国税庁がさきごろ公表した令和2年分民間給与実態統計調査(いわゆる「民間企業の実態」)によると、昨年1年を通じて民間企業に勤務した給与所得者の平均賞与は、長引く新型コロナ感染症に伴う企業の経営悪化などで2年連続の減少となっている。下げ幅も平成以降では、リーマンショック後に次ぐ大幅な減少率を記録。ローンなど借入金を抱えるビジネスパーソンには厳しい状況が続いていることが明らかになった。

民間事業所の給与所得者及び支払給与総額が8年振り減少
令和2年12月31日現在、国家公務員や全従事員について源泉所得税の納税がない事業所の従事員、労働日に給与額が算定され支給を受けるものを除いた民間事業所に勤務する給与所得者は5928万1千人と前年より62万人減少し、これに伴い事業所が支払った給与総額も12兆3992億円減った219兆2054億円となり、ともに8年振りに減少に転じた。
平均給与は令和に入り2年連続の減少の433万円
令和2年1月から12月までの1年を通じて勤務した給与所得者数は5244万6千人で約10万人の減少となっており、男女別にみると男性は3076万7千人と約45万人増えているのに対して、女性は約55万人減少となる2167万9千人だった。給与総額は前年より2兆1677億円少ない227兆1582億円で、男女別では男性163兆7287億円(対前年比0.1%増)、女性63兆4295億円(同3.4%減)となっている。
給与所得者1人当たりの平均給与は前年に比べて3万3千円少ない433万1千円で、令和に入り2年連続の減少となるとともに、リーマンショック後以来の大幅減少を記録した。
この要因は、新型コロナに伴い企業の業績が落ち込んでいることはもとより、企業の時差出勤やテレワークの導入により残業が抑制されたことも大きく影響しているようだ。
男女別にみると、男性は532万円、女性は293万円でそれぞれ前年より減少しているが、男性の2万9千円減少に対して女性は7万5千円の減少となっており、女性の減少額及び減少割合が大きくなっている。
なお、平成23年分(409万円)と比べると10年間で約24万円しか増えておらず、単純計算では年間2万4千円程度の増加に留まっている。
雇用形態別に正規、非正規でみると、正規が495万7千円(同1.5%減)と減っているのに対して、非正規は176万2千円(同0.9%増)と伸びたことから、正規と非正規の平均給与の差は320万円となり、平成24年に統計を取り始めてから初めて差が縮小した。男女別は、正規が男性550万1千円(同2%減)、女性383万7千円(同1.3%減)、非正規については男性 227 万6千円(同 0.9%増)、女性 153万2千円(同0.7%増)。
事業所規模別では、従事員10人未満の事業所においては347万8千円(男性433万1千円、女性244万8千円)となっているのに対し、従事員5千人以上の事業所においては508万7千円(男性666万8千円、女性292万6千円)だった。
業種別の状況を「電気・ガス・熱供給・水道業」の715万円。以下、「金融業,保険業」630万円、「情報通信業」となっており、最も低いのは「宿泊業,飲食サービス業」の251万円となっている。