コロナ禍における滞納整理状況が明らかになった。国税庁が公表した令和元年度租税滞納状況によると、コロナ禍の影響に伴う納税猶予による新規滞納発生の減少とともに、さまざまな手段を使った滞納整理の推進により、2020年3月末の滞納残高はピーク時の4分の1まで減少していることが分かった。
新規滞納が前年度比1割減に
令和元年度中に国税が納期限までに納付されず、国税当局から督促状が発付され滞納扱いとなった新規発生滞納額は前年度よりも615億円(10%)少ない5528億円となっている。前年度から1割も大きく減少した要因は、期限内納付に関する広報や多様な納付手段の利用勧奨をはじめ、前回期限後納付となっていた納税者や督促状の送付対象となった納税者に対して電話等で個々に納付指導を実施するなどの未然防止策への取組みが挙げられる。
また、近年では納税者の利便性の向上に向け、インターネットの利用やコンビニで納付できるなど納付手段も多様化され、いつでもどこでも納税ができる環境となってきたことで若い世代の新規滞納も減ってきている。
主な納付手段別の利用状況は、下記の通り。
- ・窓口納付‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3,129万件
- ・振替納税‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 616万件
- ・インターネットバンキング等‥ 347万件
- ・コンビニ納付‥‥‥‥‥‥‥‥ 208万件
- (うちQRコード利用)‥‥‥‥‥ 22万件
- ・ダイレクト納付‥‥‥‥‥‥‥ 154万件
- ・クレジットカード納付‥‥‥‥‥31万件
加えて今年に入り、中国・武漢が発生源と言われている新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の拡大・蔓延に伴い、政府は緊急自体宣言を出し外出を控えるなどを国民に要請。国税庁では、令和元年分の申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の確定申告について、納期限以降も期限を区切らずに柔軟に確定申告書を受け付ける措置を行った。また、合わせて一定の要件の下で「納税の猶予の特例」も実施された結果、新規滞納発生が後ろ倒おしされる結果となったことも新規発生が抑制されたことも大きく影響している。
新規発生滞納額を税目別にみると、最も多いのが地方消費税除いた消費税の3202億円で全体の半分以上を占めており、以下、申告所得税939億円、法人税765億円、源泉所得税310億円、相続税275億円の順。
気になる新規発生滞納額5528億円を徴収決定済額61兆7896億円で除した「滞納発生割合」は0.9%となった。滞納発生割合は、消費税率8%への引上げた翌年の平成26年度に上昇したもののそれ以降は減少して低水準となっており、平成29年度、30年度1%となっていたが、今回とうとう1%を割るところまで低下した。