第21回は、IPOを目指して常勤監査役を専任する際、注意するべき3つの注意点について解説します。IPOを目指す際、常勤監査役の選任に悩まれる経営者が一定数いるため、選任時に参考にして頂ければ幸いです。

IPOを目指して監査法人や証券会社とコンタクトを取った際、会社の経理部門の状態を確認された後、役員体制について確認されます。当然、CFOが重要なポジションとなることは大多数の方が理解されていることと思いますが、取締役を監査する立場である常勤監査役も重要なポジションであるという認識も大切です。

常勤監査役が経営者の期待に応えられず短期間で辞任されるケースや、能力が足りず社外の専門家から交代を求められるケースを見てきました。そのようなことが発生した場合、会社に与えるダメージが大きかったことから、常勤監査役を選任するにあたって、注意するべき3点をお伝えします。

1.経営者の良きパートナーとなりうる人材か

常勤監査役の役割は、取締役である経営者が株主利益に反するようなことを行っていないかを監査する役割です。「経営者を監査する役割に徹する。色々と指導してあげる。」といった心構えだけでは信頼は得られませんし、信頼を得られないと情報も適時に入らなくなるので、業務遂行に影響が出てしまいます。当然、経営者を監査する役割ではありますが、「会社の仲間として認められ、信頼されるように行動する」ことが意識出来る方か確認しましょう。

言うまでもなく、経営者から信頼されるために、専門性は必要です。他社で経営者としての経験、取締役CFOの経験等、取締役として執行を経験されている方が、経営を理解していること、経営の能力を有していることから経営者からの信頼を得やすいです。ただし、このような方はなかなか出会えません。もしも出会えたら、報酬を多少上げても選任しましょう。
また、ベンチャー企業は、ヒト・モノ・カネにおいて、充足している企業の方が少ないです。そのような状況で、大企業の水準の統制や、あるべき論で指摘しても、誰も動きません。必要なことは「株主に対する責任を果たしつつも、経営者に寄り添って、会社の状況を踏まえて柔軟に判断した上で行動や発言出来る方」が常勤監査役として信頼を得られる方だと言えます。
もちろん、過去のキャリア、業界の理解、法律、そして会計等の知識や経験は一定必要になります。しかし、それ以上に必要な資質は、経営者の良きパートナーとして、自身が何をすることが貢献につながるのか、自身で考え、行動を続けられる点です。このような資質を有している方は一定数いますので、そういった方を選任しましょう。