国税庁の来年度予算、機構等の要望がまとまった。今年は新型コロナウイルス感染症の拡大・蔓延に伴い通常の要望の提出期限が8月末から1カ月遅い9月末まで延長されていた。予算や機構等の要望をみれば、コロナ禍における国税庁の今後の執行方針が読み取れる。令和3年度の国税当局の動きに迫ってみた。
【予算概算要求】
2年分確定申告の申告相談会場開設前倒し費用を計上
令和3年度の予算の要望でも、基本的には経済取引の複雑化・国際化、ICT化の進展など税務行政を取り巻く環境への適切な対応、国税庁の任務と使命の実現に向けた納税者サービスの充実と適正・公平な賦課・徴収の実現のために必要な経費を求めている(表参照)。要求額としては、令和2年度当初予算に比べ2.1%(149億円)増額の7343億2千万円となっている。
内訳をみると、要求額の約8割(5598億円)を人件費が占め、残る1745億円が一般経費となり、一般経費は前年度当初予算に比べると173億円の増額だった。
一般経費で最も多いのが税務諸用紙・通信費中心の「庁・局署一般経費」の646億5300万円で6.5%前年度よりも増えている。そして今年の一般経費で特徴的なのが、「新型コロナウイルス感染症への対応など緊要な経費」として125億5300万円を計上していること。具体的には、すでに実施されているが、新型コロナウイルス感染症の感染者が発生した際の消毒・清掃などの費用をはじめ、令和3年度の確定申告期の申告相談会場開設を前倒しすることによる期間の長期化に係る費用などが含まれる。このほか、税理士試験の会場確保と試験当日の入場時検温等を実施関連費用をはじめ、アフターコロナにおける次世代行政サービスやデジタルトランスフォーメーションの推進に関する予算も含まれている。
次に、区分別での主なものをみると、543億3600万円を要求している「情報化経費」には、①KSK(国税総合管理)システムの機器借料費用といった運用経費に加えて、情報システムの高度化のための開発費用として合わせて403億円、②調査・徴収時のモバイル端末を活用した高度化・効率化や職員のテレワーク関連費用、庁局署LAN運用費用などのITC化推進経費として131億円、その他にも集中電話催告センターの運用などを計上している。また、「納税者利便向上経費」として173億1600万円を要求しているが、この7割以上を占めているのがe-Tax経費。機器の借料費、マイナポータルとの連携機能や申告書(控)のイメージデータでの提供を可能にするためのシステム開発費や令和4年開始予定のスマートフォンによる納税猶予の申請といった機能向上に向けた予算などとして126億円を計上している。その他では、ICTによる納税者への情報提供等経費に33億円、電話相談センターの運営経費に6億円を計上している。