コロナ禍での資金繰り悪化で、納税が厳しい事業者も少なくありません。国税等の納税に関しては、一時的に納税を猶予してもらえたり、分割で納税できることもあります。そこで、元国税徴収官の経験から、無理のない納税ができるようにポイントをまとめました。
平成26年度税制改正により、国税通則法及び国税徴収法が改正され、これまでの「職権型」の換価の猶予制度に加え、「申請型」の換価の猶予が併設されました。
それに伴い、国税庁では、平成27年3月に事務運営指針「納税の猶予等の取扱要領の制定について」を発遣しました。
その基本的な考え方によりますと、「納税者の個々の実情に即した適切な措置を講ずることにより、納税者との信頼関係を醸成し、税務行政の適正かつ円滑な運営を図ることを目的とする」とあります。
さらに、昨年からの新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方等に向けて、令和2年4月に「国税の納税の猶予制度FAQ」で国税の猶予制度の基本的な取扱いを示しています。
本編では、この事務運営指針及びFAQと、国税庁から令和2年3月に出された「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」等を参考にして、中小企業や個人事業主の方が国税の猶予制度を利用する場合の疑問や猶予の受け方などを解説していきます。
国税の猶予制度とは、本来納付すべき期限を先延ばしすることで納税者としては期間の利益を得ているのであって、その間の利息(延滞税)は当然に発生します。それをいかに少なく抑えることができるかがポイントになります。
まず、特例猶予の簡単なおさらいをしましょう。
特例猶予は、新型コロナ税特法により創設されたもので、無担保かつ延滞税なしで1年間納税が猶予される制度で、その対象は、令和2年2月1日から同3年2月1日までに納期限が到来する国税となっています。従いましてこれから納期限が到来する国税については特例猶予の申請はできません。
ただし、申請できなかったことについて、やむを得ない理由があると認められる場合には特例猶予を受けることが出来る場合もありますので、先ずは所轄の税務署徴収担当者に「納税者の個々の実情」を正直に相談してみてください。