今回ご紹介するのは税理士・出川裕基氏。2009年に国内大手税理士法人に入社。同所では最年少マネージャー職となり、相続税申告、事業承継、組織再編及び地主の相続対策など数百件以上の資産税案件に従事。現在は東京都・豊島区にある税理士法人アイユーコンサルティングの共同経営者として、開業8年ほどで7拠点・100名程のスタッフを抱えるまでに法人を成長させた若手・実力派会計人だ。そんな出川氏も、元々は内向的な性格で得意なことはなかったと語る。今回は“カッコよくありたかった”からどんなことでも頑張れたと話す出川氏のこれまでのキャリア、そして今後の展望に迫ります。(取材・撮影:レックスアドバイザーズ 市川)

日焼けサロンの中でも税理士試験の勉強をした大学時代

税理士を目指したきっかけについて教えてください。

出川:埼玉県川越市出身で、幼少期は特に得意なものもなく、物静かで内気な性格でした。小さな転機は、中学に入ったばかりの頃。1学期の試験の成績が良かったらMDプレイヤーを買ってやると親に言われ、頑張ったら10番以内に入れたのです。親にも褒められ、周囲にも注目され嬉しかったですね。理想の自分になれると周囲の扱いが変わることをここで学びましたし、カッコよくなりたいという思いも強くなりました。その勢いでテニス部に入り練習を頑張ると女子からも注目を浴び、モテました(笑)。

ただ“カッコよく”なりたいという気持ちが強くなりすぎて、金髪にしたり、次第に勉強そっちのけで地元の友人と遊びに夢中になったり…。こうして高校にも進学しましたが第一志望でなかったこともあり、勉強には身が入りませんでした。あまり学校にも通わず友達と遊ぶ日々…、このままではまずいと思って大学入試半年前から勉強を開始。中学のときに集中すれば結果が出せるという成功体験もあったので、短期決戦で法政大学(東京都・私立大学)に入学することができました。

その当時、時代はギャルブーム。私も髪は限界まで盛り、日焼けサロンにも通い、見た目はまさにギャル男。

そんな私が税理士という仕事に興味を持ったのは本当に単純な理由です。大学3年生のときの友人から、一緒に税理士試験を目指さないかと言われたからでした。調べてみると初任給も年収400万円くらいと悪くなく、稼げる男は”カッコいい”と思っていた当時の自分には魅力的な職業でした。3年生で簿記論から勉強を開始。簿記論は学んでみるとパズルのようで面白いなと思いました。合格し自分に向いているんだなと感じたので、4年生で消費税と財務諸表論。21、22歳で3科目に合格することができました。

当時は、専門学校にも通い所謂ダブルスクールをしていましたが、周囲には私のようなギャル男はいません(笑)。でもそんなギャル男が、成績が張り出されてみたらトップ…となったら”カッコいい”と思ってすごく頑張りました。遊びも捨てられないし、遊びのためにはアルバイトも必要。でも税理士試験に受からないとカッコ悪いと思っていたので、その頃は遊びとアルバイトの合間に、集中して勉強に取り組みました。睡眠時間は2時間くらい。日焼けサロンのマシーンの中でも勉強していましたね(笑)。

なぜ、そこまで頑張れたのか…見た目も中身もそうなのですが、自分が求める理想の姿を手に入れたかった。そして、目標を達成することもまた”カッコいい”自分になれると思っていました。

達成感の先にいる理想の自分を目指してとにかく必死でした。

27歳で最年少マネージャーに。達成感の先にあったもの

その後、税理士法人山田&パートナーズに入所されます。

出川:2009年の就職時には税理士法人山田&パートナーズを含めて3社受け、山田会長の講演で『中小企業を救うのは税理士の役割だ』という言葉に惹かれて、入所を決めました。

入所時に当時の部長と決めたのが「27歳でマネージャーになる」ということ。27歳というのは当時最年少だったこともあり、ここでもやはり記録を更新したら”カッコいい”と思い、決めたことは絶対に達成をしようととにかく仕事を頑張りました。

弊所の代表パートナーである岩永と出会ったのは24歳の頃。忙しい毎日でしたが、24歳で組織再編のプロジェクトリーダーを任せてもらうなど若手にもチャンスをくれるような社風でした。

この頃、福岡事務所の立ち上げの話があり、立ち上げメンバーに選出してもらい、数カ月間、岩永のいる福岡事務所に行くことに。

岩永はフランクでゆったりとした性格。私にない要素に惹かれる部分もあり、あっという間に仲良くなりました。そして福岡は人員が少ないため、経験が浅くても自分がプロジェクトリーダーとなるしかありません。でもやってみたら案外できると思えたことは、自信に繋がりました。やはり、大きなミッションを達成し、顧客に喜ばれるのはやりがいを感じましたね。

そして、4年間でM&Aや上場会社顧問、医療・公益案件にも携わり、公言通り27歳で当時の最年少マネージャーに昇格。入所時からの目標を叶えることができました。(ちなみに、すぐ抜かれました。笑)

 

しかし、目標としていた自分になれて、達成感の先にあったものは、“次は何をしよう”という迷いでした。

 

会社や周囲から評価をされ、誰も成し遂げていない最年少でマネージャーという役職に就くことだけに集中して、マネージャーで何を実現したいのかを考えていなかったのです。
この時に、自分が“カッコよく”なることを追い求め、ベクトルが常に”ワタシ”にしか向いていなかったのだと自省しました。
この先、どうしようかと考えていたときに山田会長の『中小企業を救うのは税理士の役割だ』という言葉を思い出しました。

今までも、クライアントが喜んでもらえることにやりがいを感じていましたし、これからは会社からの評価を気にせず、中小企業のお客様を相手ととことん向き合おう、本当の意味で自分の経験を活かし、突き進んでいこう。自分がやりたい仕事をするには、自分がトップになるしかない。

そう決意をし、2年間で後輩たちを育成。29歳のときにすでに開業をしていた岩永と合流し、アイユーコンサルティングをスタートさせました。

“ワタシとあなた”が向かい合い、永続的に続く企業に成長させる

こうして2019年に岩永代表と新しい会計事務所を始めます。

出川:独立当初は富裕層向けのサービスにしようと思っていたのですが、中小企業の社長さん達にお会いしていくうちに、世の中にはベンチャーや若い二代目で頑張っている方々がたくさんいる、自分が知らない世界がまだまだあるということに気が付きました。素晴らしいアイデアや理想があるのに、税金や資金繰りに関する知識がないがゆえに事業をどのように作り上げていくかに悩みを抱えているのもまた事実。夢を叶えるお手伝いをしたいと思うようになりました。

そうはいっても、独立当初の私たちの武器は承継支援であって、成長支援ではありませんでした。企業存続を支えるなら、成長と承継の両輪を支えてこそ。成長を支えていないのに、中小企業を元気にすることはできません。だから今は、成長支援の方にも力を入れています。

会社の経営は山あり谷あり。社長からいろいろな経験をしたお話が聞けるのがとても面白いです。経営者の先輩として話が聞けるわけですから、とても勉強になります。

ただ、そういったさまざまな経験を乗り越えてきたからこそ、事業承継のバトンタッチができない社長も多いのです。特に親子である場合、軋轢も生まれがちです。後継者の考えが時代に合っている場合もありますが、お互いが歩み寄らないと企業は存続できません。その両者の話を聞いて、落としどころを探るのがこの仕事の醍醐味です。

事業承継が上手くいくケースは、先代が手を引けるかどうかがポイント。株式の承継が税理士の本業ではありますが、それよりも親子間の話し合いを取り持つ方が難しい。

経営者にとって事業承継は引き継ぐだけで、時間もお金も掛かるのに企業の価値は上がらない、面白くないことかもしれません。とはいえ、対策をきちんとしておけば、出ていく税金を数千万円、数億円で抑えられる可能性があります。結果的に企業の収益を伸ばして会社に貯まるお金を伸ばしていくことと一緒なのです。株価を下げるためにいろいろな対策をすると、企業の現金がなくなったり借り入れが増えてしまったり、会社がボロボロになるケースもあります。株価ゼロ、相続税ゼロでも会社借金だらけだったら、何のために事業承継をしたのか分かりません。だから事業承継の本来の目的である「企業の存続」に立ち返ってもらうようにしています。

アイユーコンサルティングの社名の由来は、「ワタシとあなた」。

お客様と私たちのご縁そして、お客様と次の世代という意味もあります。
スタートアップの企業も、50年後、今度は事業承継のご相談をいただけるようにしていきたいです。

  

【編集後記】

税理士の仕事のみならず経営者として新しいことをどんどんやっていきたいと語っていた出川先生!これから益々勢いを増して伸びていかれるのですね。出川先生、ありがとうございました。

アイユーコンサルティンググループ

●創業
2013年

●所在地

■東京事務所

東京都豊島区南池袋2-28-14 大和証券池袋ビル3F

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福岡県福岡市博多区博多駅東2ー10ー16 川辺ビル4F

■北九州事務所

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■広島事務所

広島県広島市中区胡町4-28 胡町ビルディング5F

■佐賀事務所

佐賀県佐賀市兵庫北2-16-13

■株式会社IUCG(埼玉営業所)

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川越菅原ビル5F

■株式会社IUCG(宮城営業所)

宮城県仙台市青葉区上杉1-5-13
Bonds&R 上杉 6-C

●理念

高付加価値サービスの創造・提供

●企業URL

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