請求人がフランス共和国の社会保険制度に基づいて支給を受けた年金(フランス年金)について、同年金は、請求人がフランス滞在期間中に加入していたフランスの退職年金制度に基づいて支給されたものと認められ、請求人による年金受給申請に基づく裁定結果及び個々の受給額等からすると、同年金は、フランスの退職年金制度のうちの一般制度又は補足制度に基づいて支給されたものと認めるのが相当であり、所得税法35条3項3号に掲げる年金として、公的年金等に該当するという判断が示されました。
国税不服審判所平成30年5月15日裁決(裁決事例集未掲載 TAINS:F0-1-940)
1.事実関係
本件は、審査請求人(請求人)がフランスの社会保険制度に基づいて支給を受けた年金について、原処分庁が、所得税法35条3項3号に規定する公的年金等に該当するとして公的年金等に係る雑所得の収入金額に算入し所得税等の各更正処分を行ったのに対し、請求人が、同年金は公的年金等に該当しないなどとしてその全部の取消しを求めた事案である。
請求人は、平成4年から平成7年までの約4年間にわたりフランスに滞在し、フランス国内での勤務経験を有しており、フランス滞在中、フランスの社会保険制度に基づく退職年金に加入していたところ、当該年金の受給資格を有することとなったため、平成22年3月、年金受給代行業者に手続きを委託し、平成22年5月以降、当該年金を受給することとなった。なお、請求人が給付の裁定を受けたフランスの年金は、一般制度に基づいて支給される年金と補足制度に基づいて支給される2種類の年金(一般労働者向けの制度により支給される年金と管理職員向けの制度により支給される年金)の合計3種類(本件フランス年金)であった。
本件フランス年金は、平成27年及び平成28年の各年(本件各年分)において、請求人名義の外貨普通預金口座にユーロ建てで入金されていたが、請求人は、本件各年分の所得税等について、いずれも法定申告期限までに確定申告した[1]。さらに請求人は、平成29年6月20日、本件フランス年金の入金額を、所得税法35条2項に規定する公的年金等以外の雑所得に係る総収入金額に算入した上で、年金受給代行業者に支払った年間維持管理費及び情報通信費2万2440円を必要経費に算入して雑所得の金額を算出し、本件各年分の所得税等について修正申告した。
[1] 国税速報第6547号(平成31年2月18日)11頁には、「請求人は、平成27年分及び28年分の所得税等について期限内に確定申告書を提出していたが、本件フランス年金については申告の対象としていなかった。」という記載がある。しかし、裁決書にはそのような事実は明示されていない。
2.争点
本件フランス年金は、所得税法35条3項に規定する公的年金等に該当するか否か(他の争点は省略)。