各種施策で滞納整理
一方、国税当局では、新規滞納の抑制とともに滞納整理についても国税局・税務署の徴収担当部署において厳正・的確な処理を行うほか、各種施策滞納整理を実施した結果、令和元年度の滞納整理済額は6,091億円と前年度7.1%減少している。

滞納整理の基本方針としては、
①“大口・悪質事案”や“処理困難事案”に対する厳正・的確な滞納整理を行うこと、②預り金的な性格の強い消費税の滞納事案の重点的な処理であり、これを実施するため効果を挙げているのが「集中電話催告センター室(納税コールセンター)」、「国税当局による原告訴訟」、「徴収共助の要請」だ。
新規の少額事案や消費税事案を取り扱うために全国税局(所)に人員300名以上が配置されて日々業務にあたっている集中電話催告センター室(納税コールセンター)の処理状況をみると、今年6月までの1年間において催告の対象となった全国の滞納者81.4万者のうち、6割を超える50万者が滞納全額を完納し、また4.6万者が今後の納付方針等を決める納付誓約に結び付けており、その整理済額は2454億円にのぼる。
なお、今年3月以降は、納税者への催告を行うに当たり、滞納者が新型コロナの影響により納付困難な状況であった場合には、納税猶予等の措置についての案内も行っていたことから、1年を通せばさらに整理済額は増えていただろう。
滞納処分免脱罪の告発、元年度は9件
次に通常の滞納整理の手法では処理進展が図られない悪質滞納者へは、法的措置による対応を積極的に実施しているが、新型コロナの影響もあり前年度に比べると、やはり係数は減少している。
まず、実際には滞納国税の支払い能力がありながら、財産を隠蔽するなどして徴収を免れようとする者へは、国税徴収法の滞納処分免脱罪を適用して解決にあたっているが、元年度も9件(17人(社))の事案を告発して処理を行っている。
事案をみると、過去に源泉所得税等を滞納し運送代金債権の差押えを受けた経験を有する滞納会社(運送業)は、いったんは滞納国税を完納したものの、その後課税調査を受けて多額の法人税等の発生が見込まれることとなった。そして、実質経営者は課税調査中から国税の納付に否定的な発言をしていたところ、更正決定を受けた法人税等について再び滞納会社への差押えが行われないよう、休業中の関連法人に事業を引き継いだように装って、取引先に対し運送代金をその関連法人名義の預金口座へ合計359回(総額約1億6700万円)にわたり振り込ませた。この行為に対して国税当局は、滞納処分の執行を免れる目的でされた財産の隠蔽に該当すると判断して滞納会社、代表者及び実質経営者を滞納処分免脱罪で告発している。

また、滞納処理においては、差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟等の原告訴訟の提起といった訴訟的手法についても有効であることから、国税当局では積極的な活用を行っており、令和元年度は「供託金取立等訴訟」8件、「差押債権取立訴訟」7件、「名義変更詐害行為」3件、「債権届出等訴訟などのその他」97件の合計115件の原告訴訟を提起し、前年度からの継続案件を含め130件が終結している。