“自分自身の声に従って、ありのままに生きてみて”そう話すのは、税理士・伯母(うば)敏子氏。東京都・武蔵野市にて税務相談サービスを行っている伯母氏だが、2019年に開設をしたYouTubeは登録者1万人を超え、セミナーや執筆などひっぱりだこの実力派会計人だ。女性が少ない税理士業界の中で表立って発信をする彼女に、華やかな印象を持つ人も少なくないだろう。しかし、実は税理士の資格取得をするまでに多くの挫折を経験し、自分を見失っていた時期があったと話す。今回は、伯母氏の税理士になるまでのキャリア、そして自信を取り戻していったその過程について話を伺った。(取材・撮影:レックスアドバイザーズ 市川)

女性としての挫折を経験し、自立をする為に税理士資格を目指す

税理士を目指したきっかけについて教えてください。

伯母:就職活動では、世の中を広く見てみたいと思ったことがきっかけで様々な企業に対してコンサルティングをする仕事を目指していました。しかし当時は大卒の女性が働ける総合職のコンサルは狭き門。それならコンサルのように様々な職種の方と関わり、自分自身も多様な業界の知識を得られる仕事をと考えて、金融業界の中でも女性を総合職で積極的に採用していた総合リース会社に就職をしました。

しかし実際に、働いてみると毎日飛び込み営業で、ノルマも激しく疲弊してしまいました。日々、憔悴していく私を心配してか、税理士である父に声をかけてもらい、父の会計事務所で働くことになりました。

簿記の知識も全くない状態から始めましたが、娘であるということで他の職員さんの手前、必死に仕事を覚えました。

女性にとっての幸せ”を追い求め、挫折を経験。

伯母:仕事も遊びもそれなりに楽しくやっていたのですが、どこか物足りないという気持ちが心の中にありました。その頃、長くお付き合いしていた方と別れてしまったのですが、28歳というちょうど周囲が結婚をし始める時期。とても焦りました。このままだと私は幸せになれない。どうにかしなきゃと次にお付き合いした方とすぐに結婚をしました。しかし、結果的に1年ほどで離婚という選択をすることになりました。

このときに初めて、それまでの生き方を見つめ直しました。就活時にいろいろなことに興味があり自分で人生を選んでいたようだったけれども、結局なにがやりたいのかの軸が定まっていなかっただけ。結婚をしたのも、ステータスだけに憧れを抱いて、その方の本質に目を向けられず、また私自身も自信のなさから取り繕った姿しか見せることができなかった。だから、うまくいかなかったのだと気が付きました。

とても落ち込みましたね…。これまで流されるように生きてきて、自分の意志で誰かを愛することもできず、仕事も逃げるように父の会計事務所で働いて、気が付いたら私の手元には何も残っていなかった。

だからこそ、税理士という資格が自分に自信を持つきっかけになるかもしれない、最後まで頑張ることが何かに繋がるかもしれないと思い始めました。

こうして30歳手前。税理士を目指すことになるのです。

“絶対に税理士になる”強い意志を持ち取り組んだ10年間

資格の勉強を開始してどのような変化がありましたか?

伯母:試験勉強を始めた頃は、平日は仕事が終わったら専門学校に通い、土・日は予備校の自習室が開く朝7時から行って、夜9時まで勉強しました。勉強を始めてから合格に至るまで10年間ぐらいかかったのですが、その間に再婚と二度の出産というライフイベントを経験しました。今の夫とは、勉強と仕事の両立に必死だったときに出会いました。

当時は、夫と知り合ったあとも、私は「試験勉強があるので遊べません。」と税理士試験に一直線。それでも夫は、目指すものがある姿を素敵だと思ってくれたそうです。自分の本心を素直に出せる相手だったから上手くいったのかもしれませんね。

結婚後は家庭に、仕事に、試験勉強にとにかく忙しかったですね。法人の顧問先が中心の会計事務所だったので確定申告の時期だけでなく年間を通じて決算の時期があり、残業もあったので試験前は両立が大変でした。その上、1人目を38歳、2人目を41歳のときに出産をし、子育ても加わりました。子どもを寝かしつけてからこっそり起きて、勉強をする日々。時間がないので保育園までの移動中も子どもをベビーカーで押しながら、暗記をしました。本当はもっと家庭に時間を費やさないといけないのは分かっているからこそ、机に向かわないといけないのは苦しかった。夫にも負担を掛けてしまい、正直、勉強を続けていいのか迷ったときもあります。

それでも頑張れたのは、”絶対に税理士になる”という強い意志があったから。

合格をした時は、勉強から解放される安堵感と有資格者として働くことの責任感が増しました。

肝心の自分に自信がついたかどうかに関しては、振り返ってみると税理士合格がきっかけではありませんでした。この10年間という長い期間の間で、私は自分の意思で生きてこられたので、いつの間にか自信が持てるようになっていたのです。

この経験を経て感じることは、自分がどうして税理士になりたいのか、なぜ頑張っているのかを周囲に理解してもらうことと、絶対に合格をするという強い意志が大切だということです。ただ勉強したいから、と周囲に押し付けるだけでは、理解してもらいにくいですよね。私の場合は、「自分に自信を持ちたい」「自分の人生にとって試験に合格することがいかに大切か」といったことを家族に丁寧に説明をしました。

正直、私も勉強を始めた頃から、自信がついたわけではありませんでした。しかし、税理士というのは科目を一つずつ取得していく積み上げ式の試験です。そういう意味ではライフイベントで生活が変わりやすい女性にもおすすめの資格だと思っています。

夢は出版。自分らしさを取り戻した伯母氏が語る今後の展望

税理士試験に合格後、独立をされました。

伯母:当時は、父と税理士法人を作るという話もありました。しかし、話し合いをしていく中で、父と私で事務所の方向性が少し違うことが分かったのです。また、将来的に自分が父の事務所を継ぐときにも、経営者としての経験があった方が自信を持って引き継げるというのも考え、独立をすることに決めました。

開業をして3年。現在は、税務相談という仕事を通じて様々な業種の法人のクライアントの話を聞き、元々やりたいと思っていたコンサルティングの仕事ができています。法人だけでなく、個人の相談も受けています。「ゆるふわ経理部」という、経営者仲間と共にビジネスを進化させていくコミュニティオンラインサロンです。会員専用サイトで、顧問契約や申告代理までを望んでいない個人事業者や小規模法人への経理サポートを実施しています。

そして、もっと個人の方にも税金の情報を知ってほしいなと考え、YouTubeも2019年1月から始めました。最初の1年は鳴かず飛ばずでしたが、この2年で登録者数が1万人を超えることができました。税理士試験もそうですが、何事も続けることで結果が出るのだなと感じています。

YouTubeを開始してからご新規様からのお問い合わせも増えたのですが、一人社長の場合、会社の方向性が、どこに向かえばいいのか分からないというご相談もいただきます。じっくり考えてみると自分にしかできないことが見つかるはずなのですが、世の中や周囲の人に流されてしまってモヤモヤしているのです。もっと自分自身の声に従ってありのままに生きてみていいと思います。

また、確定申告についてご質問もよくいただきます。よく理解をせず申告をしている場合も多いかと思います。しかし確定申告に向けて、普段の事業の中でできることはたくさんあります。今後は、確定申告前に慌てるのではなく、普段の事業と同時進行して確定申告の準備をする助けになるような本を書きたいと思っています。

私自身、自信がついたことで自立をして人生を歩めるようになりました。こうして新しい夢も見つかり、これからワクワクしています。

【編集後記】
税理士試験に取り組む中で自信をつけていった伯母先生。お話をお伺いしている中で、自然体な姿が素敵でした!今後はYouTubeに加え、執筆活動などにも力を入れていかれるのですね。伯母先生、ありがとうございました!

伯母敏子税理士事務所

●設立

平成28年11月14日

●所在地

東京都武蔵野市吉祥寺南町2-29-5-103

●理念

世界を揺るがす中小事業者の伴走者であれ
常識破りの税理士であれ

●企業URL

事務所HP
https://office.uba-tax.com/

YouTube「税理士うばとしこのゆるふわチャンネル」

https://www.youtube.com/channel/UCs67p0ZBo75nhdRwJNSkzjA

Twitter

https://twitter.com/ubatoshiko

 

 

 

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