国内に恒久的施設を有しない非居住者が行うFX取引から生じる所得について、わが国の所得税法や租税特別措置法は、特段の規定を設けていません。本件は、海外赴任中に生じた同所得が国内源泉所得に当たるかについて争われました。

国税不服審判所平成31年3月25日裁決(国税不服審判所HP)

1.事実関係

審査請求人(請求人)は、中国赴任前に、国内の金融商品取扱業者に店頭外国為替証拠金取引口座を開設し、赴任期間中の平成25年ないし平成27年に行った店頭外国為替証拠金取引(FX取引)から生じた所得(本件所得)について、確定申告に含めなかった(平成27年分は無申告)ところ、原処分庁が本件所得は国内源泉所得に当たるとして課税処分を行ったため、当該処分の取消しを求めて審査請求した。

なお、ここでいうFX取引は、金融商品取引法2条《定義》22項に定義する店頭デリバティブ取引(金融商品市場および外国金融商品市場によらないで行う同項1号ないし7号に掲げる取引)のうち、同項1号が掲げる「売買の当事者が将来の一定の時期において金融商品(略)及びその対価の授受を約する売買であって、当該売買の目的となっている金融商品の売戻し又は買戻しその他政令で定める行為をしたときは差金の授受によって決済することができる取引」に該当する。

2.争点

本件所得は、所得税法[1]161条1号(本件規定)にいう「資産の運用、保有により生ずる所得」に該当するか否か【他の争点は省略】

3.請求人の主張

FX取引の差金決済とは、請求人が取得したFX取引の契約上の地位それ自体を移転又は処分することをいうのであり、請求人が取得したFX取引の契約上の地位の「権利を行使して」(すなわち受渡決済をして)行われるものではない。そして、その差金決済に係る所得は、同取引の契約上の地位(建玉)を保有していた期間における増加益が、同地位(建玉)を手放す(反対売買により手仕舞いする)ことにより初めて実現する同地位(建玉)の譲渡益又は処分益であって、同地位(建玉)の権利の行使又は保有により生ずる運用果実であるとはいえないから、「運用、保有により生ずる所得」に該当しない。