第22回は、IPOを目指して非常勤監査役を専任する際、注意するべき3つの注意点について解説します。IPOを目指す際、常勤監査役と同様に、非常勤監査役の選任に悩まれる経営者が一定数いるため、選任時に参考にして頂ければ幸いです。

IPOを目指している企業は、監査法人や証券会社から一定時期までに監査役会の設置について要求を受けます。第21回でお伝えしたとおり、監査役会の中でも、常勤監査役は重要なポジションとなります。
ただし、常勤監査役に経験豊富で経営・法律・会計に詳しい方が就任されるというケースは稀です。したがって、常勤監査役をサポートする非常勤監査役の役割は一定の割合で重要になります。常勤監査役と共に、監査役会を構成する非常勤監査役を選任するにあたって、注意するべき3点をお伝えします。
1.常勤監査役をサポートできる経験を有している方を選任する
常勤監査役の役割は、取締役である経営者が株主利益に反するようなことを行っていないかを監査する役割ですので専門性が必要です。しかしながら監査に関する専門性に加え、業界やビジネスの理解、法律、そして会計等の知識や経験を全て有している常勤監査役は稀です。そのため、常勤監査役に足りない専門性を、非常勤監査役で補うように選任しましょう。通常のIPO準備を行う会社では、監査役会を構成するために、常勤監査役に非常勤監査役2名を選任することになります。
監査役会の構成で一般的に多いケースが、常勤監査役、弁護士の非常勤監査役、公認会計士の非常勤監査役といった構成です。法務領域を弁護士が担い、IPO準備や会計領域を公認会計士が担うことになります。常勤監査役は弁護士と公認会計士といった専門家と協力しながら監査を推進する事が一般的です。常勤監査役の専門性や性格を鑑みて、常勤監査役と相性の良い、弁護士や公認会計士を選任しましょう。
もちろん、弁護士や公認会計士ではなく、労務に強い社会保険労務士、事業会社で経営経験を積まれた方、そして、内部監査室長経験を有する方等を選任されるケースもあります。社外監査役だからといって、過度に資格に縛られないように注意しましょう。
2.社外監査役として適切に機能する人材を選任する
社外監査役は、社外の専門家から一定の信頼を得られることが重要です。
常勤監査役をサポートする体制として、法務を弁護士が担い、IPO準備や会計を公認会計士が担う体制が一般的です。社外監査役においては、資格は外観的にも一定のレベルは必要にはなりますが、それ以上に、実務経験が豊富であり、事業会社の社外監査役として適切に機能することが重要です。したがって、単に弁護士や公認会計士といった資格を保有する先生を選任すれば良いのではなく、事業会社を理解して、社外監査役として機能する、実務経験豊富な弁護士や公認会計士を選任しましょう。
可能であれば、事業会社でマネジメント経験を有する社外監査役を選任しましょう。特に、事業会社で経営経験を有する社外役員は貴重です。弁護士や公認会計士といったプロフェッショナルの中には、事業会社がどのようにして経営されているのか、また、採用されている社員の水準や、改善する業務にどれほどの工数を要するか等を理解出来ず、先生的な目線で、あるべき論で指摘される方がいらっしゃいます。そのような場合、社長や常勤監査役からの信頼も得られませんし、当然、社外の専門家からの信頼も得られません。
私の経験上、事業会社でマネジメント経験や経営経験を有する弁護士よりも、事業会社でマネジメント経験や経営経験を有する公認会計士の方が多いと感じています。もし、事業会社でマネジメント経験や経営経験を有する社外役員を選任されたいのであれば、事業会社でマネジメント経験を有する公認会計士を探しましょう。