「TOKYO PRO Market」という株式市場をご存知でしょうか。おそらく多くの方はあまり耳にしたことが無いかもしれません。本日は是非皆さまに知って頂きたい、知って損はない、東京証券取引所の運営する「TOKYO PRO Market市場(TPM)」の紹介と、TPMならではの特徴やメリットなどを一般市場との比較を交えながらお伝えしていきます。
注目度急上昇中!TOKYO PRO Marketとは?
■ 急速に盛り上がりを見せるTPM市場
東京証券取引所には、東証1部・東証2部・マザーズ・JASDAQという一般の個人投資家が参加できる「一般市場」のほかに、プロ投資家しか参加できない「TOKYO PRO Market」という株式市場があります。
出典)株式会社日本M&AセンターHPより引用
近年、コーポレートガバナンスコードの対応などから一般市場への新規上場(IPO)のハードルは年々高くなっています。このため、中堅中小企業の経営者から見ると「上場」というのは縁遠いものと思われがちです。
これに対して、東京証券取引所の運営する「TOKYO PRO Market」(以下、TPM)は、一般の企業が「上場」しやすいような市場設計を持っているため、”地方の企業”でも”中小企業”でも“オーナー系企業”でも安心して上場を目指すことができます。
10月末時点でTPMに上場している企業数は『48社』と、他の市場と比べたらまだまだ数は少ないですが、昨年1年間では過去最高の10社が新たにTPM上場を果たしました。そして今年は既に『12社』の企業が上場を果たしており、昨年の新規上場企業数を突破する勢いとなっています。TPMは、いま最も旬な、注目度急上昇中の株式市場です。
(一般市場は、2022年4月に「プライム」・「スタンダード」・「グロース」の3市場に再編されますが、TPM市場は現状のまま存続される予定です。)
▼TPMを動画で解説!
■TOKYO PRO Marketとは(特徴)
TOKYO PRO Marketとは、「TPM」「東京プロマーケット」と呼ばれる東京証券取引所が運営する株式市場の1つで、2009年に新たに開設されました。大きな特徴は“プロ向け”の株式市場であること。東証一部・東証二部・マザーズ・JASDAQのような一般市場の場合は、個人でも法人でも誰もが投資家として株を買うことができますが、TPMの場合は株を買うことができる投資家を、株式投資の知識や経験が豊富なプロ投資家(=特定投資家)に限定しています。そうすることで、不特定多数の人々が参加する一般市場よりも柔軟な上場基準(制度設計)が設定されています。上場を希望する企業にとっては、上場するために必要な手続き、費用や準備期間などが大幅に軽減されることとなり、幅広い企業の皆さまにご活用いただきやすい市場となっています。
■TPMは、中小企業にとってメリットが大きい
TPMのメリットの前に、一般市場・TPMに関わらず、上場することによって得られるメリットについて触れたいと思います。一般的に、上場のメリットは大きく以下の4つです。
①信用力・知名度の向上
一定の審査基準をクリアして上場したという事実や、上場後に付与される東京証券取引所のロゴマーク・4桁の証券コードは、企業の大きな信用力となります。監査法人の監査を受け、決算情報も公にしているので、経営の透明性や信頼性も高まります。新聞や業界誌等への対外的な露出も増え、知名度もUPします。信用力や知名度が高まることで、営業面・人事面・財務面でも大きな効果や変化が得られます。
②会社の組織力UP
上場準備では、ガバナンス体制やコンプライアンス体制、開示体制などを構築していきます。意思決定プロセスを明確化し、不正防止や相互チェック・牽制する機能も作ります。月次で決算もだしていきます。こういった中で“業務の効率化”や“権限委譲”が進み、上場準備を通して従業員の成長や業務へのやりがいが増すといった効果や、経営戦略をスピーディーに決定・変更できるようになるといった効果が生まれます。
③従業員の士気向上
企業が上場することで従業員の士気も向上します。東京証券取引所での上場セレモニーは従業員としても記憶に残りますし、上場企業の社員であるという“誇り”が生まれ、モチベーションが高まり、会社全体の生産性向上にも繋がります。また、上場企業の社員というステータスは、従業員が住宅などのローンを組むときに優遇を受けられるというような嬉しい効果もあります。
④資金調達
もちろん「資金調達」も大きなメリットの1つです。信用力が上がることで金融機関からの借入れをスムーズに行えるようになりますし、自社株を売却することで、多額の資金を株式市場(投資家)から直接調達することもできます。
「上場すること」「上場企業になること」は、多くの中堅中小企業で共通の課題となっている、信用力の拡大、組織力の強化、採用力の向上、事業承継の対応などに対して、多くのメリットを提供します。
これらのメリットに加えて、TPMは以下の“TPM特有の上場メリット”を受けることができます。
①オーナーシップを維持したまま上場できる(外部の株主を入れずに上場できる)
TPMの審査基準には、株主数や利益の額、時価総額といった形式基準と言われる数値的な基準がありません。そのため、「業績が落ち込んでしまった」「株式市況が悪くて株価が想定よりつかない」といった理由で上場が延期になるといったケースを回避できます。流通株式数や株主数に関する数値基準もないので、経営の支配権(=オーナーシップ)や株主構成を維持することができます。敵対的買収のリスクもありません。
②監査期間“1年”で上場できる
TPMの上場申請に必要な監査期間は1年です。一般市場では2年の監査期間が必要なので、一般市場と比較して短い期間で上場することができます。上場準備期間の短縮は、コストの抑制にも繋がります。一般市場で必要となる内部統制報告制度(J-SOX)や四半期決算開示などの適用もないため、過度に重厚な管理組織も必要ありません。
③公式なアドバイザー(J-Adviser)の手厚いサポートが受けられる
TPMは、東京証券取引所から認定を受けた「J-Adviser」と呼ばれる公式なアドバイザー制度があることも大きなメリットの1つです。一般市場への上場の場合は、上場準備を自力で行い、証券会社の審査をパスしたうえで、東京証券取引所の審査に合格する必要がありますが、TPMの場合は、「上場指導・上場審査・上場後のモニタリング」をすべてJ-Adviserが担います。準備の段階からJ-Adviserによる手厚いサポートが受けられ、最短距離で上場できることも、TPMの大きな魅力です。