今回お話を伺った実力派会計人はアクタス税理士法人、代表税理士の加藤幸人氏。税務会計のみならず経営支援、人事労務、システムコンサル、経理・給与アウトソ-シングなど、ワンストップで企業経営をサポートする「総合コンサルティングファーム」を支える加藤代表のキャリアや今後のビジョンに迫ります。(取材・撮影:レックスアドバイザーズ 市川)

税理士としてのキャリア
家業の承継を辞め税理士に転身
加藤代表のご実家は長野県でお寿司屋さんを経営されていたと伺いました。税理士を志したきっかけを教えてください。
加藤:実家は、両親が2人で経営しているちっぽけな寿司屋でした。親戚も、東京で寿司屋をやっていましたが、そちらは銀座で3店舗と手広くやっていました。一人っ子でしたし、親族が皆そんな状況でしたので、小さい頃はずっと、家業は継ぐものと思っていました。
そんな自分に、中学の担任の先生が「寿司屋といっても寿司を握っているだけではだめだ。経営を担うなら税理士という資格もある。」と教えてくれました。勉強しない自分に対して、目標を持たせて勉強させるための指導であったかと思いますが、その言葉が自分の人生に大きな影響を与えることになりました。
大学3年になるときに家業を継ぐのを辞め、将来は税理士になるという方向転換をしました。今私は、事業承継のセミナーで、「ビジネスに魅力がないからと事業承継をしない子供が増えている」と話をしていますが、実は自分もそんな決断をした一人なのです(笑)
現法人でのキャリア
加藤:大学卒業後2年間は、フリーターで受験勉強に専念しておりましたが、その間に合格したのは簿記と財表だけです。25歳の夏の受験を終えて、さすがにそろそろ就職しないとまずいだろうと思い、大原・TACの就職説明会に参加して、ごく普通の就職活動を行って、1989年9月に稲村会計事務所に入所しました。
当時の稲村会計事務所は、立ち上げたばかりで私を入れて8名の事務所でした。ただ、税理士や会計士、弁護士などの専門家の集団である“ADVICELINK”のメンバーでしたので、それらの専門家がすべて同じフロアで机を並べて総勢50名ほどおり、小さな事務所に入ったという印象はありませんでした。若いときに、同世代の弁護士達と机を並べて、お互いに分からないことは聞きあって議論したりしながら仕事できたことは、とてもいい経験になっています。
その後、働きながら90年、91年に法人税と相続税に合格されています。働きながらの試験勉強はいかがでしたか?
加藤:就職して1、2年目は、仕事をしながらも専門学校に通学できる状況にありましたが、やはり受験に専念していたときにくらべて、圧倒的に時間が足りません。仕事と勉強を両立して必ず税理士に合格する、という意識は強かったので、何よりも優先して勉強時間に充てました。自分の時間の全てを勉強に費やした、と言っても過言ではありません。
試験前数ヶ月は、朝早く出社して1時間の勉強、昼も早く食事を終えて勉強、自宅ではテレビを押し入れに片付けて勉強と、とにかく頑張りました。それで、2年連続して法人と相続に合格しました。しかしそのあとが長かった。入社7年を経て32歳のときにようやく合格しましたが、最後の消費税に手間取って5年掛かりました。それは掛かりすぎですね。ただ、その後消費税率の引き上げがあり消費税のセミナー講師を結構やりましたが、このときの勉強は確実に役立っています(笑)
代表になるまでの10年間

25歳で入社して35歳で税務部門の代表になられていますが、その10年間の業務について教えてください。
加藤:最初の3年間ぐらいは、税務スタッフとしてお客様を担当し、税理士の実務の基本を経験しました。その後、当時のアクタス監査法人(現太陽有限責任監査法人)のアシスタント業務や、M&A等の特殊税務業務を担当しました。その後は、税務部門のマネージャーをしながら、経理アウトソーシングの現場責任者も兼務して担当しました。この兼務の時代はきつかったです。昼はお客様の現場で経理を、夜は事務所に戻り税務をやっていました。ただ、この経理の現場での経験や監査の業務が、私の税理士としての成長にすごく役に立っています。
普通の税理士は、決算書の作成から税務申告の業務が中心です。どちらかといえば後処理の仕事が多く、またどうしても物事を税務的な観点を中心にとらえがちです。私の場合は、会社の取引から数字ができあがるところを経理の責任者として対応し、経理現場の大変さを経験し、業務フローや内部統制の重要性もみてきています。まさに経営的な視点が中心です。今、業務改善やシステムのコンサル、経理実務のセミナーに対応できるのは、この経験があるからです。
そんな私も、若いときには失敗もあります。条文解釈の詰めが甘かったせいです。そんな経験が教訓になっています。お客様の問題を自分のことのように考え、最後まできちんと詰めを行って最善を尽くす。今も肝に銘じて取り組んでいます。
代表になってから現在までの20年間
代表になられてから現在まで約20年が経っておりますが、その間を振り返っていただけますか。
加藤:私は35歳で代表になりました。家業は承継しませんでしたが、会計事務所の経営は承継することになりました。今思えば代表になった前半の10年は、経営者としては未熟であったと思います。がむしゃらに頑張ってきたスタッフ時代の延長線上で業務を運営していましたので、適切な経営者としての取り組みが不充分でした。若くして代表になった奢りもあったと思います。営業的な目線で指導をしすぎて、「売上至上主義ですか」と詰め寄られたこともあります。
それがどう変わったかですが、転機としてはもともとの理念を再構築して「アクタスイズム」をつくったことが大きかったと思います。「コンサルティングで未来をつくる」という企業理念のもと、専門性とともに人間力を磨いていくことを謳いましたが、これで、アクタスの方向性の軸が固まりました。またパートナーは、利己的、回避的、閉鎖的な行動を排除し、自分を律しながら行動することを明示し、私自身の軸も決してブレずに、経営に取り組むようになりました。
経営についてと今後のビジョン
専門力・人間力を磨くために意識をしていること
アクタスイズムの基本姿勢の中に「専門性と人間力を磨き、満足度の高いサービスを提供し続け」とあります。専門性と人間力を磨くために、御社が取り組まれていることはありますか?
加藤:アクタスは、高い専門性と人間力をもったアクタスらしい人材になっていただくための研修体系を整えております。さらには、幅広い業務に取り組める環境や機会があります。
“専門性”を高めるためには、研修を受けるだけでは不充分です。一人ひとりが、税制改正などの法令変更は絶えずキャッチアップし、さらに社会経済の最新情報も収集していくような「自分磨き」の取り組みも必要であると思っております。また、セミナー講師や執筆などの業務経験も専門性を高めていきます。人に話すとなると、細部まで調べて理解していなくてはなりません。突き詰めて深く理解することで、知識を自分のものにすることができます。
また、“人間力”もアクタスの特徴の一つです。人間力とは、誠実さ、謙虚さ、明るさ、などの人間的魅力と、課題解決力や対応力などのお客様から大きな信頼を得る力のことです。平たくいえば、お客様を想い行動する力です。アクタスの行動宣言には、「いつもお客様の立場で考え」、「なによりもお客様の成長と発展のために行動する」ということが書かれています。お客様の課題には、真摯になって取り組むということが大切ですね。
お客様の立場になって一緒に考えていると、当然にお客様からの信頼も高まります。人間力は、こういった行動の積み重ねで、日々お客様と向き合っていくなかで高められるものであると思っています。

経営者としての大変なことや面白さは、どのようなところでしょうか。
加藤:中小企業の社長のなかには、「経営者は大変だ」という人がいますが、私はそうは思いません。会社は、それぞれの役割を果たすために全員が頑張っているのであり、社長だけが大変なわけではありません。さらに、自分が大変だ、ひとりで孤独だという人は、そういう環境を自分で作ってしまっているのではないでしょうか。会社経営は決してひとりではできません。組織をつくって、一緒になって支えてくれる人達をつくっていけばいいのです。
私の場合は、周りのみんなで役割を分担して経営をしているので、自分だけが大変だという気持ちはまったくありません。たくさん給料をもらっている人が、たくさん働いてたくさん貢献するのは当然のことであり、それが経営者の責任であり義務であると思っています。
仕事の楽しさや面白さは、経営者としてよりコンサルタントとしての方が感じます。やはり一番は、お客様の成長を支援でき、そのお客様の満足や幸せを感じながら仕事ができるところではないでしょうか。それがコンサルティングの醍醐味ですね。また私自身は、8人の事務所から現在の規模までの成長の過程を、切り拓きながら経験してきました。これは、経営者としての楽しさであり面白さの貴重な経験です。これからのさらなる成長を、周りのメンバーと一緒になって取り組む環境にあることが、とても楽しく幸せなことであるなと感じます。
今後のビジョンをお聞かせください。
加藤:私達アクタスの事業運営の基本は、顧客、社員、組織のすべての満足を実現していくことであり、そのために組織拡大を継続して、次世代に継承していくことです。まさに継続企業のような会計事務所が目標です。また、サービスラインナップとしては税務会計だけでなく、人事やシステムに関するサービスを提供し、お客様の管理部門の業務を、総合的に支援する事務所を目指しています。
KaikeiZine読者へのメッセージをお願いします
加藤:私達は、「圧倒的なプロになる」というテーマを掲げ、採用活動に積極的に取り組んでおります。圧倒的なプロになるためには、専門性はもちろんですが人間力も必要です。人間力を磨いて、お客様の立場になって考えて仕事をすれば、必ずお客様にも喜んでいただけます。そんな取り組みは、メンバーひとりひとりの人間的な成長にもつながっていきます。
現在、グループで170人。継続的な成長がアクタスの目標ですので、10年後、20年後といった将来に向けて、これからも採用に力を入れていきます。今後も、毎年10人ほどは採用していきます。さらには新卒採用にも力を入れて、アグレッシブでフレッシュな大学生、大学院生を採用することにも取り組んでいます。
圧倒的なプロになりたいと強い志を持っている方は、専門性と人間力を磨くプロが集まったアクタスを、ぜひとも志望していただきたいです。お気軽にアクタスを見に遊びに来てください。
【編集後記】
平成をアクタス一筋で駆け抜けてきた加藤代表。今後も専門力・人間力を大事にしながら顧客満足を高め、組織拡大を目指していかれるのですね。
加藤代表、ありがとうございました。
アクタス税理士法人
●設立
2003年9月
●所在地
東京都港区赤坂4丁目2−6 住友不動産新赤坂ビル
●理念
コンサルティングで未来をつくる
●企業URL
https://www.actus.co.jp/
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