第24回は、IPOを目指して社外取締役を選任する際の3つの注意点について解説します。IPOを目指す際に社外取締役の重要度を理解せず、安易に選任される経営者が一定数いるため、選任時は当然として、選任前から参考にして頂ければ幸いです。

IPOを目指している企業は、監査法人や証券会社から一定時期までに社外取締役選任の要求を受けますが、社外取締役は安易に選任することが出来ない重要なポジションです。「証券会社や監査法人から社外取締役を選任するように言われているから、知り合いの経営者や先生に頼もう。」といった安易な考えで選任することは避けましょう。社外取締役をどのような観点で選任するかについて、注意するべき3点をお伝えします。

1.社外の専門家から信頼される人材を選任する

社外取締役を選任する際、能力や経験に関係なく、社長の友人や知人を選任し、実際に機能していないケースがあります。知名度や社会的地位が高い方で、取締役会にすら参加しない名目的な社外取締役も一定数います。そういった社外取締役は、証券会社、監査法人、東京証券取引所等の経験豊富な方からすぐに見破られますし、上場の審査上問題になります。当然、選任された方々にも問題があるケースは多いですが、そういった方々を任命した任命責任は社長にありますので、安易に選任しないようにしましょう。

社外取締役の重要な役割として経営の監督があります。また、経営を担う経営陣、特に社長に対する評価と、それに基づく再任や報酬の決定を行うこと、そして必要な場合には、社長の交代を主導することもあります。社外取締役は会社から独立している存在であるため、社内のしがらみにとらわれない立場で会社の中長期の企業価値向に貢献すべきです。このような役割を理解した行動を取れるような社外取締役であれば、本来期待される社外取締役の責任を果たせますし、結果として社外の専門家からも信頼を得られます。

2.経営経験や専門性を有した人材を選任する

社外取締役は、取締役会に参加して経営陣の一人として経営判断を行うため、その役割を全うするためにも一定の経験や専門性が必要となります。社外取締役に多いのは、他社の代表取締役や取締役、公認会計士、弁護士です。最近では、知名度がある元タレントや、特定分野に長けている大学教授等が就任されるケースもあります。企業価値を高めるために必要な社外取締役の資質は、時代に合わせて変化しているので、強い会社ほど柔軟性があります。

当然、他社の代表取締役や取締役、公認会計士、弁護士等の経験を有さなくとも社外取締役に選任され、その立場での責任を果たし、社外の専門家や投資家に信頼されている方はいます。大事なことは肩書きや資格ではなく、社外取締役として期待される役割を果たすことです。

他社の代表取締役や取締役といっても様々な規模の会社があるので、代表取締役や取締役といった肩書きだけで選任することは避けましょう。また、社外取締役は経営判断を行う必要があるため、公認会計士や弁護士の資格を持つ「先生」ではなく、公認会計士や弁護士の資格を持つ経営経験を有する「経営人材」を選任するようにしましょう。