今回ご紹介するのは、税理士・畠真一氏。卒業後は都内の会計事務所や大手税理士法人にて従事後、直近は金融機関にて富裕層顧客向けに事業承継・相続対策のコンサルティングサービスを提供してきた実力派会計人だ。大学在学中から税理士を目指し30歳のときに官報合格をした畠氏だが税理士になるまでに様々な苦悩があったと語る。2022年3月1日、シーズ税理士法人の代表社員に就任をした畠氏の税理士になるまで、そして独立をするまでの道のり、その間にあった心の葛藤について話を伺った。(取材・撮影 レックスアドバイザーズ 市川)

大学では成績優秀、なのに就職先が決まらない…

税理士を目指したきっかけを教えてください。

畠:税理士になると決めたのは高校3年生の頃。私の父は岩手県で会社の経営をしているのですが、とても厳格な人で東京の大学に進学するのも簡単には許してくれませんでした。当時高校生だった私は、どうしたら東京に行くことを許してもらえるかと考えたときに、咄嗟に出た言葉が「公認会計士か税理士になりたいから。」

経営をしていた父は、それならと東京の大学に進学を許可してくれました。

最終的に、税法という専門性の高さを身に着けることへの憧れ、そして様々な規模の経営者に寄り添えるほうが自分に向いているだろうと思い、税理士を目指すことにします。大学では入学早々に簿記の勉強に着手し、2年生の秋から税理士試験の勉強を頑張りました。しかし、父から「大学の単位をひとつでも落としたら岩手県に強制送還」と言われていたので、絶対に単位を落とさないように大学の勉強にも力を入れていました。結果、大学は単位を一つも落とすことなく良い成績で卒業できましたが、就職先はどこにも決まっていないという結末を迎えます。

大学の試験も頑張らなくては…とにかく単位をひとつも落とさないことに過剰に力を入れすぎ、税理士試験は大学3年生のときに受けた財務諸表論のみ合格し、簿記論は大学3年、4年と受験しましたが2回とも不合格でした。

不合格だったもう一つの大きな理由が、専門学校の講師から“ここの分野は難しいから試験に出たら捨てなさい”というアドバイスを私は周囲より難しい問題が解けたということを示したく、試験当日も難易度の高い問題に時間をかけ、結果取れる問題に手を付けることができなかったことが挙げられます。

今思えば、父を説得し卒業できるレベルの単位を修得した段階で税理士試験に切り替えるべきでした。

また税理士試験では、どのように戦略を立てれば、合格できると言われている上位2割のラインに入れるのかを考え、自分の立ち位置を把握した上で、限られた時間を有効に活用すべきでした。

頑張る方向性を間違えた結果、二兎を追う者は一兎をも得ずとなりました。その後、就職活動する時期になりましたが、当時は氷河期で買い手市場だったこともあり、大手税理士法人に入るには3科目以上合格していることが必須のところが多かったです。そのため、合格科目の少ない私は卒業後の8月の試験終了後、勉強を続けながら、アルバイト生活をすることにしました。

友人たちは豪華な食事会をする一方、月の手取り14万円で一人暮らしをする日々

2011年10月。記帳代行のアウトソーシングを行っている会社に入社をされます。
畠:
8月の試験終了後に入社しました。ここでは週5日、時給1千円ぐらいで朝から晩までひたすら会計ソフトを使い入力をしていました。東京は家賃が高いので、生活をするだけでもやっとで、食事を買うのもスーパーでどっちのお弁当が、腹持ちがよく、かつ安いかで食べるものを決めていました。

仕事があるだけ有難い時代でしたが、友人は皆、複数科目の合格をしBig4と言われる大手税理士法人に就職をし、私だけがアルバイト生活。SNSを開けば友人たちが、ボーナスで買ったものや、新しい環境でできた同期と楽しそうに良いレストランで飲み会をしている写真がアップされていて、自分が、みじめでやるせない気持ちになりました。

絶対に、税理士試験に合格し、Big4に行くんだ。そう心に誓い勉強を続けました。

24歳の頃、前年に3回目にして簿記論に合格したこともあり、町の会計事務所に正社員として転職をしました。中小企業や個人事業主の顧客を20社程担当し、記帳代行から、巡回まで一通りの経験をしました。今思えば、経営者と接することができる貴重な機会でしたが、この頃もまだ、もっと大きな仕事をしたいという気持ちが強く、仕事内容に満足はしていませんでした。

2年間ほど勉強と仕事を続けながら法人税法に合格することができ、2014年9月にEY税理士法人(以下、EY)から内定をもらい転職しました。

念願かなってのBig4へ入所されます。どのような仕事をされていましたか。

畠:EYでの3年間は不動産金融の部署に所属し、主には日系・外資系のアセットマネジメント会社が運営する不動産投資ファンド(J-REITスキームやTMKスキーム、GK-TKスキーム等)に対してファンド組成時の税務コンサルティングから組成後の税務コンプライアンス業務まで一気通貫の税務サービスに従事しておりました。内定が出た時には事業会社の税務をすると思っていたのに、入ってみたら全く知らない分野。その年の8月まで町の会計事務所で領収書の整理をしていたのに、9月になったらいきなりグローバルな世界です。それまで聞いたこともない単語が出る中で、必死に勉強し仕事しました。ずっと欲しかった同期もできましたが、同期に負けないようにとにかく仕事を頑張りました。

入社して2年が経過した28歳の秋、シニアスタッフに昇格できたのと、固定資産税に合格し官報合格が見えてきたこともあり、この先の税理士人生について考えてみました。今の仕事はとても壮大で難易度も高いし面白い。しかし税理士のキャリアとして考えると、範囲が限定的だと感じました。これから税理士として生きていくなら、この年齢から分野を限定して生きていくのは早いかな、と。そう思ってデロイト トーマツ税理士法人(以下、トーマツ)で働く友人に相談したところ、友人は金融部にいながら金融機関だけでなく事業会社の申告も、個人の申告もするとのこと。自分の世界を広げたいという気持ちでトーマツへ移ることにしました。2018年1月のことです。

トーマツでは優秀な方が多く驚きましたが、この頃になると、誰にも負けたくないという気持ちはありませんでした。それまでEYでやってきた経験があるし、そこで培ってきた専門性をここで評価してもらえるようになりました。人と自分を比べるのをやめ、本当の意味で自分がどんな人間、会計人なのかを見つめなおすことができたのです。長年取り組んできた税理士試験も最後の一科目に選択した消費税法に合格し、晴れて官報合格、税理士登録を果たしました。

特定の分野だけに特化してしまうのが嫌でトーマツに移ったわけですが、結果的には自分の強みといえる分野があったことで自信に繋がりました。そして、ここでシーズ税理士法人を一緒に作った3人と出逢います。

泥臭く取り組んでいる姿を必ず見てくれている人はいるー畠氏の展望

その後、2021年1月に金融機関に転職をされます。

畠:トーマツでは仕事も刺激的で、2019年の10月にマネージャーに昇格もできました。そのあとのキャリアといえばパートナーか独立です。改めて、自分のキャリアについて考えました。これまでは、上場企業やグローバル企業を相手に高度な税務がしたいと思っていました。

しかし、税理士になろうと思ったきっかけに立ち返ると、経営者に寄り添う親身な税理士になりたかったのです。もう一つ浮かんだのは父の顔。高齢化社会で事業承継が盛んになっていますが、地方の方が後継者不足は深刻です。事業承継を学ぶならコンサル、事業承継に強い会計事務所、金融機関と選択肢がありますが、全国に支社がある銀行ならより広い範囲で社会貢献となる事業承継に関われる。そして将来的に独立する際にも、銀行マンの視点を知っておくことはプラスになるだろう。そう思って、銀行へ転職をしました。

ここでは、事業承継で本当に大切にしなければならないのは何かを知ることができました。それはあるお客様からのご相談でした。「社内承継」をしたいが継ぎたいと思っている社員が3人いる。このような場合、税理士をはじめ知識のある方は、テクニカルに特化した様々な方策を立てるのが当然と思います。私もそのような提案をし続けました。しかしなぜかお客様に刺さらない。のれんに腕押しといった感覚でした。

そこで、とてもシンプルで分かりやすい、そして3人が揉めないような事業承継の提案をしました。すると、お客様は本当に喜んでくださり顧問税理士がいるにもかかわらず銀行員である私にサポートをお願いしたいと仰ったのです。

このときに、このお客様が求めているのは税金を安くすることではなかったと気づきました。ご自身が去ったあとに、後継者たちが揉めないようにしたい。税金の対策よりも、お客様の思いやりの気持ちを前提にした提案をすべきだったのです。この一件を通じ事業承継をやっていく上で、お客様の気持ちにどこまで寄り添えるかが大事なのだと学びました。

そしてもうひとつのターニングポイントを迎えます。
銀行に転職して4カ月くらいの頃に、トーマツ時代の同僚3人から独立しないかと誘われました。さすがに転職したばかりでしたが、話を聞くとこれまでの中小企業での経験も評価してくれていました。これまでのキャリアすべてが役に立つと声をかけてくれたのです。何よりも「一緒にやろうよ」の声掛けが本当に嬉しかったですね。熱心にプレゼンまでしてくれる姿を見て、心から尊敬できる彼らと今後泣いて笑って苦楽を共にしていくには最初から一緒にやるほかないと思い、一大決心。今いる銀行には申し訳ないのですが、退職して独立するということを伝えました。銀行で一緒に仕事をした方々にも応援してもらえて本当に感謝の気持ちでいっぱいになりました。

こうして2022年3月1日、シーズ税理士法人の代表社員に就任することになりました。

これまでを振り返ると、いつも上へ上へと背伸びしていましたが、20代のうちに経験した記帳代行の仕事も、中小企業の税務の仕事もあの頃の経験があったからこそ、今があるんだと思えるようになりました。

これも声をかけてくれた3人と出逢ったからです。どんなに取り組む姿勢が泥臭いものであっても、一生懸命頑張っていれば必ずその姿を見てくれていて手を差し伸べ、評価をしてくれる人はいるのだと教えてもらいました。

これから4人で始める新しい挑戦は、楽しいことばかりではないかもしれません。それでも、関わりを持つ全ての人たちの幸せ(S)を追求するため、一つ一つの縁(E)を大事にする、出会う人に愛情(A)を持って接する、全ての仕事に誠実(S)に取り組む、それらを通じて信頼(S)される人になる。

それが私たちシーズ税理士法人の理念です。どんなことがあっても、この気持ちを大事に突き進んでいきたいと思います。

 

【編集後記】

様々な経験を通じ、成長をし続けた畠先生。これからも新しい挑戦をし続けるのですね。この度は、独立おめでとうございます!

シーズ税理士法人/SEASS Tax Co.

●設立

2021年10月

●所在地

東京都港区三田3丁目4―3

●理念

サービスを通じお客様・従業員、関わる人すべての幸せ(S)、全ての縁(E)を大事にする、出会う人に愛情(A)を持って接する、全ての仕事に誠実(S)に取り組む、それらを通じて信頼(S)される人になる。

●会社HP

https://www.seass-tax.com/

 


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