社の交際費となる支出が含まれていないか、といった点についてもチェックされる。

この事例のように、海外での販売活動や広告宣伝活動を現地の子会社が行い、親会社が費用を負担する場合、現地でのテレビ・出版物等のマスメディアでの広告宣伝活動以外に得意先等との接待費用が含まれている場合があるので、支出内容の検討が必要であろう。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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