東京都・荒川区に位置する税理士法人オーケーパートナー。創業は、昭和16年、今年で80周年を迎える老舗の会計事務所だ。ご紹介する実力派会計人は、3代目・代表の大久保俊治氏。税理士一家の次男として生まれ、金融機関を経て同法人の代表を務めており、現在はSNSを駆使し、MAS監査のブランディングなどにも力を入れている。地域密着を大事にしながらもM&Aなどを通じて、新しい価値を創出している同法人の事業承継、魅力と今後の展望に迫ります。(取材・撮影:レックスアドバイザーズ 村松)
金融機関、会計事務所での経験を経て見えてきたこと
税理士を志したきっかけを教えて下さい。
大久保:元々、この町屋の大久保会計事務所は私の父の兄、伯父がつくった会計事務所でした。父と母も所属をしていたのですがその後独立して、湯島の方に事務所を構えました。湯島の事務所は今も、うちの母と兄がやっています。現在の町屋、伯父がやっていた大久保会計事務所は、伯父が平成4年に病気で倒れてしまったので父が町屋と湯島の両方を兼ねるようになりました。このように税理士が家業でした。私自身は大学では商学部でしたが、ずっと続けて打ち込んでいた運動を怪我でやめることとなったことをきっかけに、税理士試験の勉強を始め、在学中に2科目取りました。
卒業時点では、世の中のことを理解できるようになりたいと思って、さまざまな業種の融資先がある千葉銀行を選びました。仕事はやりがいもありましたが、当時私は融資管理の部署におり、ちょうどバブルが弾けた頃だったので督促して回収する仕事が多くなっていました。当然お客さまから喜ばれる仕事でもありません。
税理士の勉強は続けていて、1科目ずつ受けて3年目に5科目揃いました。ちょうど資格を取った頃に結婚をしたり、私の父が大きな手術をして事務所に出られなかった時期だったりしたことも重なり、銀行を4年で退職して大久保会計事務所に入りました。
実際に、銀行から転職してみて、いかがでしたか?
大久保:銀行員として、税理士として、両方とも中小企業を相手に仕事をしていますが、税理士業界に転職した当初はお客様との距離感が全く違うことに驚きました。銀行は融資をする立場ですから、お客様はいい情報しか言いません。私が銀行にいた平成7年から10年は、景気が悪く中小企業がたくさん倒産していた時期。毎月手形の割引に来ていたお客様がある日突然来なくなって、当座の資金がマイナスになって銀行との取引停止処分になってしまったと。つまり倒産することは銀行には事前に言わなかったわけです。破産費用を集めて、手形割引で倒産費用に充てられたこともありました。このような背景もあり最終的にパートナーとは呼べない関係になってしまうことも多かったのです。
一方、会計事務所ですと、お客様は領収書から何から全て見せてくれます。会社の状態もつぶさに分かりますし、家族同然の近さでお客様に対応できるわけです。銀行員の自分だったら見せてもらえなかったことも税理士なら見せてもらえることがありがたかったですし、その分責任の重さも感じました。会社の情報がほとんど見られる立場ですから。その会社が正常に発展していくためのサポートができるのは、会社全体の状況を人間関係も把握している会計事務所しかありません。それもあって、現在の事務所の理念を、最高のパートナーであり続けます、としています。その会社にとって最も良い道を示して、一緒に伴走できるのは我々だけだという想いからです。

顧客に対して心がけていらっしゃることなどはありますか。
大久保:システマチックにはやっていません。訪問してコミュニケーションをしっかり取っています。その中でお客様のお困りごとをキャッチしたり、補助金・助成金の情報もご提供しています。だから採用に関してもお客様のことを思って仕事ができる人であるかをとても重視しています。
過去は何ができるかで採用をしていたのですが、そうすると事務所内での人間関係が上手くいかないこともあって。だから経験やスキルよりも、人柄としてお客様のことを考えられるとか、キチンと挨拶ができて感じがいいとか、そのような部分を大事にしています。お客様から相談したいと思える人が揃っています。
創業80年。事務所の事業承継にも秘訣あり
現在、長いお付き合いのお客様でも税理士の変更をされる方も増えてきているようです。長いお付き合いがきちんと継続できているよう秘訣は何でしょうか。
大久保:そうですね。事業承継が上手くできているということだと思います。引き継ぐまでに12年ほど一緒に働いて、それまでどういうカラーで事務所がやってきたかをしっかりと引き継いでいます。私が引き継ぐまでに50年ほどやっていた先生のファンの方もいるわけですから、そのファンの方を裏切らないようにやっていきたいと思っています。元々の先生のやってきた、時間に関係なく困っているお客様へ手を差し伸べるという路線を大事にしてきました。長くお付き合いいただくことが、当事務所の収益に繋がっているからです。中には損して得取れといった場合もありますが、そうやって信頼を勝ち得てきました。
毎年10月には先代の口癖だった「ナントまあ~」にちなんで「ナントまあ~セミナー」を開催しています。普段からこのお客様とこのお客様をマッチングしたいなと思っている場合などもあるためお客様への情報発信と、お客様同士の交流のためにこのような場を設けています。セミナーの前半は講師の方をお招きして聞いていただいて、後半は懇親会で立食パーティ。去年はコロナの影響で開催が出来ていませんが、例えばSNSを使ってコミュニティ化するなど、時代に合わせて発展させていきたいと思っています。
また、当法人は徐々に新しいものを取り入れながら、変わってきました。電子申告やクラウドサーバーにも対応しているのでテレワークにも対応することができました。
電子申告やクラウドサーバーなど、歴史のある事務所ですと、変化にはなかなか対応できない場合もあるようです。
大久保:最初は慣れたやり方が一番楽ですから変化に戸惑う声もありました。しかし税務署からの要請もありますし、郵送や紙で製本してお客様から印鑑を貰う手間もありますし、お互いに手間ばかりになってしまいます。このような手間に時間を掛けるならお客様に向かう時間を増やそうと考えて新しいものを取り入れています。お客様側も印鑑や署名が減るだけなので、抵抗なく受け入れていただいています。

MAS監査など新しいサービスを通じて、会社の長期的な存続を
新たな取り組みもされているとのことでしたが、現在力を入れていらっしゃることは何でしょうか。
大久保:現在MAS監査に力を入れています。税理士の仕事は、税金の計算だけではありません。中小企業にとって、顧問料を払っている相手は税理士だけ、という場合も多いです。だから存続していく会社になるようサポートするのも税理士の役目だと思っています。
そのためには計画を作って、今年、そして今月何をするべきかを考えて、お客様の理想の会社に近付けていく。会計事務所は社会のインフラであるという言葉がありますが、その通りです。人間も健康診断があって、数値が悪かったら食生活や運動についてのアドバイスがあるように、会社の決算書も数値が悪かったら継続してサポートをしていくのが毎月顧問料をいただく意味なのだと思います。町のかかりつけ医的な役割ですね。
今後の展望-付加価値をつけ顧客の満足度を上げていく
大久保:当法人は、業務委託で不動産の専門、保険の専門、MASの専門の方と連携していて、当事務所を通して気軽に相談できるようにしています。
また、司法書士さんと遺言についてお客様にご案内できるような体制も整えています。社長のこれまでの考えを知っている我々が最後までしっかりとサポートをさせていただきます。
税務申告業務しか扱っていないと、値段を下げることでしか魅力を打ち出せません。それよりも経営に関する悩み、個人に関する悩みを解決できる税理士法人になることが今後は重要になっていくと思います。
また、現在は町屋と柏に事務所があり、平成29年から税理士法人化してオーケーパートナーとしました。税理士法人化して支店を出せるようになったので、働いているメンバーにとっても、税理士の資格を取ったあとも独立か事務所で働くかの二択ではなく、支店長のような立場で半分独立した形で働くという第三の選択肢ができました。
これからも、お客様と所員にとってより良い組織作りをしていきたいです。
【編集後記】
創業80年。お客様の役に立ちたいという共通の思いをベースに社内外でしっかりとコミュニケーションをとっていることや、事業承継においても先代からの思いのバトンをつなぎつつ新たなものも取り入れていることが安定的な発展につながっているのだと感じました。大久保先生、ありがとうございました!

税理士法人オーケーパートナー
株式会社オーケーサポート21
●創業
昭和16年10月
●所在地
町屋オフィス 東京都荒川区町屋8-8-7大久保ビル
柏オフィス 千葉県柏市中央1-4-16-2 大久保ビル3F
●理念
私たちは
最高のパートナーで
あり続けます
●企業URL