第25回は、IPOを目指してCOO(Chief Operating Officer)を選任する際の、3つの注意点について解説します。稀にCOOを選任することの重要性を理解せず、安易に選任し失敗される経営者がいるため、選任時は当然として、選任前から参考にして頂ければ幸いです。

本記事ではベンチャー企業を想定しており、会長がいてその次に社長がいる組織ではなく、社長がトップとして存在する組織を前提に解説していきます。
IPOを目指している企業で、社長が会社全体の経営を行っておらず自ら事業の執行を行っている場合、監査法人や証券会社からCOOを選任するように要求を受けることがあります。
COOはナンバー2になることも多いので、IPO如何に関わらず、社外のみでなく社内においても非常に重要なポジションとなります。「証券会社や監査法人から、ガバナンスの観点からCOOを選任するように言われているから、まずはエグゼクティブエージェントに依頼して話を聞いてみよう。」と安易に進めるのではなく、一旦落ち着いて検討しましょう。
COOをどのような観点で選任していくのかについて、注意するべき3点をお伝えします。
1.COOに求める要件を明確にする
COOは最高執行責任者として、CEOが立てた方針を遂行する役割です。COOの一般的な定義は理解していたとしても、会社のステージや状況においてCOOの役割は変わってきますので、会社としてCOOに求める要件を明確にしましょう。要件が定まっていない中で、COOの選任を検討することは出来ません。
COOは最高執行責任者であり、CEOに次ぐ会社のナンバー2になる場合が多いため、スキルや経験以前に、人格的に問題が無いことが最も重要となります。また、社長と密接に関わることになるため、社長との相性も重要です。加えて、会社の事業を理解し、会社、社長そして従業員を尊重し、最高執行責任者として成果を出せるような人材である必要があります。
当然ですが、人格的には素晴らしいが成果を出せない方は、COOに選任しないようにしましょう。「長く勤務してくれている、いい人で自分との相性も良い、社員の信頼も厚い、よってCOOに選任する」といった判断についても慎重になりましょう。成果を出せない方はCOOではなく、他の役割を担ってもらうべきです。
COOに必要な経験としては、業界経験、経営経験、経営コンサルティング経験等があると良いですが、必須ではないと私は考えています。COOはスキルや経験よりも、社長からの高い信頼、どのような状況でも成果を出せる力、やるのではなくやりきるスタンスが重要だと考えています。当然、スキルや経験を求めることも重要ですが、会社のナンバー2になるため、社長との相性や人格を最優先に検討し、社長を最高執行責任者としてサポートし、成果を出せる人材の要件を定めましょう。
2.COOを選任する必要性があるか慎重に判断する
社長はCEOとして会社の方向性を決定し、事業を統括するためにCOOを選任するように要請されることもありますが、本当にCOOを選任する必要があるのか、改めて検討しましょう。検討の結果、現時点においてCOOを選任する必要はなく、事業を管掌する取締役を選任すれば済む場合もあるはずです。
COOは会社においてナンバー2となるような役割ですので、他の役員との関係を鑑みると、慎重に選任する必要があります。自身がナンバー2になれると期待していた役員が、自分はこれ以上高いポジションを目指せないと判断し、モチベーションの低下、最悪の場合退任してしまう可能性もあります。したがって、現時点においては、ナンバー2として能力や実績が足りないけれども、将来的にCOOに選任したい人材を、その時点では選任せず、数年かけて成長してもらい、しかるべきタイミングでCOOに選任するといった進め方もあります。