今回の実力派会計人は、税理士・小島匡彦氏。北海道大学卒業後は数学専門の家庭教師として従事。その後、税理士となり現在は北海道・札幌市にある税理士法人マッチポイントの代表として中小企業の経営支援を行うほか、会計事務所向けの運営デザインサービスや教育プログラムの提供、不動産売買に対して公平な仲介を行うなどサービスは多岐にわたる。様々な角度から二次関数的に中小企業を成長させていきたいと語る小島氏のこれまでのキャリア、今後の展望について話を伺った。(取材:レックスアドバイザーズ 市川)
数学専門の家庭教師が税理士になるまで
税理士を目指したきっかけを教えてください。
小島:6歳のときに1年間スウェーデンに住んでいて、その風景がとても印象に残っています。その後、石川県・金沢市で高校まで過ごしていましたが大学を選ぶ際に北海道大学を見学してみて、気候や自然がスウェーデンに似ているなと思って、あっという間に北海道が気に入りました。そこから25年近く住んでいます。
28歳で札幌市にある個人の会計事務所に入所し、37歳で税理士になりますが、実は税理士になることが当初の目的ではありませんでした。会計事務所に入所したのは、会社経営について勉強するため。起業しようと思っていたのです。
大学時代から会計事務所に入所するまでの間、私は家庭教師をしていました。当時、医学部生が時給3千円以上で契約していたところ、私は2千円程度でしか契約できませんでした。では、どうやったら自分の価値を高めることができるか、単価が高くなるのだろうと考え、北大数学科生であることを強調し、「数学専門の家庭教師」として生徒を募集しました。すると医学部生と同等か、それ以上の単価で生徒を獲得できたのです。この経験はとても衝撃を受けましたし、自分の好きなこと、得意なことを、やってみて楽しいことを因数分解し、それを戦略的に打ち出すことで結果強みが活かせて、評価されていくことも面白いなと思いました。
この時に使用していた屋号が「MATcH.POINT(マッチポイント)」。マッチポイントのcが小さいのですが、Cを取ったらMATH(数学)を表しています。また、マッチポイントとは勝利が確定する前の1点のことで「最後の1点は生徒が受験し勝ち取るもの。私は生徒が合格までたどり着けるよう、道先案内人として導いていきたい」という思いも込めています。あとは、私の名前が匡彦(まさひこ)で周りからマッチと呼ばれていたというのもあります(笑)。現在は、受験生ではなく経営者がお客様ですが、最終決定は経営者がするもの。会計事務所は最終決定をするための情報を提供するという意味では近しいものがあるので、社名にも使っています。
この家庭教師の仕事が上手くいっていたこともあり、大学卒業後はしばらく就職をせず個人事業主として続けていました。しかしあるとき、家庭教師を個人でやるのではなく、数学科の人を集めて事業化してみようと思い立ちます。ところが当時付き合っていた今の妻に話すと「社会人経験が全くないんだから、一度人に使われてみたら?」と言われました。確かに、起業するにも組織の作り方なんて知らないし、簿記も全く分からない。それなら会社やお金のことを学べる会計事務所がいいと思って就職をしました。
初めは1、2年くらいで転職して、いろいろな事務所を見て勉強する予定でしたが、最初に就職した会計事務所の居心地が良く、40歳で独立するまで勤めました。
税務会計以外のノウハウを提供し、多角的に成長させていく
独立するまででターニングポイントになったことはありましたか?
小島:税理士になった37歳のころ、仕事で関わることになった2人です。一人は大学時代の同級生である鈴木洋平さんです。もともと別で働いていましたが、将来的には一緒に働くことになると確信していました。税理士になり、スタッフを一人雇っていいと言われたとき、迷わず鈴木さんにお願いしました。今では、マッチポイント株式会社の代表取締役としてマッチポイントグループの経営に携わってもらっています。現在のロゴは、「MATcH.POINTs」。家庭教師時代の屋号に小文字のsを加えました。マッチポイントが続く状態であるように、圧倒的な実力をつけたいという意味、小文字のcとsで、顧客満足度(Customer Satisfaction)を表すほか、小島のやっていたマッチポイントにsの鈴木が加わったことを意味します(笑)。
もう一人は当時のマネーフォワードの北海道支店長だった平野龍一さんです。平野さんの、あふれ出る熱意に圧倒されたのと、北海道の中小企業を元気にしたいという強い思いに共感して、私も一緒にその世界観を作っていきたいと思うようになりました。現在は、マッチポイントグループにグループジョインしてもらっています。
この2人との出会いがきっかけで2017年に立ち上げたのがマッチポイント株式会社です。私と鈴木が、どのようにすれば平野さんに面白いと思われるかを考え設立した会社です。当初は、中小企業のバックオフィスの効率化などを提案するために作った会社なのですが、現在は主に会計事務所向けの採用・育成・組織構築の支援や、高齢化が進む税理士業界において、クラウドシステムの積極的な導入による働き方改革などを行っています。
法人設立をして2年後、2019年のときにもっと自分が思い描く会計事務所を作ろうと独立を決心します。当初は、50人で10億円を生み出す会社を作ろうと思っていて、そうなると一人頭2千万の売上を出す事務所を目標に考えていました。そのくらいの金額なら、優秀な会計事務所職員なら可能ですし、とりあえずそこを目指そうと思っていましたが、それだと北海道の中小企業の数%にしか影響を与えることができません。我々の活動をより多くの企業に知ってもらうため、今は規模の拡大も意識をしながら運営しています。マッチポイントグループとして、税務はもちろん、他の分野についても中小企業が求めていることに応えたい、応えられる事務所を作りたいと思うようになっていきました。
そのためには、様々なノウハウが必要です。そのノウハウを作ってくれるのは当税理士法人で一緒に働きたいと言ってくれる多様なスキル、経験を持つ人材です。そのため、マッチポイントグループでは、税務会計のみならず、人事・広報・IT部門に対応できるようにしました。広報については、担当を専属で置いています。30名前後の会計事務所で広報を専属で置いているところは少ないと思いますが、自分たちで運営していくことで、ノウハウをお客様にお話できます。
こうして、専属で部門を作ると面白いことに自社の採用において、実現したいことがある人材が集まるようになってきました。例えばイタリアが好きなスタッフがいて、将来的にはイタリアに住みたいと。でも「イタリアに行っても、このままうちで勤められますよね」なんて話をしています(笑)。在宅勤務を導入していますので当法税理士人では実現可能です。3カ月ごとのフレックス制も導入しているので働く場所以外にも勤務時間も自由に決めることができます。
あとは記帳代行の会社を作りたいというスタッフもいて、部門を任せていずれは分社化させていきたいと思っています。こうした取り組みも始めはノウハウが集約できるからという理由で働き方にも柔軟性を持たせましたが、結果、夢を持つ前向きな人材が集まってきてくれていて、それが相乗効果でお客様にも良い影響が出てきているので、当税理士法人にとってもプラスに作用しているなと感じています。
「財務」×「理論」×「デザイン」=マネーデザインをしていく
今後の展望を教えて下さい。
小島: 私が数学の家庭教師の会社を作ろうと思ったときにすぐ立ち上げられなかった理由は、会社を作った経験がなく何も分からなかったからでした。従業員を雇うときには社労士さんが必要だ、とか、広告はどうしたらいいのか、いろいろな疑問が出てきます。
しかし会社を経営するのに一番必要なのは、”この事業をやりたい”という強い想いです。疑問に悩んでいる時間はもったいない。中小企業の抱える問題を当社が引き受けて、マッチポイントまでサポートしたい。そして経営者には事業に集中してもらって、決勝点を獲得してほしいと思っています。
しかし、会社と会計事務所の距離感があると、税務だけ対応して終わりになってしまうことも多いのです。本来は、会計事務所は中小企業に一番近い士業のはず。税務はもちろん、そのほかの会社運営に関わる相談にも当税理士法人で蓄積したノウハウを理論的にお伝えし、未来を創り上げていく。それが、本当の意味で中小企業を支え、元気にできる方法だと思っています。
企業も結局は人。人の成長というのは一次関数的な成長ではなく、二次関数だと思っています。時に、成長が緩やかになったり、グラフが下がってしまうこともあるかもしれません。
それでも、様々な視点や要素を掛け合わせていき、右肩上がりにしていくことこそ“成長の方程式”だと思っています。私たち、マッチポイントは成長曲線を理想のグラフになるような支援をこれからもしていきたいと思っています。
【編集後記】
オフィスがとてもおしゃれですが、人が集まりたくなるような空間にしたと話されていた小島先生。相乗効果を生み出し、北海道を盛り上げていかれるのですね。小島先生、有難うございました!
税理士法人マッチポイント
●設立
2019年
●所在地
北海道札幌市中央区北1条西7丁目3-2北一条大和田ビル2F
●理念
中小企業のライフスタイルをデザインする
●会社HP
税理士法人マッチポイント
https://zeirishi-online.co.jp/
マッチポイント株式会社
https://www.matchpoints.win/
札幌駅前相続サポートセンター
https://www.sapporo-souzoku.com/
マッチメイク株式会社
https://nangonanachome-housedo.com/shop/