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2021年版 4大監査法人決算分析 第3回 有限責任 あずさ責任監査法人

2021年版4大監査法人の決算分析シリーズ。第3回目は業界2位の売上を誇る有限責任 あずさ監査法人(以下あずさ)について、2021年度を中心に直近5期の決算を分析していきます。

1.業務収入

まずは業務収入、いわゆる売上の推移から見ていきます。

(1) 売上推移

* 「業務及び財産状況説明書」(*1)をもとに作成。なお特に断りがない限り、単位は百万円(切捨)(以下 同)。

2021年6月期(以下、2021年度)の売上は1,052億円となり、前期比△6億円(△0.7%)の減収となっています。

2015年度から前期まで6期連続で増収を達成していたものの、2021年度はわずかに減収決算となり、成長にブレーキがかかりました。しかしながら売上1,000億円の大台は3期連続でキープし、また2017年度からの年平均成長率(以下、CAGR)は+2.3%であることから、中期的に見れば着実に業績を伸ばしていると言えます。

続いて監査業務と非監査業務に分けて売上推移を見てみます。

(2) 監査業務

① 売上推移

2021年度の売上は832億円となり、前期比+5億円(+0.6%)の増収となっています。

監査業務はきれいな右肩上がりとなっており、2017年度からのCAGRは+3.7%となっています。売上全体の伸び(+2.3%)を超えていることから、監査業務が売上をけん引していることが分かります。

なお2021年度の監査売上832億円はEY新日本有限責任監査法人(以下EY新日本)に続く第2位ですが、3位有限責任監査法人トーマツ(以下トーマツ)との差は73百万円と僅かなものになっています。

(参考 大手監査法人の監査売上推移)

* トーマツの2017年度数値は決算期変更に伴う8カ月分

監査業務について、クライアント数と1社あたりの売上に分けてみてみます。

② クライアント数推移

2021年度の監査クライアント数は3,638社となり、前期比+3社(+0.1%)となっています。

ここ2年間は微増にとどまりますが、2017年度比では+157社と+4.5%となっています。あずさは2017年11月から約1年間、監査法人の働き方改革の一環として新規監査業務受注を停止していましたが(*2)、それにもかかわらずグラフにはない2013年度(3,245社)以降、8期連続で監査クライアントは増加しています。

③ 1社あたり売上推移

* 1社あたり監査業務収入=監査業務収入÷(期首期末の平均監査クライアント数)

2021年度の1社あたり売上は2,290万円となり、前期比+7万円(+0.3%)となっています。

グラフを見ると売上と同じ右肩上がりのトレンドになっており、4期前の2017年度(2,096万円)と比べると+9.2%上昇し、CAGRは+2.2%となっています。クライアント数の増加に比べると単価の上昇幅は大きく、増収の主要因は単価アップといえます。

以上より、監査業務の売上についてはクライアント数、単価ともに増加しているものの、どちらかと言えば単価アップが売上をけん引していることが分かります。

他法人と比べると、数の面で減少傾向にあるトーマツ、EY新日本とは対照的であり、一方単価面では3法人とも上昇傾向となっています。この辺りに大手法人における方針の異同が見て取れます。

(3) 非監査業務

① 売上推移

2021年度の売上は219億円となり、前期比△12億円(△5.2%)と減収となっています。

右肩上がりの監査売上と異なりデコボコとした形のグラフとなっており、増減しながら200~240億円で推移しています。

非監査業務についてもクライアント数と1社あたりの売上に分けてみてみます。

② クライアント数推移

2021年度の非監査クライアント数は2,037社となり、前期比△96社(△4.5%)となっています。

こちらも増減あるものの全体として減少傾向であり、ここ5期で見ると2021年度は最も少なくなっています。監査クライアントが8期連続で増加しているのとは対照的であり、非監査クライアントの減少が目立ちます。

③ 1社あたり売上推移

* 1社あたり非監査業務収入=非監査業務収入÷(期首期末の平均非監査クライアント数)

2021年度の1社あたり売上は1,054万円となり、前期比△30万円(△2.8%)となっています。

2018年度の930万円を底として上昇に転じていたものの、2021年度は前期比△30万円と僅かにダウンしているのは売上と同じです。結果としてここ5年間で単価はほとんど変わらず、横ばいとなっています。

以上より、非監査業務については単価面では横ばいながらクライアント数減少の影響を受けて減収傾向となっています。

2018年度以降、あずさの非監査売上は3位となっており、2021年度も順位は変わっていません。非監査売上トップのトーマツは2021年度に404億円を記録して過去最高となっており、その差はほぼ2倍に広がっています。

(参考 大手監査法人の非監査売上推移)

* トーマツの2017年度数値は決算期変更に伴う8カ月分

あずさの売上についてまとめると、クライアント数減少を受けて減収決算となった非監査売上の影響を、クライアント数、単価ともに増加した監査売上でカバーしきれずに減収決算となり、2020年度まで6期連続で続いた増収決算はストップしています。

なお売上トップのトーマツとの比較では、監査売上は肉薄され、非監査売上は大きく離されてしまい、売上全体ではトーマツ1,236億円に対しあずさ1,052億円と、その差は183億円に広がっています。

次に費用に目を向けてみます。

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