香港の永住権を有し、過去の税務調査において我が国の非居住者であると認定された個人が、その後の客観的諸事情、すなわち①滞在日数、②生活場所及び同所での生活状況、③職業並びに業務の内容及び従事状況、④生計を一にする配偶者その他の親族の居住地、⑤資産の所在、⑥生活に関わる各種届出状況等から、国内滞在先が同者の住所であると認定され、国内に住所を有する個人であるから、所得税法に規定する居住者に該当するという判断が示されました。

国税不服審判所令和3年3月26日裁決(国税不服審判所HP)

1.事実関係

本件は、原処分庁が、審査請求人(請求人)の所得税等について、請求人が所得税法上の居住者に該当し、外国子会社合算税制を適用するなどして所得税等の各決定処分及び各再更正処分並びに無申告加算税の各賦課決定処分を行ったことに対し、請求人が、非居住者であること等を理由に、原処分の全部の取消しを求めた事案である。

請求人は、平成25年から平成29年(本件各年)において、内国法人4社の代表取締役、並びに香港法人2社(G5社及びG 6社)及び中国法人1社(以上の3社を併せ「本件各外国法人」という)の役員を務め、本件各外国法人その他ベトナム法人1社の株式の99.99%を直接又は間接に保有していた。請求人は、本件各年において、日本国内に滞在中は、国内滞在先に滞在していたところ、同所は、平成24年8月5日に新築された建物で、同月24日、種類を事務所、居宅及び車庫とし、所有者を上記内国法人のうちの1社(G1社)とする旨の所有権保存登記がされた。また、国内滞在先が所在する土地は、G1社を経由し、平成25年9月30日、同社から請求人に所有権移転登記がされた。香港では、G5社が、平成25年5月15日から平成30年5月14日までの間、香港滞在先を1年ごとの契約で賃借し、宿泊者として請求人ら3名を登録していた。

請求人は、本件各年分の所得税等について、いずれもその法定申告期限内に確定申告書を提出しなかった。なお、原処分庁は、平成25年分の所得税等の決定処分においては、G6社が請求人に係る特定外国子会社等に該当し、措置法40条の4《居住者に係る特定外国子会社等の課税対象金額等の総収入金額算入》1項に規定する適用対象金額を有するとして、同項により計算した金額につき、請求人の雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入した。

2.争点

請求人は、所得税法2条1項3号(所法2①三)に規定する居住者に該当するか(他の主要争点は次回を予定)。