今回ご紹介するのは公認会計士・宮城翔平氏。新卒で有限責任監査法人トーマツに入所をし、トータルサービス事業部に所属。多くのIPO関連の監査、アドバイザリー業務を提供する一方、グローバルに展開する企業の法定監査も担当。投資銀行に出向後はM&Aアドバイザリーのデスク業務を行う。帰任後は、品質管理本部テクニカルセンターを兼務し、多くのM&Aや組織内再編に纏わる会計相談業務に携わる実力派会計人だ。元々は作曲家を目指していたと語る宮城氏だが、IPO監査と作曲は似ている部分もあると語る。宮城氏のIPOへの想い、そして音楽との共通点に迫ります。

作曲家から公認会計士を目指した理由

公認会計士を目指したきっかけを教えて下さい。

宮城:母がピアノの先生をしていたこともあり、音楽は私にとっていつも身近な存在でした。幼少期からポップス、クラシックをはじめ、ロックや洋楽など様々なジャンルの曲を聞いていました。私自身も、母にピアノを習っていたことに加え、学生時代は吹奏楽部やオーケストラ部に入りながら、中学3年生の頃から友人たちとバンドを組み始めました。

学校には、いわゆる軽音部がなかったので、いつ練習をして、どこで、どんなライブを行うのか等を、全て自分たちで決めながら活動をしていました。また、オリジナル楽曲の作曲も行っておりバンドの大会に出場した際には横浜アリーナで演奏したこともありました。

自分で作曲をし、メンバーが担当する楽器で各パートを奏で、一つの音楽にしていく。その一から創り上げた音楽を目の前にいるお客さんに聞いてもらい、楽しんでもらう。一からなにかを創り出すことのやりがいや楽しさを、10代の頃の経験を通じて感じるようになります。

いつしか将来は、映画・ドラマ・ゲーム音楽などを手掛ける作曲家を目指して音大に行きたいと思うようになりました。しかし音楽の道は狭き門。家族をはじめ周囲から反対をされました。

結局、大学もエスカレーター式でそのまま進学をしますが、本心は音楽の道に進むことだったので、大学入学後、特にやりたいこともなくなってしまって…。何かに打ち込もうと考えた時に公認会計士の資格取得を考えるようになりました。

音楽とはかけ離れた職業に見えますが、これも将来音楽活動をしたいがために選んだチャレンジです。いざ音楽活動を始めようとしたときに、自由にできるのではないかと考え、元々数字を見るのは嫌いではなかったことも背中を押し、大学1年の6月から予備校に通い、バンド活動もいったん休止して勉強を開始しました。

その後、2年ほど会計士試験の勉強をし、大学3年生のときに合格をされます。

宮城:通常は、公認会計士試験の合格発表後にすぐに就職活動を行いますが、私は大学3年生のときに合格できたこともあったので、その年には就職活動をせず、補習所で既に監査法人に勤めている先輩の話を聞き、どこの監査法人に行くべきか情報収集をしていました。

リーマンショックの影響で不況だったこともあり、どうしてすぐに就活をしないのかと周囲から心配もされましたが、仕事は自分が本当に望み、納得するところに進もうと考えての行動でした。

そのときに知ったのがIPO監査です。監査人の立場でありながらも、クライアントが上場をするという目標に向かって、会社の財務諸表をチェックしながら、もっと良い会社になれるポイントは無いかということを考えて、指導的機能を発揮する局面も多くあるとのことで、自分が関わることで新しい価値を提供できる。まさに”0から1を生み出す”フェーズに伴走ができると感じました。

その後、いくつかこういった業務をしている監査法人のうち、ご縁あり有限責任監査法人トーマツ(以下、トーマツ)のトータルサービス部門に入所をすることになります。

バンカー達との出逢いで芽生えた新たな価値観

ここでは、どのようなお仕事をされていましたか。

宮城:トーマツでは2019年8月までの約9年間勤務をしました。はじめはIPO監査を中心に、入所7年目には日系の投資銀行へ1年間ほど出向をし、インハウスの公認会計士としてM&Aに関するスキームの相談や構築のサポートを行ったり、企業価値算定を行うに当たってどのように財務諸表を読むべきか等のサポートをしていました。横では弁護士の先生が法務面のサポートも行っており、非常に専門的な議論が活発に行われる環境にありました。

今までは新卒で監査法人にいたので、良くも悪くも社内のことしか知らない。投資銀行内の非常に優秀なバンカー達が、日々切磋琢磨している姿には感銘を受けました。

また、監査法人の契約は、目の前の監査の仕事を順調に行っていれば、基本的には自動的に契約更新となります。責任も大きな仕事ではありますが、一般的にはこれだけ高い契約金額でありながら、何事もなければ自動更新されていくような契約はありません。

一方、バンカー達は、1個の契約が終わったら、次の契約を自ら開拓しなければならない環境化で仕事をしている。当然、どうしたら契約に繋がるかといった意識が高い。“0から1を生み出す”にはどうしたらいいのかということへの力の入れ方や仕事に対するモチベーションにも感化されました。

こうして1年間強の出向期間が終了し、監査法人に戻ります。その後は、マネージャーとして通常の監査業務と、品質管理部門の兼務もします。連結会計、組織再編会計などM&Aに直結するような会計の相談を、監査チームから受けるという業務を1年ほど行っていました。

しかし、時代は少し変わってきており、BIG4の監査法人がグローバル化を更に強めている状況下で、各法人はIPO監査の対応件数を絞り始めていました。

私が元々やりたかったのは、これからIPOをしていこうとする成長過程にある企業と、監査人という立場ではあるけれども一緒に成長していける業務です。監査法人に残るなら大企業の監査をしっかり行っていくことが求められていると感じ、退職を決意しました。

IPO監査に特化をし、企業に“伴奏”し夢を叶える

その後、現在のパートナーズSG監査法人にご入所されます。

宮城:トーマツを退所後もIPO監査に携わりたいという気持ちはありました。しかし、実はIPOを目指す企業の監査ができる監査法人の立ち上げはハードルが高く、証券会社や証券取引所とのコミュニケーションを行っていく以外にも、上場会社の監査の実績を作らなくてはいけないルールがあるのです。

今の自分の力では中々難しいと思い、監査法人の立ち上げは踏みとどまっていました。そのような中、現在、当監査法人の代表であり、前職時代の上司であった高橋がトーマツを退職し、別の監査法人で第二創業のような形でIPO監査チームを作っていくということを教えてもらいます。これは自分のやりたいことができると思い、2020年の8月に社員として参画をします。

現在、入所して1年半弱ですが、IPO監査チームは組織体制を含めて何もないところから整備をしてきました。当監査法人自体も“0から1を生み出す”というフェーズですので、私自身やりがいを感じています。

これまでのキャリアを振り返ると、上場企業の監査はもちろん、社会的貢献度が非常に高いという意識で行っていますが、IPO監査は会社がこれから上場をするために管理体制を作っている最中での監査となるので、一緒に成長していく感覚を味わうことができます。

そして、IPO監査は上場をするという目標に向かって、監査法人が企業に伴走をする。監査の中で、一つの夢に向かって一緒に頑張っていくものは、IPO監査以外無いと思います。

実際に、自分が担当しているクライアントが上場をして、東証のセレモニーに一緒に行ったときには泣きそうになるほど感動しました。

もちろん企業はIPOをして終わりではありません。上場した後もさらなる成長を続けるために、様々なチャレンジを行っていきます、上場の鐘を鳴らした後が、パブリックカンパニーとしての0からのスタートとなります。

私は、作曲家になるための足がかりとして“公認会計士”の資格を取得しましたが、この資格は自分が目指すときに思っていた以上に、仕事の幅もありキャリアの選択肢が多いです。

音楽とビジネスを掛け合わせることもできるし、自分で自由自在に“人生の楽譜”を創ることができるのがこの資格の魅力だと思います。

私自身、公認会計士として上場を目指す企業の夢を叶え、作曲家としても誰かを感動させられるよう私自身の夢も叶えていきたいと思っています。

 

【編集後記】

作曲家になるために公認会計士を目指したという珍しいキャリアでしたが、“0から1を生み出す”という意味では、共通するものがあると感じました。宮城先生、ありがとうございました。

パートナーズSG監査法人

●設立

2013年

●所在地

東京都中央区日本橋2-2-21 日本橋二丁目ビル4階

●理念

私達は2013年に設立された法人です。私達はこれまで会社法監査などの法定監査を中心に行って参りました。今後は、昨今の株式上場(IPO)のニーズを踏まえ、経済社会を支える一員として、上場企業監査及び上場準備監査(IPO監査)を行って参ります。

すべてのクライアントを大切にし、監査の内容をご理解・ご納得して頂けるよう、丁寧に、努力を続けて参ります。皆様から永く信頼して頂けることこそが、監査制度の発展への寄与につながるものと確信しております。

そのためには、パートナーズSG監査法人の社員・職員(非常勤含)が最大限に能力を発揮することが不可欠と考えます。しっかりと人間力を鍛え、惜しまずに業務を行える環境を整えて参ります。

強い組織から生まれる強固な信頼、それが与えてくれる持続的な成長、正しい循環により市場を支えていく私達、パートナーズSG監査法人にどうぞご期待ください。

●会社HP

https://partners-sg.jp/

 

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