今回は税理士法人エム・エム・アイの代表高橋節男氏と同社企画部のみなさまにインタビューをさせていただきました。創業60年という歴史を誇る同社の経営戦略や、会計・税務業務は行わない部署である同社「企画部」に迫ります。(取材・撮影:レックスアドバイザーズ 村松)

創業60年、「みんなで幸せになろう」
事務所の成り立ちや、特徴について教えてください。
高橋社長:今から60年前、私の父である高橋信行が品川区旗の台にて会計事務事務所を開業し始めました。私の税理士登録が完了した後、会計事務所に入所し、50歳になり会計事務所の代表に就任。その後「税理士法人エム・エム・アイ」として個人事務所から法人として登録を変更いたしました。その当時は私どもくらいの規模単独での法人成りは珍しいと思います。余談ですがいつもお世話になっている顧問先の皆様をご招待し、今思えばちょっと贅沢なお披露目会もしました。
当社の特徴を言いますと、会計事務所ではありますが組織立って業務を行っているということです。なぜそのようにしていったかというと…実は、私が入所した頃は、5万円以下のお客様は顧問契約をお断りしていました。顧問料は40年前くらいから5万ほどで、ずっと値上がりしていないのです。特にバブル後は全く上がらないどころか、契約料をむしろ下げてくれという顧問先も出てきました。
そこで、私が発案したのは「訪問をしない代わりに顧問料を1万円にする」という方法です。顧問料の上がらない時代も長かったのですが、一番優秀な人に小規模会社の担当になってもらい、顧客を拡大するという方法で乗り切りました。
今も当事務所の税務監査部二課(※会計・税務を担当している部署のひとつ)は訪問はせず、電話などで顧問先への対応をしています。実際のところ、会計事務所の職員は勉強熱心ですし、上昇志向も高い。だから規模の大きいお客様を担当したいと希望する方が多く、ベテランほど、難しいお客様を持って当然と捉える人もいます。しかし実際のところ、一番効率がよくて利益に繋がるのは毎年同じ決算申告をする小規模会社なのです。
もちろん、従来の会計事務所のようにお客様へ訪問してご相談に乗る部署(税務監査部一課)もあります。
組織の発展と企画部の存在

組織が発展していった経緯と、その際大事にしてきたことについて教えてください。
高橋社長:ISO(取引上の安全性を確保する国際的認証)を取得するということで、出口チェックのために審理室も作りました。これからの時流を捉え、新しい動きをするために企画部を始めたのは今から15年前。企画第1号は税法に詳しい小池先生と共に「dailyコラム」という毎日士業の為のコラム作成・発送するサービスを始めました。
鈴木さん:他にも、当初会計事務所は広報活動が禁止されていたため、会計事務所業務とコンサルティング業務、2つの仕事内容を分け「株式会社エム・エム・アイ」を設立することにより広報活動が可能になりました。このように、代表は会計事務所の枠にとらわれず時代に先駆けたアイデアを実行してきました。それが、部署として形となっているのが私たち企画部です。
私たちは当事務所にとって必要ではないかと思う企画を提案、実行するのですが、職員から出た提案に対しても「やってみれば」の代表の一言で許可が下りることも多いです。現在、当社のHP上には相続税のシミュレーションを掲載しているのですが、それも職員が提案したところ、代表は一言「作ってみれば」と。職員から出たアイデアが利にかなっているものであれば否定せずにどんどん実行させてくれます。だから職員も楽しんで仕事に取り組めますし、離職率の低さも当事務所の魅力を表していると思います。
高橋社長:そうですね、離職率は低いです。職員が定着している分、平均年齢が上がっています。ですから4、5年ほど前から、毎年、新入社員を採用するようにしています。
採用に関しては、平成元年には営業専任の方の採用を開始されたとのこと。営業専任の方を置くのは、何かきっかけがあったのでしょうか。
高橋社長:どこの会社も「製造やサービス」「営業」「管理」という部門が必要です。しかし会計事務所は営業ができないので、組織として「営業」の部分が欠けていました。今でも大きい事務所でなければ営業専任の職員を置かず、代表が営業をする事務所も多いと思います。しかし当社の場合は、会計事務所であっても一つの企業体であると考えています。ですから企業としてどうやっていくかという点に重きを置いています。「dailyコラム」やランディングページ等の集客・マーケティング施策も、企業と同様に行っています。
営業専任を置いた際の社内の反応はいかがでしたか。
鈴木さん:実は、社内的には営業専任を置くということに対して、抵抗を持つ職員も多くいました。会計事務所の職員からすると、申告もできない人間をなぜ雇うのか、と批判的に見られたようです。
高橋(聰)さん:私は、今後の継続的な発展のための営業を担当しているのですが、独立される先生はある意味「タレント業」だと思っています。ご自身の個性をアピールして、自分の事務所を運営していくのですから。しかし組織の中で勤務されている税理士の先生であると、ご自身をアピールする場はそれほどありませんし、個をアピールすることが苦手な方も多いのです。しかも忙しい時期であると、営業活動はできません。
ですから、そういった部分を埋めるのが営業専任である私の役目だと思っています。忙しい税理士の先生方に代わって、YouTubeやTwitterなど、タレント業のようにお客様にアピールしています。これからの時代は自ら発信をしていくことが重要になってきますし、今はリモートでの営業となり、コミュニケーションの必要性を特に感じています。
高橋社長:コミュニケーションは重視しています。中小零細企業のニーズが何なのかをすくい取っていかないといけません。その結果、企画部にIT担当の田辺を採用しました。
ITの導入について

IT分野の強化もしていらっしゃるとのこと、担当でいらっしゃる田辺さんは、現在どのような業務をされていますか。
田辺さん:直近だと、社内作業の単純化を目指して、RPAの対応を進めています。社内の業務を一通り理解していくと、自社以外でも対応ができる業務というものも見えてきているので、それらも効率化することで、将来的には完全にリモートで勤務できるような環境も作れたらと考えています。
高橋社長:最終的にはお客様のITに関する指導もできるようにしたいと考えて、そのための仕組みづくりを進めています。
田辺には、社内のRPAの対応と、社外の対応を任せています。新しい人材を入れて、知識的にも技術的にも進歩していきたいですね。

皆さまがお話ししている様子を拝見すると、社内でコミュニケーションが取れているのだと分かります。
鈴木さん:企画部は個人個人は違う仕事をしていても、背中には誰かがいるという感覚があります。何か困ることがあったら誰かに頼れる環境です。私たちはお客様の財布の中身を見せてもらう業務なので、やはり信頼を得ることが第一。そして信頼を得るためには、やはりコミュニケーションが大切です。職員同士の会話で朗らかなコミュニケーションが取れるので、自然とお客様に対してのコミュニケーション力も上がります。
様々な提案や意見を出しても、社長はきちんと話を聞いてくれます。他の会社では代表に対して意見を言いにくいようなことも、会議等で提案や意見を出しています。みんなでいい会社に、いい方向にしていこうという雰囲気がとてもあります。私も転職してエム・エム・アイに入社しましたので、この雰囲気はとても仕事がしやすいと感じています。
高橋社長:日本の組織は機能集団にしようとすると、おそらく欧米に負けます。1+1が2にしかなれない機能集団になってしまっては、上手くいきません。日本人は「村」を作るのがもともと得意。もちろん悪い方向に集団的な圧力が働くのは良くありませんが、いい方向に向かせられたら「村」のような組織作りは日本に合っているのではないでしょうか。
年功序列も一概に悪いわけでもなく、年相応にスキルが身に着いているということです。
従業員同士の飲み会や新年会・忘年会にも、意味があります。仕事だけのお付き合いでは本当のコミュニケーションは取れません。
時代に即した試みで発展を続ける

高橋社長:昔は、お客様と会計事務所との出会いはほとんど紹介でした。しかし今は、税理士紹介のサイトから検索されていらっしゃるお客様も多い。昔よりも、申告だけを求めているお客様も増えているように感じます。しかしそうはいっても、お客様との関係が長続きするためには、コミュニケーション、信頼関係が不可欠。コロナ禍でオンラインでの対応も普及していますが、お客様のニーズに合わせて、対面か、オンラインか、お客様が選択されるものに合わせています。時代に即して変化しながら、試して試して発展していきたいと考えています。
常に変化をとらえ、枠にとらわれずに新しいことを試し続けていることが長年の発展の秘訣なのだと感じました。また、社長を交えての場でも活気のあるインタビューとなり、日頃のコミュニケーションから強固な信頼関係を築いていらっしゃることが伺えました。高橋社長、企画部の皆さま、ありがとうございました。
税理士法人エム・エム・アイ
●設立
昭和36年1月会計事務所開業
●所在地
東京都品川区大井1-7-6 THビル
●理念
『皆で幸せになろう!』
●企業URL




