3.請求人の主張
請求人は、所得税法施行令15条1項(所令15①)に規定する「国外において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有している」ことは明らかであるから、国内に住所を有しない者と推定され、他方で、滞在日数や住居の状況などに、この推定を覆すに足りるものはないから、請求人は、所法2①三に規定する「居住者」に該当しない。
4.審判所の判断
(1)法令解釈
所法2①三において、国内に住所を有する個人は居住者とされているところ、ここにいう「住所」とは、生活の本拠、すなわち、その者の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心を指すものであり、一定の場所がある者の住所であるか否かは、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものと解するのが相当である(最高裁平成23年2月18日第二小法廷判決・集民236号71頁参照)。
そして、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かは、①滞在日数、②生活場所及び同所での生活状況、③職業並びに業務の内容及び従事状況、④生計を一にする配偶者その他の親族の居住地、⑤資産の所在、⑥生活に関わる各種届出状況等の客観的諸事情を総合的に勘案して判断するのが相当である。
(2)事実認定及び検討
①滞在日数について[1]
請求人の年間の国内滞在日数は、おおむね6割又は6割を超えており、その国内の滞在日数は、香港を含む国外の滞在日数の約1.4倍から約3.8倍に及んでいる。
②生活場所及び同所での生活状況について
請求人は、年間の6割程度を超える日数を、自ら所有する土地上に存し、かつ、自ら賃借する国内滞在先で、水道及び電気等のライフラインを使用して生活していた。
③職業並びに業務の内容及び従事状況について
請求人は、国内外の多数の企業の代表取締役又は役員を兼務しており、請求人の業務の内容及び従事状況についてみると、日本と香港とを行き来しながら、主に、本件各外国法人の役員としての業務を行っており、当該業務は、日本国内で行われることが多くなっていた。このことは、請求人が、国内において、より多くの日数を費やして業務を遂行していたものと認められる。
④生計を一にする配偶者その他の親族の居住地について
請求人には生計を一にする親族はない。
⑤資産の所在
請求人は、生活に使用していた不動産を国内に所有していたものと認められる一方で、香港において滞在先を含む不動産を所有していた事実は認められない。
⑥生活に関わる各種届出状況等
請求人の住民票上の住所は国内であり、クレジットカード会社へ届け出た書類の送付先やローン契約及び年金保険契約の際に請求人自身が申告した住所は、いずれも国内滞在先である。
⑦小括
以上の諸事情を総合考慮すると、請求人が、香港の永住権を有しながら、香港滞在先に一定の期間滞在していたことを考慮しても、客観的に請求人の生活の本拠たる実体を具備していたのは、香港滞在先ではなく、国内滞在先であったと認めるのが相当である。
したがって、国内滞在先が請求人の住所であると認められ、請求人は、国内に住所を有する個人であるから、所法2①三に規定する居住者に該当する[2]。
[1] 請求人は、平成23年の税務調査において非居住者であると認定された旨主張したが、審判所は、「調査時の国内滞在日数は、いずれも本件各年の国内滞在日数を下回る上、国内滞在日数が国外滞在日数よりも多いのは平成22年のみであることからすれば、本件各年と状況が異ならないとはいえない」と説示して主張を排斥している。
[2] 最近の類似裁決として、国税不服審判所令和2年2月19日裁決【関裁(所)令元-37】(裁決事例集未掲載/TAINS:F0-1-1115)がある。



