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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:海外企業を買収する際のデューデリジェンス費用に注意

海外企業を買収する際には、財務調査費用(デューデリジェンス費用)等が発生します。税務調査では、有価証券の取得価額に算入すべきデューデリジェンス費用の処理誤りがよく指摘されます。特に規模の大きな企業を買収する場合にはデューデリジェンス費用も億単位になるケースもあることから、取り扱いには十分注意する必要があります。

海外企業を買収する際のデューデリジェンス費用(DD費用)の取り扱い

海外進出するに当たっては、海外子会社を新規に設立するのではなく、既存の海外企業を買収するケースもあります。この場合に問題となるのが、海外企業の株式を取得する際に支出する財務調査費用(デューデリジェンス費用:DD費用)をその株式の取得価額に算入しているかという点です。これは税務調査で問題になることが多い項目です。

購入した有価証券の取得価額は、その購入の代価にその有価証券の購入のために要した費用の額を加算した金額とする旨規定しています。

海外企業を買収する場合には、その買収企業の事業の採算性や成長性等を調査・検討するためのデューデリジェンス(財務調査)を行い、多額の費用が必要となるケースがあります。

この場合、買収することを決定した後に支出される費用を有価証券の取得価額に含めなければなりません。そのため、買収に際しての意思決定がいつなされたのかが重要なポイントとなります。例えば取締役会での決定や社内の稟議書での決定などがありますが、実務上は買収の経緯など個々の事実関係を基に個別に判断する必要があると思われます。

税務調査においては、取得価額に算入すべき財務調査費用が漏れていたという指摘がよく見られますので、注意が必要です。

裁決事例

以下の事案は、財務調査費用の取得原価算入が争点となった裁決事例です(平成22年2月8日 福岡国税不服審判所裁決)。

【事実関係】

パソコン販売業を営むX社は、平成19年7月18日に開催した臨時取締役会において、Y社の株式を取得する旨決議し、同日に株式の譲渡に関する買収監査を行うことを合意した。

X社は、平成19年7月26日にZ社と財務調査に関する業務委託契約を締結し、財務調査をZ社に依頼した。本件財務調査の目的は、Y社株式の買収についての意思決定の参考とするためであった。

X社は、平成19年8月9日にZ社から財務調査報告書の提出を受けたことから、財務調査費4,500,000円を損金の額に算入したところ、国税当局から当該財務調査費については有価証券の取得価額に算入すべきであるとして法人税の更正処分を受けた。X社は処分を不服として審査請求を行った。

【審判所の判断】

  1. 購入した有価証券の取得価額は、法人税法施行令第119条第1項第1号がその購入の代価にその有価証券の購入のために要した費用の額を加算した金額とする旨規定しているところ、どの有価証券を購入するか特定されていない時点において、いずれの有価証券を購入すべきであるか決定するために行う調査等に係る支出は、この有価証券の購入のために要した費用には当たらないものの、特定の有価証券を購入する意図の下で当該有価証券の購入に関連して支出される費用は、有価証券の購入のために要した費用として当該有価証券の取得価額に当たるものと解される。
  2. X社が、平成19年7月18日に開催した臨時取締役会において、Y社株式を取得する旨決議していることからすれば、X社は同日において、Y社株式を取得することを決意していたと認められる。本件財務調査がY社株式の買収についての意思決定の参考とするために行われたものと認められることからすれば、本件財務調査費用は、特定の有価証券を購入することを決定した後に当該有価証券の購入に関連して支出される費用に該当することになるから、有価証券の購入のために要した費用として、Y社株式の取得価額に算入されることとなる。

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著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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