所得源泉地の置き換え規定

では、国内法と租税条約で所得源泉地が異なる場合はどうなるのでしょうか?

国内法と租税条約で、国内源泉所得について異なる定めがある場合には、所得源泉地は租税条約の定めによることとされています。これを「所得源泉地の置き換え規定」といいます。

「所得源泉地の置き換え規定」は、租税条約で国内法と異なった所得源泉地に関する規定があった場合には、国内法の規定を租税条約の規定に置き換えてしまうもので、結果的に租税条約の規定が優先することとなります。

ケーススタディ

日本法人は、韓国法人から特許権の使用許諾を受け、その特許をX国にある工場で使用し、製品を製造しています。この日本法人が韓国法人に支払う特許権使用料については、源泉徴収は必要となるでしょうか?

このケースでは、以下の手順で検討することとなります。

1 所得源泉地の検討(国内源泉所得となるのか?)

国内法→租税条約の順で検討します。

【国内法の取り扱い】

このケースでは、日本法人は特許権をX国にある工場で使用し、製造活動を行っているため、特許権の使用地はX国となります。

国内法では使用地主義を採用しているため、国内法のもとでは、源泉徴収は必要ないということになります。

【日韓租税条約の取り扱い】

日韓租税条約では債務者主義が採用されており、債務者主義の下では、使用料の支払者の所在する国で所得が発生したと考えます。

このケースでは、日本法人が使用料の支払者であることから、日本が所得源泉地となります。よって、租税条約の下では国内源泉所得として源泉徴収が必要となります。

国内法と租税条約の規定が異なる場合には租税条約の規定が優先するため、源泉徴収が必要であるという結論になります。

2 源泉徴収税率の検討

源泉徴収税率については、国内法では20.42%ですが、租税条約で減免される可能性があることから、租税条約の確認が必須です。

日韓租税条約12条2項では次のように規定されています。

『1の使用料に対しては、当該使用料が生じた締約国(日本)においても、当該締約国(日本)の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該使用料の受益者(韓国法人)が他方の締約国(韓国)の居住者である場合には、当該使用料の額の10%を超えないものとする。』 ※下線は筆者が追加

このことから、国内法の20.42%が租税条約により10%に減免されていることが分かります。

3 結論

以上のことから、日本法人が韓国法人に支払った使用料については、10%の源泉徴収が必要となります。


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