第26回は、IPOを目指してCFO(Chief Financial Officer)を選任する際の3つの注意点について解説します。IPOの時期がある程度明確化するとCFOの選任を迫られ、選任に失敗される経営者がいます。選任時は当然として、選任前から参考にして頂ければ幸いです。

IPOを目指している企業は、監査法人や証券会社とコンタクトを取り、ある程度IPOの時期が具体的になった際、上場審査等を鑑みて、CFOを選任するように要求されます。CFOは管理部門を統括し、証券会社や監査法人対応を行い、上場時や上場後の投資家対応をする役割を担う取締役になります。

第25回ではCOOについて述べましたが、COOと異なり、CFOは基本的にIPOを目指す上で必要な役割となるため、多くの会社がCFOを選任することとなります。また、COOは長い期間会社に貢献してきて成長した社員を昇格させる会社もありますが、CFOは一定レベルの高い専門性が必要となることから、社内で育成することは難しいでしょう。したがって、多くの会社において、CFOは社内で昇格させるのではなく、社外から採用することとなります。

「証券会社や監査法人から、ガバナンスの観点からCFOを選任するように言われているから、まずはエグゼクティブエージェントに依頼して話を聞いてみよう。」と安易に進めるのではなく、一旦落ち着いて自身で検討しましょう。CFOをどのような観点で選任するのかについて、注意すべき3点をお伝えします。

1.CFOに求める役割を明確にする

第25回の記事で紹介したCOOの時と同様、CFOも要件を明確にしましょう。

CFOは大きく区分すると、ファイナンス型CFOとガバナンス型CFOに区分することが出来ます。第2回の記事で紹介しましたが、金融機関出身のCFOはファイナンス型CFO、監査法人出身のCFOはガバナンス型CFOに近いイメージです。

どちらが優秀ということはないですが、証券会社や監査法人の担当者と会話すると、IPOを目指すうえでCFOの選任を要求される場合は、ガバナンス型CFOを求められる事が多いです。昨今、ガバナンスに対する意識はとても高くなっているため、IPO準備に際して、適切なガバナンスを構築する観点からも、ファイナンス型CFOよりもガバナンス型CFOが好まれるのでしょう。一方で、経営者はファイナンス型CFOを好む傾向があります。ガバナンス型CFOを守りと考えた場合、ファイナンス型CFOは攻めと考えられ、経営者は攻めを好まれる方が多いからだと考えています。

当然、ファイナンス型CFOの中にはガバナンス構築も得意な方もおり、一方で、ガバナンス型CFOの中にも資金調達や交渉ごとが得意な方もいます。このような方々は市場価値が高いので報酬も高額になりますが、そもそも簡単に出会える方ではありません。時間とコストを十分にかけられるのであれば、何とか探しだして就任してもらいましょう。

2.社内の体制を確認する

CFOは専門性も高くベンチャー企業が社内で育成することは難しいため、社内から昇格させることは少ないです。したがって、社外から採用することとなります。経営者がファイナンス型CFOを採用していく方針を立てた場合、1点注意する必要があります。それは、ファイナンス型CFOの配下に、ガバナンス構築が得意な方が社内に存在するか否かです。

管理部長クラスに、財務諸表作成、予算作成、内部統制構築、適時開示対応等の業務を対応できる方がいない場合、そのような業務を担当する方を採用することとなります。そのような業務を担当される方は、転職市場でも重宝されているため、非常に採用が難しいです。転職エージェントの方と会話すると、ファイナンス型CFOよりも、上記のような管理部長の方が、最近は採用が難しくなってきているといった話も聞きます。

ファイナンス型CFOの採用に加えて、上記のような管理部長を採用することになる場合、採用にかかる労力も増加しますし、人件費も嵩みます。また、ファイナンス型CFOの役割を資金調達や予算作成等とした場合、管理部長は財務諸表作成、内部統制構築、適時開示対応等の業務を行っていくことになり、やりがいや仕事への納得感を得られず退職されるケースもあります。そういった人材をマネジメントしていく必要があるため、ファイナンス型CFOのマネジメント力にも注意しましょう。